令和の大暴落「これが救いに」 難局乗り切った“億り人”杉原杏璃 再認識した「ピンチはチャンス」

投資や資産運用が世の中に浸透してきている中で、今夏、日本経済は大きな衝撃に見舞われた。日経平均株価が大暴落した、8月5日の「令和のブラックマンデー」だ。4451円安の歴史的な下落を記録した一方で、翌6日は最大の上げ幅(3217円高)で急騰。乱高下に混乱が広がった。タレントで実業家・投資家としての顔を持つ杉原杏璃も、大暴落の影響を受けた投資家の1人だ。“その時”に何を考え、どのような行動に出たのか。23歳で株式を始め、30歳を過ぎて“億り人”になった投資のプロに、投資初心者へのメッセージを聞いた。

「株タレント」としても活躍する杉原杏璃【写真:かんき出版提供】
「株タレント」としても活躍する杉原杏璃【写真:かんき出版提供】

グラビア時代の23歳で株式を始めて30歳を過ぎて“億り人”に

 投資や資産運用が世の中に浸透してきている中で、今夏、日本経済は大きな衝撃に見舞われた。日経平均株価が大暴落した、8月5日の「令和のブラックマンデー」だ。4451円安の歴史的な下落を記録した一方で、翌6日は最大の上げ幅(3217円高)で急騰。乱高下に混乱が広がった。タレントで実業家・投資家としての顔を持つ杉原杏璃も、大暴落の影響を受けた投資家の1人だ。“その時”に何を考え、どのような行動に出たのか。23歳で株式を始め、30歳を過ぎて“億り人”になった投資のプロに、投資初心者へのメッセージを聞いた。(取材・文=吉原知也)

「影響はもちろんありました。持ち株のほとんどが何十%も下がりました。日銀の追加利上げや為替相場の円高進行は、市場ではある程度の織り込み済みの情報だったのに、こんなに株価が下がるんだと、正直びっくりしました」

 急落の当日の心境についてこう振り返る。約20年に及ぶ投資歴の中でも驚がくの事態で、痛手を負ったという。

「今年に入ってそれまでプラスになっていた分が、ほぼ全部なくなりました。それだけインパクトのある出来事で、ああいう暴落はやはり予期しない時に起こるものだと改めて感じました」。それに、「損切りしたものも実はありました」。あまりに含み損が大きくなった銘柄を売り、損失を被った。一時期は資産が大きく目減りした。

 毎年の夏枯れ相場を前に、お盆期間中に変動が起きた時のリスクを減らそうと、前々から売ろうと考えていた銘柄を整理している。ちょうどリスクヘッジに取り組んだタイミングで、一部の銘柄を直近で売却して利益確定をしていた。「これが救いになりました」という。

 結果的に、急転の株価高騰もあり、8月末時点で資産は回復。「損切りした分もありましたが、高配当の銘柄を拾う(安値の時に買う)こともできました。ショックは大きかったですが、今はちょっとプラスになったかなという感覚です」と話す。

 激動の夏をくぐり抜けたことで、市場の不確実性を再認識し、投資の基本に立ち返ることもできた。

「2024年分の利益が一気になくなって、一気にまた戻る。なかなかこの短期間でこんなに乱高下することはなかったので、いい経験になりました。株価が大幅に下がった時に買って利益の上積みを狙うという手法も含めて、やっぱり、ピンチはチャンスなんだということです。それに、暴落が来た時のために余力をしっかりと残しておくこと、余剰資金の中で運用していくことは大事だなと改めて思いました。教訓になりました」と実感を込める。

 杉原自身、投資を開始して3年でリーマン・ショック(2008年)を経験している。投資初心者は動揺してしまい、急落に慌てて売却する「狼狽売り」に走ることもある。そうすると、元本割れの大きな損失を出してしまうケースも考えられる。特に、新NISAを機に今年から資産運用を始めた投資ビギナーの中には、パニックに陥った人もいただろう。

