転機になった『Best Friend』…完成後に喉を傷めたKiroro玉城千春「『ちゅらさん』と曲に救われました」
現在、再放送中のNHK連続テレビ小説『ちゅらさん』(月~金曜午後0時30分)が、あらためて多くの視聴者に親しまれている。番組のオープニングを飾るのはKiroro(玉城千春、金城綾乃)の代表曲で、2001年にリリースした『Best Friend』だ。2人は現在ソロ活動中。3児の母でもあるボーカルの玉城は、最新アルバム『WITH YOU』を引っ提げて10月13日、東京・立川ステージガーデンで開催の音楽フェス『ママホリ 2024』に出演する。本番が近づく中、玉城がENCOUNTで子育てや『Best Friend』の思い出などを語った。
音楽フェス「ママホリ2024」で中村あゆみ、相川七瀬、AI、相田翔子らと共演
現在、再放送中のNHK連続テレビ小説『ちゅらさん』(月~金曜午後0時30分)が、あらためて多くの視聴者に親しまれている。番組のオープニングを飾るのはKiroro(玉城千春、金城綾乃)の代表曲で、2001年にリリースした『Best Friend』だ。2人は現在ソロ活動中。3児の母でもあるボーカルの玉城は、最新アルバム『WITH YOU』を引っ提げて10月13日、東京・立川ステージガーデンで開催の音楽フェス『ママホリ 2024』に出演する。本番が近づく中、玉城がENCOUNTで子育てや『Best Friend』の思い出などを語った。(構成=福嶋剛)
うちの子どもたちは、長男が18歳で大学1年、長女は17歳で高校2年生、次女は15歳で中学3年生の3人です。みんな大きくなり、だいぶ、ゆっくりさせてもらう時間ができました。でも、まだまだ子育ては続くので本当に落ち着くのはもう少し先になりそうです。
長男は、小さい頃から妹たちの面倒見がいいです。とっても頼りがいもあってチャレンジ精神旺盛なお兄ちゃんです。兄妹は、お兄ちゃんが中心に立っていたので、「ママをよろしく!」という感じで巣立っていきました。だから、今は寂しくて魂を半分持っていかれたような感じ(笑)。でも、息子は自由に好きなことを楽しんでいるみたいでホッとしています。
長女は、3兄妹の中で一番マイペース。私より大人ですね(笑)。すごく落ち着いています。部活ではマネジャーをやっていて、趣味も勉強も忙しくやっているみたいです。次女は寂しがり屋で甘えん坊さん。私が家を空けると「寂しいから」と言って、ライブについてくることもあります。女子チームは2人とも思春期なので会話は減りました。だけど、お兄ちゃんがいなくなって「これから娘たちとの時間を大切にしていかなくちゃ」って思っています。
子育てのスタートは、夫の実家に近い沖縄の市街地でした。でも、人も交通量も多くて、なかなか息子を自由に遊ばせてあげることができなかったんです。それで夫と話して、「子どもたちが大きくなる前に思い切り遊べる環境を作ってあげよう」と決め、私の実家がある読谷村(よみたんそん)に引っ越しました。お庭にトランポリンを置いたり、お友達とキャンプをしたり、大きな声で歌っても大丈夫です。私の弟や妹家族も近くに住んでいるので、子どもたちには親せきやお友達など、いろんな人たちの考え方に触れながら育ってほしいと思っていました。
そんな子どもたちも大きくなり、今では私の方が3人に教わることも多くなりました。母親としての私は、すごくマイペースな性格だと思います。休みの時はずっと寝ているので、娘たちによく怒られます。気分の良い日は朝、太陽に向かって「今日も子どもたちを見守ってね」って大きな声を出したり、思い立ったら急に「キャンプ行くよ」って、突然動き出すこともあります。なので「また、始まったよ」って子どもたちが呆れています。
子育てで一番大変だったのは次女が生まれた頃です。長男が4歳、長女が2歳でした。ご飯もお風呂もトイレも保育園の送り迎えも、3人とも生活リズムが違うから朝から晩までバタバタでした。子どもたちを寝かせて一息ついた瞬間に曲を作ったり、昼間は、お友達と遊んでいる隙に押し入れの中で歌を録音していました。
でも、不思議なことに仕事に出かけると家庭のことをまるっきり忘れて音楽に集中できるんです。ただ、その切り替えがちょっと極端で、仕事から帰ってくると家でやっていたことをすっかり忘れてしまい、家に帰ると「何をしようとしてたんだ」って思い出すまでに時間が掛かるんです。反対に仕事に行く時も、家事に集中し過ぎて、化粧やヘアメイクなどの準備を忘れそうになったりします。まるで全く違う2つの世界を行き来しているような感じなんです。
