朝出勤した従業員からの緊急電話で駆け付け、現場を見てぼう然となった。さいたま市内で、車両6台が大量盗難に遭う事件が発生した。自動車販売店の事務所荒らし、それだけでなく、販売用の商品車を強奪する卑劣な犯行。社会問題化している車両盗難がまたもや起きてしまった。被害者の男性経営者は「不安のまま仕事や生活を続けていくのはつらい」と、精神的にも苦しんでいる。

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　日付が変わった9月29日の午前2時30分過ぎ。防犯カメラには、数人の不審な男が販売店敷地内に置かれている車両を取り囲んでいたり、事務所内を物色する様子が映されている。生々しい犯行現場だ。

　被害に遭った自動車販売店の男性経営者によると、被害車両は、レクサスCT200h（白と銀の2台）、BMW3シリーズ、レンジローバー・イヴォーク（銀色）、プリウスα（ライトブルー）、日産フーガ（車高少し低い、RAYSホイール）の計6台。高級ブランドや高級SUV、ハイグレードのセダンといった人気車種ばかりが狙われた。

　車両は販売店の屋外の敷地内に止めていたが、今回は事務所に不法侵入され、商品である車の鍵を根こそぎ盗まれた。犯人グループは通常通りに鍵を使って車両のドアを開けて乗っていったとみられ、セキュリティーが作動することはなかったという。

　そこにあるはずの車両がごっそりなくなっている自分の店の光景を見て、男性経営者は気が動転。「まさか自分たちが被害に……という思いでした。ウチみたいな小規模の販売店も狙われるとは」と、ショックに打ちひしがれている。

　犯人グループは若い男たちとみられる。プリウスなどは盗難時にナンバーが付け替えられている可能性が浮上。手慣れたような犯行に、怒りを覚えるばかりだ。

　男性経営者は従業員らと周囲のコインパーキングを捜索するなど、警察の捜査を待ちながらも、できる範囲での懸命の取り組みを行っている。

「車が戻ってくるかどうか、通常通りの営業に戻れるかどうか、もし再開してもまた同じことが起こるかもしれないと、不安でなりません」。心の傷も負った。業界での仕事歴は長く、独立して時間がたたない中で、悪質な犯行に襲われた。「不安ばかりで、打撃はかなり大きいです」。苦しい胸中を明かす。

　全国で後を絶たない自動車盗難。抑止力を持たせるため、量刑の「厳罰化」を求める声も上がっている。

　男性経営者は「こうした犯罪がまん延しないように、もっと刑罰が厳しくなればと思います」と言葉を絞り出した。