吉岡里帆、悪役で感じたやりがい 視聴者の「嫌い」の声が「うれしかった」…思い出の一作とは
米映画『トランスフォーマー/ONE』(公開中)で日本語吹き替えに初挑戦した俳優の吉岡里帆(31)。本作はトランスフォーマーたちの始まりの物語をリアルCGで描く大ヒットシリーズの最新作だ。吉岡が俳優人生で“トランスフォーム”した出来事とは何かを聞いた。
米映画『トランスフォーマー/ONE』で日本語吹き替えに初挑戦
米映画『トランスフォーマー/ONE』(公開中)で日本語吹き替えに初挑戦した俳優の吉岡里帆(31)。本作はトランスフォーマーたちの始まりの物語をリアルCGで描く大ヒットシリーズの最新作だ。吉岡が俳優人生で“トランスフォーム”した出来事とは何かを聞いた。(取材・文=平辻哲也)
本作はトランスフォーマーの起源を描く物語。『トイ・ストーリー4』のジョシュ・クーリー監督が務めた。サイバトロン星を舞台に、主人公オプティマスプライムと宿敵メガトロンの隠された友情が初めて明らかになる。吉岡はオリジナル版でスカーレット・ヨハンソン(39)が演じた女性戦士トランスフォーマー・エリータの声を担当している。
俳優業では演じる役がらに自分を重ねて、共通点を見いだすそうだが、声の仕事でも同じなのか。
「やっぱり、気持ちを共鳴できた方が魂がガチッと合う感じがします。だから、共通点や共感できるところを見つけます。エリータは自分の信念を曲げない、自分の思う正しさに嘘をつかない。そのためには嫌われる覚悟もあります。最初は、仲間の3人のロボットに対して、強気な態度を取ったりして、少し不器用に見えるけど、彼女は彼女なりの正しさをちゃんと突き進んでいます。そこに強く共感しました」
吉岡は京都出身。学生時代に舞台の面白さに目覚め、関西の小劇場などでの客演や自主制作映画に出演。その後、京都から東京の養成所に通いながら、商業作品で本格デビュー。デビューから俳優としてのキャリアは約10年になる。そんな吉岡が俳優として、“トランスフォーム”した作品は、TBS系連続ドラマ『カルテット』(2017年)だという。
同ドラマは『東京ラブストーリー』などで知られる坂元裕二氏によるオリジナル脚本。松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平が弦楽四重奏を組むという人間ドラマ。吉岡は物語を激しくかき乱すライブレストラン「ノクターン」のアルバイト店員・来杉有朱役を演じている。
「『カルテット』では、私、すごく意地悪な顔をしているんですよ。放送中は毎週、視聴者のみなさんから『嫌いだ』とか、『もういなくなって欲しい』と言われたんですけど、それがうれしかったんです。来杉有朱という役がみなさんに刺さっている、楽しんでもらっているんだ、と。そんな感覚があったんです。作品においての刺激物というか、そういう役割を担えるやりがいがあるんだなと思いました。悪役だったり、嫌われる役でも、作品においてはすごく意味があるんだというのを知った瞬間だったかもしれません」
『トランスフォーマー/ONE』でも、主人公のオプティマスよりも、敵キャラ・メガトロンに惹かれたのだという。
「メガトロンが悪になる理由が分かるんですよね。裏切られた悲しみから、立場を違えてしまう。彼の決意には胸が熱くなるんです」
堂本剛主演の映画『まる』(10月18日公開、荻上直子監督)でも、吉岡はユニークな役を魅力的に演じている。現代美術家(吉田鋼太郎)の“やりがい搾取”に怒り、周囲が引くくらいの闘志をむき出しにするアシスタント役だ。
「私は、どんな作品でもオリジナリティーと信念があれば、必ずお客さんに思いが届くと信じています。だから、役の大小、インディーズ、商業作品に関わらず、いろんなものに出たいと思っています」。今後も、幅広い役で観客を楽しませてくれそうだ。
□吉岡里帆(よしおか・りほ)1993年1月15日生まれ、京都府出身。近年の映画出演作品に、『ハケンアニメ!』(22/吉野耕平監督)、『アイスクリームフィーバー』(23/千原徹也監督)、『Gメン』(23/瑠東東一監督)、『ゆとりですがなにか インターナショナル』(23/水田伸生監督)、『怪物の木こり』(23/三池崇史監督)など。待機作に、『まる』(10月18日公開、荻上直子監督)、『正体』(11月29日公開、藤井道人監督)がある。