「今回のようにこんなに早く復活するとは予想外でしたが、過去の事例を見てみると、暴落のショックを受けても、何年かけてでも株価は戻ってきているという印象があります。年単位のスパンで、長い目で考えたいですね。怖くてすぐに売ってしまったり、売ることも買うことも何もできなかったという初心者の方もいるかと思います。『歴史的下落』『過去何番目に低い』といったニュースが続くと恐怖心があおられ、集団心理によってさらに不安になってしまいがちです。でも、恐怖心のまま行動してしまうと、稼ぐことはできません」と語る。

 そのうえで、初心者に向けて、冷静に考えることのアドバイスを送る。

「まず、余剰資金の中から身の丈に合わせて楽しみながらやるということが、長く続けられるポイントだと思います。『自分は毎月1万円ずつを積み立てるんだ』と決めているのであれば、無理なく続けたいですね。全体的な暴落時に、保有する企業の個別株が下がった場合でも、業績が悪いという決算発表があったわけではないですよね。堅調な企業であれば、早期復活の可能性もあります。しっかりと見極めることも重要です」と説く。

投資は冷静さが大事「次にまたショックが来た時に、失敗を繰り返さないこと」

 そして、心の余裕だ。「今回のようなショックは何年かに1回は起きますし、1年間の中でも小さなショックは多少あるものです。最初からそう思って運用していれば、『はい来たな』と冷静に対応できます。投資運用はとにかく落ち着くことが大切で、空回りは禁物。下がっても上がっても、一喜一憂しないで、淡々と。これに尽きると思います」

 日常生活でも、仕事上でミスをした場合は、検証して次に反省を生かすことが大事だ。投資にも同じことが言えるといい、「お仕事でもそうですが、何か失敗しちゃった時は、ただへこむのではなく、『次はこうしよう』と改善させますよね。それが社会人としての成長につながっていきます。今回の暴落はある意味の勉強の機会になったと思います。次にまたショックが来た時に、失敗を繰り返さないこと、チャンスを逃がしてしまうことがないようにしたいですね」。有意義なメッセージだ。

 杉原は金融・投資に関する情報発信を続けており、このほど、著書『マンガでよくわかる資産運用1年生 億り人杉原杏璃と一緒に』(かんき出版)を上梓。実際に売買した企業の個別銘柄を紹介しており、もともと好きなサービスであったり、経済的な関心・期待感からの購入、株主優待目的など、購入の背景を明かしている。

 直近でも、パリ五輪を見据えて国内スポーツメーカーの株を購入しており、「はやりの食べ物が気になったらその企業の株式を買うこともあります。『身近で欲しいけど大人気で商品が買えなかったら、その企業の株を買えばいいじゃん』といった発想、グッと来ている企業の業績に乗っかっちゃおうという考え方です。その意味では皆さんにチャンスがあるのではないでしょうか。お買い物が好きな女性だったら商品のはやり廃りに詳しいと思いますし、車好きの男性だったら新車の納車待ちや中古車市場など業界の現状を把握していると思います。皆さんが張っているアンテナは異なっていて、その強みを生かせば、上がりやすい個別銘柄を探しやすいのかなと考えています。それに、投資信託にもヒントがあると思います。今、高配当利回り銘柄の投資信託が人気で、数多く出ています。投資信託商品の人気ランキングを見て、上位のファンドが投資している『組入銘柄』をチェックして、その銘柄を個別で買ってみるのも一手です」。実践的なアドバイスを教えれてくれた。

 一般の投資家は、自分の仕事を持ちながら、子育て・住宅購入などの費用や老後資金を確保するために、言わば“副業”で資産運用に取り組んでいる人が多いだろう。だからこそ、「本業のお仕事に支障をきたすようなことがあってはいけません。振り回されないことを覚えておいてください」。無理のない範囲で、長期の運用を意識することを呼びかけた。

□杉原杏璃(すぎはら・あんり)1982年、広島生まれ。42歳。グラビアタレントとして雑誌やバラエティー番組に数多く出演。2015年に補正下着のブランドを立ち上げ、大手通販チャンネルで大ヒット。投資家の顔も持ち、「株タレント」としても活動。投資本の執筆や投資セミナーの講師としても活躍の場を広げている。

次のページへ (2/2) 【写真】“遅咲きグラビアタレント”が投資大成功で“億り人”に激変…魅力炸裂のショット
1 2
あなたの“気になる”を教えてください