プロスカウトが見抜く選手の素顔 プレー外での礼儀作法も観察「顔が良いに越したことはない」
野球人の運命が左右されるプロ野球ドラフト会議。そこで名前が挙がる選手たちは1位指名はもちろん、育成指名であっても、どこかに可能性を見出されて指名を受ける。時には選手としての能力のみならず、その人間性すらも重要な指標となってくるが、スカウトはどのようにして原石を探し出しているのだろうか。西武の岳野竜也アマチュアスカウトに話を聞いた。
屈託のない笑顔も選手たちの魅力の1つ
野球人の運命が左右されるプロ野球ドラフト会議。そこで名前が挙がる選手たちは1位指名はもちろん、育成指名であっても、どこかに可能性を見出されて指名を受ける。時には選手としての能力のみならず、その人間性すらも重要な指標となってくるが、スカウトはどのようにして原石を探し出しているのだろうか。西武の岳野竜也アマチュアスカウトに話を聞いた。
2008年にドラフト5位で西武から名前を呼ばれた岳野氏は、5年間の現役生活の後、20年までブルペン捕手を担当、21年からスカウトに就いた。21年にはドラ1で入団した大卒左腕・隅田知一郎、22年にはドラ2で古川雄大、ドラ3で野田海人と高卒の2人が入団。現在では、3人の担当スカウトだ。
選手としての素質はもちろんのことながら、人間性もその選手を球団側に“推す”理由の一つとなる。印象的だったのが古川とのエピソードだった。
古川を初めて見たのは高校2年生の夏。当時は攻守交代での動きやプレーに対する姿勢などに「あまりいい印象を持っていなかった」と率直に明かす。「能力が高いのにもったいない」と思っていたが、3年生で変化した姿を見て、その印象は変化した。「イニング間の動きやあいさつ、お辞儀の仕方などが変わっていて、選手としての能力も一気に上がっていたんです」。
いわゆる「プロアマ規定」の影響で、アマチュア選手とスカウトが野球に関する直接的な関わりを持つことは禁止されている。しかし、岳野氏は古川とたまたま会話をする場面があったことで、球団に自信を持って、“推せる”と感じたという。
「佐伯鶴城高の監督さんに会いに行った時、球場に着いたらたまたま古川がいたんです。僕がスカウトだとは明かさずに、『監督のところに案内してもらえる?』とお願いしたら、すごくいい対応をしてくれたんです。ちょっとやんちゃな子といううわさは聞いていたのですが、その対応と笑顔を見た時に『大丈夫だな』と思うことができました」
実力主義の世界だが、岳野氏は「顔が良いに越したことはない」と笑う。もちろん容姿がどうこうという意味ではない。「笑顔は魅力の1つだと自分は思います」。ファンの心をつかめるかどうかも重要な指標の1つになってくる。
1人の人生を左右するスカウトという存在。その選手一人一人の可能性を信じてあげることが重要だと語る。
「プロの世界に飛び込む選手は、ドラフト上位も育成の1番下でも、スカウトが『ここは通用する』と信じたポイントが絶対にどこかにあります。人のダメな部分に目を向けるのではなく、その人が持つ可能性に期待したいです」
日常ではコンビニで飲み物を買う時ですら優柔不断な一面が出てしまうという岳野氏。しかし、仕事となると話は別だ。確固たる自信を持って、選手の獲得を進言する。「弱気な気持ちではなく、ここが通用しますと伝えることを意識しています」。野球人の人生を変えるドラフト会議は10月24日に開催される。