音楽に関しては、「聴いてくださる方たちの生活の一部に私の音楽があったら良いな」と思っていて、これまでの経験や生活の一部が曲になり、歌詞になっています。なので、シンガーである前に1人の人間としてちゃんと自分の人生を楽しめているかが、何より大切なんです。
『未来へ』という曲は、中学3年の時に私が初めて作って母にプレゼントした楽曲です。そして、「たくさんの人に聴いてもらいたい」という思いを抱きながら、Kiroroでメジャーデビューしました。でも、すぐに忘れ去られてしまう曲じゃなくて、「聴いてくださった人の思い出に残るような曲を作りたい」と思ってやってきました。
2人の娘が参加したソロアルバム
今年4月からは、NHK連続テレビ小説『ちゅらさん』がお昼に再放送されていて、私も『Best Friend』をよく耳にしています。今でも多くの人に聴いていただけて素直に「ありがとうございます」って言いたいです。
『Best Friend』は、Kiroroが一番忙しい時期に作った曲でターニングポイントになった曲でもあります。あの曲が完成した後、私は喉を痛めてしまい、NHK紅白歌合戦紅白に出場した後、半年間お休みをいただきました。当時、休むのがとっても怖かったんです。でも、休んでいる間も『ちゅらさん』のおかげで、いろんなところで『Best Friend』が流れていて、この曲に救われました。それがきっかけで自分の人生を大切にしながら、シンガーとして自分の気持ちに正直であり続けたいと思うようになりました。
2018年にKiroroが20周年を迎えて、私自身もソロとして「次はどんなふうに曲を作って歌っていこう」と考えていました。そんな時、20周年の活動が終わり、個人でマレーシアの児童養護施設を訪問したことがきっかけで、「子どもたちのために何かしたい」という気持ちが湧いてきました。その後、すぐにコロナ禍になり、読谷村の小中学校の放送室から生徒さんたちに歌を届けたり、地元の児童養護施設を訪問する活動を行いました。そこで私が子どもたちに残せるものは何かを考えた時、「物質的なものではなく歌だ」と気付きました。そんな思いで作ったのが、今年7月にリリースした配信アルバム『WITH YOU』です。読谷中学や沖縄県内のインターナショナルスクールの生徒さんたち、児童養護施設のお子さんや職員さんと交流をしながら曲を作りました。
今回、初めてうちの子たちの感想やアドバイスも参考にしました。「ここは良くない」とか「メロディーがかわいくない」とか遠慮なく言ってくるんですよ(笑)。長男は受験シーズンだったので参加できなかったのですが、2人の娘はコーラスでレコーディングに参加してもらいました。7曲目の『Dear My Friends』は長女がEchoという名義で作詞作曲をし、演奏して、歌った楽曲です。
まさか私の未来に親子でレコーディングする日が来るなんて想像もしていませんでした。子どもたちが小さい頃は送り迎えの車の中でよくハモっていました。私が大きな声で入ると「本気で歌うの止めて!」って怒られたり。最近は次女が私の知らない難しい曲を聴かせながら、「こういうの歌える?」って言ってきます。
そして、10月13日には音楽フェス『ママホリ 2024』に出演させていただきます。先日、合同リハーサルがありました。ママさんといってもみなさんキラキラしたアーティストさんばかりで、リハーサルからキラキラしていました(笑)。最初はすごく恐縮していたんですが、あゆみさんの皆さんへの声かけや優しさで場がふわっと明るくなり、私も安心してリハーサルができました。あゆみさんの素敵な言葉をいただいて、今から本番がとても楽しみです。きっとイベント当日はもっと楽しいステージになると思います。みなさん楽しみにしておいてください。
□玉城千春(たましろ・ちはる) 1977年4月17日、沖縄・読谷村生まれ。95年、高校時代に同級生の金城綾乃とKiroroを結成。ボーカル、作詞作曲を担当。98年1月、『長い間』でメジャーデビュー。以降、『未来へ』『Best Friend』など多くの人が口ずさめるヒット曲を出した。NHK紅白歌合戦出場には3回出場(98年、99年、2001年)。21年には、10年ぶりにソロ活動をスタート。今年、配信アルバム『WITH YOU』をリリース。