被害女性が激怒…ジャンポケ斉藤 妻のコメントは「完全に悪手」「致命傷にも」弁護士が分析

お笑いトリオ・ジャングルポケットの斉藤慎二がロケバスの中で20代の女性に対し性的暴行をした「不同意性交罪」などの疑いで7日、警視庁から書類送検された。これに対して斉藤氏の妻は「一方的な行為ではなかった」などのコメントをSNSに投稿。被害女性から非難の声が上がるなど、大きな波紋が広がっている。この投稿について元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は「悪手」と評し、その理由を語った。

西脇亨輔氏
西脇亨輔氏

元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士

 お笑いトリオ・ジャングルポケットの斉藤慎二がロケバスの中で20代の女性に対し性的暴行をした「不同意性交罪」などの疑いで7日、警視庁から書類送検された。これに対して斉藤氏の妻は「一方的な行為ではなかった」などのコメントをSNSに投稿。被害女性から非難の声が上がるなど、大きな波紋が広がっている。この投稿について元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は「悪手」と評し、その理由を語った。

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「一体何のために」。それが斉藤氏の妻による投稿を見た時の第一印象だった。そして今、このコメントが斉藤氏を追い詰めかねない展開になっている。

 不同意性交などの疑いで書類送検されたと報じられた当日、斉藤氏の妻・瀬戸カオリ氏がインスタグラムから投稿した内容は、報道と真っ向から対立するものだった。

 各媒体は斉藤氏が容疑を認め、「軽率な行為で相手や家族に迷惑をかけたことを反省している」と述べたと報じた。対して瀬戸氏は事件を「一方的な行為ではなかった」とし、被害女性に何らかの同意があったと示唆。「不同意性交」を否認するようなコメントを出した。その根拠として瀬戸氏は、斉藤氏と女性が「SNSをフォローしたり、連絡先を交換していた」と明かし、「こちらとしましてはロケバスの中のドライブレコーダー及びカメラの解析を警察の方に求めていました。一方的な行為ではなかったことを伝えている状況でした」と発信したのだ。

 これに対して被害女性は9日、弁護士を通じて「まるで私に非があるかのような事実と異なるコメントが出されました」と猛反発。「今年の7月に斉藤氏から性被害に遭いました。そのことで心身ともに深く傷つきました」と明かす展開になった。

 仮に私が斉藤氏の弁護士だったら、この事態に頭を抱え込んだろう。瀬戸氏のSNS投稿は、斉藤氏が事件にどんな方針で臨む場合でも、マイナスにこそなれ、プラスにはならない「悪手」だからだ。

 刑事事件の弁護方法は大きく分けると2つ。「容疑を否認して、無罪を主張する」か、「容疑は認め、示談などで起訴や重い刑を避ける」かだ。今回、斉藤氏が無罪を主張する予定なら、事件について周囲が発信する時には内容を慎重に吟味する必要がある。そうしないと、今後の法廷闘争に支障が出かねないからだ。

 だが、瀬戸氏のコメント内容は、斎藤氏の容疑を打ち消すには「足りない」ものだった。「斉藤氏と女性は連絡先交換などをした」という主張は、「だから性的行為に『同意』があった」ということには、到底ならない。性的行為の「後」に連絡していたとしても、2人の力関係によっては「女性がそうせざるを得なかっただけ」という可能性もある。そもそも、瀬戸氏のコメントには2人による連絡先交換が、行為の「前」か「後」かさえ書かれていない。

 投稿にはロケバスのドライブレコーダーなどの解析を警察に「求めた」とも書かれているが、「求めた」結果どうなったのかは書かれていない。結局、ドライブレコーダーは調べたのか、そこから何か証拠は見つかったのかという肝心な点は不明だ。さらに斉藤氏側は「一方的な行為ではなかった」と警察に「伝えた」というが、それに対して警察側がどう答えたかも書かれていない。

 瀬戸氏のコメントには「性的行為に一定の同意があったはず」という斉藤氏側の「言い分」は書かれているが、そのはっきりとした根拠や裏付けは示されていない。そうしたコメントを今あえて公表しても「無罪主張に根拠が乏しい」という印象を与えるおそれがあり、弁護にプラスに働くとは考えにくいだろう。

 さらに言うと、斉藤氏が容疑を認める方針だったとしたら、瀬戸氏のコメントの影響はより深刻。場合によっては致命傷になりかねない。性犯罪の事件で、罪を認めた上で起訴を回避したり、刑を軽くしようとする場合の一番の弁護活動は、被害者に誠意をもって謝罪し、示談して許してもらうことだからだ。その状況下、被害者をSNSで攻撃したら、まとまる話もまとまらなくなる。

刑事事件に関する情報発信「細心の注意を」

 また、一部メディアが「斉藤氏サイドの話」として「被害女性の側が行為をした」などと報じ始めた。こうした情報発信は被害女性の怒りに火をつけ、示談の可能性を消していくだろう。裁判で刑を軽くしてもらおうとしても、掲載されているコメントを証拠に「斉藤氏は被害女性に責任を被せる説明を周囲にした」と認定されたら、「反省していない」と判断されかねない。

 不同意性交罪の刑は「5年以上」の懲役だ。刑務所にいきなり行かなくとも済む「執行猶予」をつけてもらうには懲役が「3年以下」である必要があるため、この罪での有罪は「実刑」。つまり「いきなり刑務所行き」が原則となる。もっとも、裁判官が反省の様子などを見て、刑を法律の決まりよりも特別に軽く「減軽」してくれたら、「執行猶予」の可能性は出てくる。斉藤氏が裁判で有罪になったら、刑務所に行くか行かないか、ぎりぎりの境界線に立つことになるのだ。だからこそ、事件についてのうかつな発信は致命傷になりかねない。斉藤氏の妻によるSNS投稿は、こうした事情も考えた上での発信だったのだろうか。

 刑事事件に関する情報発信には細心の注意が必要だ。不用意な発言が被害者への「セカンドレイプ」にもなりかねない性犯罪事件ならなおさらだ。無実だと発信するなら、弁護士に監修してもらってきちんと根拠ある主張をする。そうでないなら、端的な謝罪にとどめる。そうしないと、さまざまな意味で取り返しのつかない事態を招くのではないか。私はそう危惧している。

□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ) 1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。今年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。

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