松本人志裁判、新証拠に「大物タレント」が登場 黒塗りで4文字…この人物が裁判を終わらせるのか

ダウンタウンの松本人志が自身の性行為強要疑惑を報じた週刊文春に名誉を毀損(きそん)されたとして、同誌発行元の文藝春秋社などに5億5000万円の損害賠償などを求めた訴訟は、ストップしまままだ。8月14日に予定されていた裁判期日が中止。1か月以上が過ぎても、新たな期日が設定されていない。一体、何があったのか。あらためて裁判記録を閲覧した元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、文春側の証拠書面に登場したある人物に注目した。

松本人志【写真:ENCOUNT編集部】
松本人志【写真:ENCOUNT編集部】

元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士が記録を閲覧

 ダウンタウンの松本人志が自身の性行為強要疑惑を報じた週刊文春に名誉を毀損(きそん)されたとして、同誌発行元の文藝春秋社などに5億5000万円の損害賠償などを求めた訴訟は、ストップしまままだ。8月14日に予定されていた裁判期日が中止。1か月以上が過ぎても、新たな期日が設定されていない。一体、何があったのか。あらためて裁判記録を閲覧した元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、文春側の証拠書面に登場したある人物に注目した。

 あれから40日。松本人志裁判は奇妙な沈黙に包まれている。

 8月14日の裁判期日がその前日に突如取り消され、新しい日程がいまだに決まっていないという異例の展開に、一部からは「松本氏側が和解や訴え取り下げを検討しているのではないか」という観測も流れている。

 裁判に何か進展はないか。私は改めて東京地裁に赴き、裁判記録を閲覧した。結果は空振り。期日中止の後、裁判記録は全く更新されていなかった。だが、資料を見直してあることに気付いた。裁判が止まる1週間前、文春側が提出した新証拠に「新しい人物」が登場していたのだ。

 その人物は、性被害を訴えた2人の女性のうちの一人、B子さんを文春記者が取材したメモに登場する。B子さんはスピードワゴン小沢一敬氏の誘いで松本氏らが待つホテルの部屋を訪ねた時の様子についてこう証言していた。

「部屋に入ると既に4人の男性がいました。面識のある小沢さんの他、初対面の放送作家、そして松本人志さん、大物タレント(●●●●)がいました」

「大物タレント」のワードが、この裁判に登場したのは初めてだ。その横のカッコの中には実名が書かれていたようだが、証拠提出にあたって文春側が配慮したのか、「黒塗り」にされている。「黒塗り」の大きさは、上下の文字から推測すると「4文字分」だった。

 実は昨年12月に報じられた週刊文春の第1弾記事には、B子さんの性被害の現場に松本氏、小沢氏らの他に「男性タレント」がいたことが記されていた。そして、「同郷のモデルに狙いを定め、彼女を抱き寄せると、2人で部屋を後にした」と書かれていたが、それ以上の詳細は報じられていなかった。

 しかし、文春側が今回提出したB子さんの取材メモには、次のように書かれている。

「序列で言えば4人の中では完全に松本さんが一番上。でも大物タレントと同じくらいか。松本さんと大物タレントが同格。そして小沢さんがいて、一番下が放送作家」

 そして、当の飲み会も始まってから1時間くらいは「松本さんと大物タレントが今後の芸能界について語る」という真面目な会だったという。とすると、この「大物タレント」は、松本氏とかなり深い信頼関係にある人物と推測される。

 その人物の名前が、黒塗りになっているとはいえ、裁判書類に新たに登場した。しかも、審理の焦点の一つ、B子さんへの性加害の現場に同席していた人物としてだ。それを見た松本氏はどう感じたのだろうか。

 今回の裁判の焦点は文春記事に報じられた「飲み会」の実態なので、この先裁判が続いて争いが激しくなると、同席していたとされる「大物タレント」も裁判の証人となる可能性がある。その時には今はその名前に付されている「黒塗り」が外されることになる。

 B子さんの取材メモには「大物タレント」が性加害をしたという記載は一切ない。むしろ1人の女性と「2人の世界」に入って仲むつまじくしていたと書かれているので、本人の言動が非難されることはないだろう。しかし、松本氏に性加害や性上納の事実があった場合には「同席していたのに松本氏の行動を黙認した」と指摘される恐れはある。

西脇亨輔弁護士
西脇亨輔弁護士

提訴から9か月…裁判は進まずに傷つく人が多数

 現時点でも、この件に関係した松本氏の後輩芸人らは芸能活動が困難になっていて、スピードワゴン小沢氏は1月から活動自粛のままだ。この裁判にさらに多くの人が巻き込まれていくことは誰も望んでいないだろう。

 そうした中で、8月7日に週刊文春側が提出した裁判書類によってその主張の全体像が明らかになり、これを見た松本氏側があらためて「この先、裁判を進めると、より多くの人に影響や批判が及ぶ恐れがある」と気づいたのかもしれない。そして、このことが文春側の書類提出の1週間後に、裁判が突然中止になった背景となった可能性はないだろうか。あくまでも推測だが、裁判記録を見直してそんなことを考えた。

 それにしても、この裁判は提訴から9か月が過ぎようとしているのに、審理はようやく序盤に差し掛かったという段階だ。その間にさまざまな場外乱闘が繰り広げられ、多くの人が傷ついた。

 なぜ、こんなことになったのか。最初の文春報道の時に松本氏が公の場で自分の考えを説明すべきところは説明し、一方でお詫びすべきところがあればお詫びする。そうしていれば、こんな泥沼にはならなかったのではないだろうか。

 今後も法廷闘争が続くのか。それとも、これ以上は燃え広がらずに裁判が終わるのか。行く末は分からないが、現在の沈黙が何か重要な意味を持っていることだけは間違いないと思う。

□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。今年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。

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