『極悪女王』で脚光、彩羽匠がマーベラスで見せたいもの「今のプロレスは綺麗。いい意味でもっと汚くていい」

長与千種が旗揚げしたマーベラスのエース・彩羽匠。その彩羽は、10月27日に名古屋国際競技場で“女子プロレス界の横綱”里村明衣子とシングルで対戦する。里村は彩羽のデビュー戦の相手であり、マーベラスの旗揚げ戦でも対戦し、過去3戦3敗。これまでとの大きな違いは、彩羽は団体のチャンピオン(AAAWシングル)であり、里村は来年4月に引退が決まっていること。彩羽はこの戦いにどのように向き合おうとしているのか。

『極悪女王』を通じて感じたものがたくさんあるという彩羽匠【写真:橋場了吾】
『極悪女王』を通じて感じたものがたくさんあるという彩羽匠【写真:橋場了吾】

姉妹弟子・里村の引退発言はショックだった

 長与千種が旗揚げしたマーベラスのエース・彩羽匠。その彩羽は、10月27日に名古屋国際競技場で“女子プロレス界の横綱”里村明衣子とシングルで対戦する。里村は彩羽のデビュー戦の相手であり、マーベラスの旗揚げ戦でも対戦し、過去3戦3敗。これまでとの大きな違いは、彩羽は団体のチャンピオン(AAAWシングル)であり、里村は来年4月に引退が決まっていること。彩羽はこの戦いにどのように向き合おうとしているのか。(取材・文=橋場了吾)

 Netflixシリーズ『極悪女王』の配信に伴い、制作に全面協力したマーベラスにも注目が集まるようになった。

「本当、すごいチャンスをいただいたと思います。『極悪女王』の撮影を通して80年代のプロレスに触れて、今のプロレスって技を綺麗に見せようとか、自分たちがカッコよく映るように見せようとか、そういう部分をやりすぎているなと感じました。いい意味でもっと汚くていいんだという意識は高くなりましたね。しかもこのタイミングでお客さんも多くなって、しかもプロレスに興味がなかった人たちも見てくれるようになった今だからこそ、全女(全日本女子プロレス)から守っているものを見せていかなくてはと思います」

 その彩羽が、10月27日に名古屋で大舞台に挑む。過去3回シングルで対戦し「かすりもしない負け」(彩羽談)を喫している里村明衣子との4度目にして最後のシングルマッチだ。とはいえ、今の彩羽には負ける要素は何もないようにも思える。

「自分もそうじゃないとダメだと思います。勝ち逃げさせないですよ。プロレスですもん、やられたらやり返します。長与さんはよく“姉妹弟子”という言葉を使うんですが、自分にはしっくり来てなかったんです。それは長与さんが最初に手ほどきしたのが里村さんで、その次に自分に教えてくださって。これ、自分が里村さんに嫉妬していたんですね。一番弟子は里村さん……ずっと追いかけるしかないのが悔しくて。だからこそ引退されると聞いたときはショックでしたね。これから自分のモチベーションをどこに持っていけばいいんだろうと。普段は自分から誰誰と戦いたいということを発言しないんですが、今回ばかりは言わないと後悔すると思いました」

10.27名古屋では里村明衣子との赤い遺伝子対決に挑む【写真:(C)マーベラス】
10.27名古屋では里村明衣子との赤い遺伝子対決に挑む【写真:(C)マーベラス】

全女のプロレスを引き継いでいると胸を張って言いたい

 ここ最近の彩羽は、マーベラス以外にも海外やプロレスリング・ノアでの試合も組まれている。

「やっぱりマーベラスを知ってもらいたいですよね。マーベラスの女子プロレスは、こういうものですよと。男子の団体に出るときは、男子の団体にどれだけ通用するんだろうかという意識は持っています。プロレスって思ったようにいかないから面白いですし、多分思ったようにうまく進んでしまったら、みんなすぐ辞められるんですよね。でもそれができない。100%思ったようにいくように頑張っていく。お客さんにいい試合だったと言っていただいても、自分の中で満足していないことはたくさんありますし、反省し続けて、また次に生かしてまた反省があるから面白いんだと思います」

 そんな中、マーベラスにも新しい芽が育ってきている。9月29日の新木場大会では練習生が公開プロテストに臨み見事合格。後日、暁千華(あかつき・せんか)のリングネームで10月27日の名古屋大会でSareeeを相手にデビューすることが発表された。

「(プロテストの課題だった)スクワットなんて試合でするわけじゃないんですけど、色々な技をかける・受けるには基礎体力が必要なんです。地道な練習がベースにあるのは、スタミナ切れは見せたくないじゃないですか。だから基礎体力をつけるしかないんですよ。(最後のスパーリングは)自分が出ていく予定はなかったんですけど、長与さんにぼそぼそと『いけるか』と言われて……自分は『はい』としか言えないので(笑)。長与さんは『引き出せよ』という意味で自分を指名したんだと思うんですけど、明らかに(予定の)3分超えてもゴングが鳴らないので、ゴングを持っているMariaは目が泳いでいるし長与さんはニヤーっとしているし、完全にやられたと。ただ予想以上にもうプロレスラーらしいというか、あんなすぐに合格って言われるのは珍しいので期待されていると思います」

 最後に今後の彩羽の展望を聴いた。

「今回『極悪女王』を通じて色々な人に女子プロレスが浸透していると思うので、このチャンスを生かしてプロレスの素晴らしさをもっと世間に伝えていくのが自分たちの役割だと思いますし、もっともっとプロレスラーになりたいっていう人口を増やしたいですね。そして全女のプロレスを引き継いでいると、胸を張って言える団体にしていきたいです」

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