京都市バスの深刻な人手不足 日々の欠員50人、休日出勤や超過勤務も…年収は25年間で300万円減

京都市交通局が先月27日、深刻な運転士不足を受け「非常事態宣言」を発出した。現行のダイヤと路線を維持するには880人の運転士が必要だが、現在在籍しているのは875人。そのうち育児休業や心身の状況による休職などを除くと実動は830人にとどまり、日々50~60人分の欠員を休日出勤や超過勤務で何とか維持している状況だという。なぜこれほど深刻な人員不足が起きているのか。京都市交通局に詳しい事情を聞いた。

運転士不足が深刻な京都のバス事情(写真はイメージ)【写真:写真AC】
運転士不足が深刻な京都のバス事情(写真はイメージ)【写真:写真AC】

平均年収が926万円だった翌年の2000年から大規模なコストカットを実施

 京都市交通局が先月27日、深刻な運転士不足を受け「非常事態宣言」を発出した。現行のダイヤと路線を維持するには880人の運転士が必要だが、現在在籍しているのは875人。そのうち育児休業や心身の状況による休職などを除くと実動は830人にとどまり、日々50~60人分の欠員を休日出勤や超過勤務で何とか維持している状況だという。なぜこれほど深刻な人員不足が起きているのか。京都市交通局に詳しい事情を聞いた。

 京都市交通局では今年6月、10年ぶりとなる大規模なダイヤ改定を実施。先月実施した採用試験では約70人の募集に対して受験者は44人にとどまり、少ない人員での休日出勤や超過勤務が常態化している状況だ。市バス810両のうち、4割は運行を民間バス会社に委託。例年の25人程度の定年前離職者も、今年は40人ほどに上るとみられている。24年度からの正社員採用は、バスの運転に必要な大型二種免許がない人に限っている。

「免許保有者、いわゆる“免あり”で採用を行うと、民間のバス会社などから人が流れてしまう懸念がある。公営バスとしては、業界全体のことを考えると、現役で働いている民間の運転士を引き抜きするような採用方法は取れないのが実情です。現在免許を持っていない方に限って採用を行い、採用者にはその後自費で免許を取得してもらって、3年間の分割で還付する形を取っています」

 昨年度の運転士の待遇は平均年収で596万円。全国の民間バス会社の平均より24%高いものの、他の政令指定都市と比較すると9%低い水準となっている。同市が公表している資料によると、1999年の平均年収は926万円。翌年の2000年には給与の15%から20%を引き下げる大規模なコストカットを実施している。ネット上では今回の非常事態宣言発出に対し、「応募者が少ないのはそれだけ待遇が悪いってことですよね?」「給料上げなきゃ人が集まるわけない」と指摘する声も上がっている。

 京都市交通局の担当者はこれらの声について、「公営企業職員である市バス運転士の給与は地方公務員同様、社会一般の情勢に適応して定めなければなりません。社会情勢は変動するもので、過去には給与が高すぎるというご指摘をいただき、今はもっと待遇を上げろと言われている状況です。非常に悩ましいところですが、法律上の建てつけもあり、すぐに給与を上げることは難しい。いただいた声は真摯(しんし)に拝聴し、説明責任を果たしつつ、業界全体で足並みをそろえて処遇や労働環境の改善をこれまで以上にしていかないといけません」と説明。

 今月8日からは今年度3回目となる追加の募集をかけており、今後はオンラインでの採用試験や、大型二種免許を持たない人でもセンター内でバスの運転ができる運転体験会の実施など、バス業界に関心を持ってもらうための取り組みを行っていくという。担当者は「非常に厳しい状況ですが、今回の非常事態宣言も逆手にして、業界への関心を持っていただける人が増えれば」と話している。

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