“暴走王”小川直也、日本柔道界に警鐘 五輪と異なる独自ルールに疑問「首謀者出てこい」
“暴走王”小川直也の柔道愛が止まらない。小川は最近立ち上げた自身のYouTubeチャンネル「小川直也の暴走王チャンネル」において、8月に終了したパリ五輪での柔道について持論を展開してきたが、最近は他のチャンネルでも柔道を話し出したら止まらない雰囲気だ。
全日本選手権は(五輪と違って)三審制
“暴走王”小川直也の柔道愛が止まらない。小川は最近立ち上げた自身のYouTubeチャンネル「小川直也の暴走王チャンネル」において、8月に終了したパリ五輪での柔道について持論を展開してきたが、最近は他のチャンネルでも柔道を話し出したら止まらない雰囲気だ。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
最近の小川は、とにかく日本柔道界に警鐘を鳴らし続けている。一見すると、それは批判とも取られる可能性はあるが、根底にはしっかりとした愛情が感じられるし、そこまで難しいことを言っているようには見られない。
例えば、小川はYouTubeチャンネル「熱血道チャンネル」において、昨今話題になるルール問題に触れ、「ルールを世界と統一させればいいのに、日本独自のルールを作るわけよ。なんでそういうことをするのかなって。やってるプレイヤーが第一じゃない。なのに、そこを考えてないな。誰が首謀者なんだ。出てこいみたいなさ」と叫ぶ。
ここ最近公開された動画には、『1・2の三四郎』『柔道部物語』『JJM女子柔道部物語』の作者でもあり、やはり柔道にも造詣が深い、漫画家の小林まこと氏とも共演しているが、小林氏から「小川さんが柔道界でも暴走してほしい」と求められるほど。
さらに小川は「今年の全日本選手権を見ていて腹が立ちました。なんで自分たちだけはこうしようって独自のルールを築いちゃうんだろうって。(五輪と違って)三審制ですよ、いまだに。たしかに日本武道館での格式ある大会なんですけど、こだわりすぎちゃって。俺、別にカラー道着でもいいような気がして」「全部統一すればいいじゃん」と話す。
たしかに野球はルール内の呼び方にしても、いつの頃からかグローバルスタンダードに合わせて、ストライクではなく、ボールを先に呼ぶようになった。そういった姿勢が、大谷翔平のようなビッグスターを生み出した可能性は否定できない。
「柔道もそうあるべきだと思うんだよね」
小川の考え方は、歴史や伝統を重んじながらも、今の時代に沿った方法を取ることが必要だと言いたいのだろう。
しかも小川が「俺たちの代は国際大会の走りじゃん。なのに、いまだに白道着じゃなきゃいけないとかさ。誰が言っているんだろう?」と話すと、「柔術の試合なんか見ていると、道着がカッコいいんだよねえ」と小林氏が世界的に競技人口の激増している柔術に触れる。
少し検索すればすぐにヒットするが、色とりどりの柔術着の色彩は、たしかに“映え”という意味では非常に現代的に思える。
「あれは柔道じゃない」と言われた世界王者の小川
そもそも小川は小林氏との対談動画で衝撃的な発言をしている。
「今なら、いろんなスポーツをやってから柔道に入るのも、それもアリじゃないって話になってるんだけど、当時はイチから柔道をやらないと柔道家じゃないみたいな」、「外者みたいな感じだった。柔道界の常識を覆されたみたいな。僕自身も組み手で、当時の柔道は襟の位置も首の横くらいを持つのが普通だったじゃないですか。それをいきなり背中の方を持って。いわゆる(当時の日本で常識的とされた)柔道をしてなかったんですよ。今のJUDOのほうの柔道から入っているので、そういう意味では基本もクソもないぞみたいな感じで思われていましたね」「あれは柔道じゃないみたいなことも言われちゃって。今なら普通の柔道ですよ。やることが早すぎたかもしれないですけど。だから時代がついてこなかったみたいな」
これはすべて「暴走王チャンネル」での発言だが、たしかに高校から本格的に柔道を始めて、19歳7か月という史上最年少で世界選手権を獲得してしまうような怪物の方程式は、それまでの柔道関係者には違和感そのものだったのだろう。
それでも小川は、「五輪が一番世間にアピールしているじゃない。だから五輪を見て育つわけじゃん。なのに全日本選手権は(ルールが違うのか)」と声高に叫ぶ。それは自身がバルセロナ五輪で銀メダルを獲りながら、世間からバッシングを浴びたこととも無縁だとは思えない。それだけ注目度の違いを実感したからこその物言いだ。
「たしかにカラー道着にすると、選手の負担は増えるじゃない。でも、どうせなら全部ひっくるめて、対世間を意識するなら全部一緒のほうがいいと思うよ」「学生や収入を得ていない人は柔道界がフォローするとかさ。そうすると柔道界にカネがねえとかはじまって。カネがないなら集めろやって話じゃない」
この小川の発言には小林氏も「子どもの大会ならともかく、全日本選手権なら柔道着が負担な人なんているわけないもんね」とひと言。たしかに五輪に続く道が開かれる全日本選手権レベルなら、世界基準を取らない道理はない。
とはいえ、道着ひとつ取っても簡単に話が進まない日本柔道界のあり方を見ていくと、とても細かなルールを統一させることは難しそうだ。
小川は今、18年前に神奈川県茅ヶ崎市に建てた小川道場で、子どもたちを相手に柔道を教えている。そんな小川だからこそ、日本柔道界が五輪の時だけJUDOに合わせている姿勢に異を唱えたくなるのだろう。
小川は普段から日本の柔道が世界基準のJUDOそのものでいることが、日本柔道界の視野を拡大させ、新たなる市場の開拓ができると考えている。