ジャンポケ斉藤で注目、「性的暴行」と「わいせつ行為」何が違う? 弁護士が捜査のポイントを解説

お笑いトリオ・ジャングルポケットの斉藤慎二が、不同意性交等罪と不同意わいせつ罪の疑いで書類送検された事件を巡り、波紋が広がっている。ネット上では、報道にある「性的暴行」との表現を巡り、行為の詳細を憶測する声も上がっているが、一般に使われる「わいせつな行為」との違いは何なのか。今後の捜査のポイントも含め、元検事でレイ法律事務所所属の西山晴基弁護士に見解を聞いた。

ジャングルポケットの斉藤慎二【写真:ENCOUNT編集部】
ジャングルポケットの斉藤慎二【写真:ENCOUNT編集部】

ロケバス車内で20代の女性と性的な行為を行ったとされ、女性が警察に被害届を提出

 お笑いトリオ・ジャングルポケットの斉藤慎二が、不同意性交等罪と不同意わいせつ罪の疑いで書類送検された事件を巡り、波紋が広がっている。ネット上では、報道にある「性的暴行」との表現を巡り、行為の詳細を憶測する声も上がっているが、一般に使われる「わいせつな行為」との違いは何なのか。今後の捜査のポイントも含め、元検事でレイ法律事務所所属の西山晴基弁護士に見解を聞いた。

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 報道によると、斉藤は今年7月、ロケバスの車内で20代の女性と性的な行為を行ったとされ、その後女性が警察に被害届を提出。警視庁が7日、斉藤を不同意性交等罪と不同意わいせつ罪の疑いで書類送検した。これを受け、所属する吉本興業は斉藤との契約を解除。斉藤は行為があったことを認め謝罪しているものの、妻でタレントの瀬戸サオリはSNSを通じ「一方的な行為ではなかった」と“不同意”であったことは否定している。

 今回、なぜ「逮捕」ではなく「書類送検」となったのか。西山弁護士は「逮捕となるのは、逃亡や証拠隠滅の恐れがあるとき。今回は斉藤氏が性的な行為があったという事実自体は認めており、捜査に協力しているためでしょう」と見解を語る。

 ネット上では、報道にある「性的暴行」との表現を受け、「『わいせつな行為』じゃなくて『性的暴行』なので、挿入ありの強姦」との誤った認識も広がっている。「わいせつな行為」と「性的暴行」の表現には、一般的にどのような違いがあるのだろうか。

「前提として、性加害や性的暴行という表現は法律用語ではありません。もともとあった強姦という罪名が、法改正で口腔性交等を含む強制性交等罪となり、さらに強制性交等罪、強制わいせつ罪が法改正されて、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪に変わりました。『性交等』は挿入や口腔性交などの性行為一般、『わいせつ』はキスや胸を触るなどの性的な行為全般を指します。性加害や性的暴行という表現は、無理やり自分の性欲を満たすためになされた性的行為全般を表現してきたように思われますが、性交等・わいせつのいずれも、現在は同意がなければ犯罪です」

西山晴基弁護士
西山晴基弁護士

昨年7月の法改正前であれば、罪に問われなかった可能性も

 一連の法改正の経緯について、西山弁護士「強制性交等罪のときは暴行や脅迫があった上での性交等でなければ認められませんでしたが、不同意性交等罪となったことで暴行や脅迫の要件はなくなり、同意があったかどうかが問われるようになりました」と解説。今回の事件は、昨年7月の法改正前であれば、罪に問われなかった可能性もあったという。話題を呼んだ同事務所の松本人志(民事で係争中)やサッカー日本代表の伊東純也選手(その後嫌疑不十分で不起訴)は不同意性交等罪施行前の事案で、同じくサッカー日本代表佐野海舟選手の例(不起訴)を除けば、芸能人が絡んだ初めてのケースになるのでは、と西山弁護士はいう。

 不同意わいせつ罪の法定刑は6か月以上10年以下の懲役。不同意性交等罪は5年以上の懲役で、執行猶予がつかない実刑となる可能性が極めて高い。今後の捜査を巡っては、両者に同意の認識がなかったかどうかが最大のポイントになるという。

「不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は、当事者の認識が曖昧な場合も多く立証が難しい。訴えられた側は、なぜ同意があったと思ったのかを反証しなければなりません。今回であれば、ロケバスのドライブレコーダーなどの客観的な証拠はかなり重要です。仕事中で人の出入りも多いロケバスの車内で、はたして不同意性交等罪が成立するのか。性被害を巡る事件では、被害者が裁判で証言する心理的負担を避け、示談となる場合も多いですが、仮に起訴されれば注目される裁判になることは間違いありません」

 報道では、メディアによって「性加害」や「性的暴行」などの表現が混在しており、行為の内容が分かりにくかったり、言葉がひとり歩きしてしまい誤解が起こりやすい場面もある。西山弁護士は「不同意性交等罪や不同意わいせつ罪の基準は同意があったかどうかで、暴行や加害行為の有無にかかわらず犯罪になり得ます。いずれも法律用語ではないのでメディアの表現次第ですが、表現が強すぎてかえって実態に則していない面もあるのではないでしょうか」と話している。

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