放送作家・倉本美津留氏が子ども向け「大喜利えほん」を描いたワケ「言葉に頼りすぎない笑いを」
放送作家の倉本美津留氏が子ども向けの「大喜利えほん」を出版する。お笑いのフィールドで活躍を続けた倉本氏がなぜ、子ども向けの絵本に挑戦することになったのだろうか。その真意を聞いた。
担当編集「第1弾が想像以上に評判が良かった」
放送作家の倉本美津留氏が子ども向けの「大喜利えほん」を出版する。お笑いのフィールドで活躍を続けた倉本氏がなぜ、子ども向けの絵本に挑戦することになったのだろうか。その真意を聞いた。
25歳人気女優のクルマ愛…免許はマニュアル取得、愛車はSUV(JAF Mate Onlineへ)
倉本氏といえば、『EXテレビ』『ダウンタウンDX』『ダウンタウンのごっつええ感じ』『M-1グランプリ』『平成日本のよふけ』など、お笑いがお茶の間を席巻する2000年代以降、笑いのクリエイティブの屋台骨を支えてきたと言っても過言ではない放送作家だ。
現在はお笑いだけにとどまらず、現代アートの世界や新たなる才能開発など多岐にわたって、そのスキルをさまざまな分野に転用し活動している。その倉本氏が、次に向き合っているのが「子どもたち」なのだ。
倉本氏がこだわるのは、言葉とその世界観。特に芸人が言葉だけでイメージを膨らませ笑いを取る「大喜利」に関しては、さまざまな形で番組企画に携わってきた。
この手法には、普遍的でスタンダードなフレームがある。倉本氏は大喜利という形式を使いながら、これまでさまざまなお笑い番組を立ち上げ、展開してきたのだ。そんな大喜利の世界を絵本に持ち込むと言う。
簡単に言うと、ページをめくるたびに、大喜利の「お題」とその「答え」があらわれるような構成になっていて、思わず子どもたちが笑ってしまう。絵本の世界観を感じながら、子どもたちはその言葉と絵に柔軟に反応する。親御さんや先生に絵本を読んでもらいながら、口元を緩めてケラケラ笑っていくのだ。
そもそも倉本氏は、なぜ子どもを笑わせたいと思ったのだろうか。
「日本のお笑いってどうしても言葉の純度が高くなり、たとえや比喩、知っている知識など、さまざまな形で立体的にやりとりすることで高度に発展してきた。だからこそ、日本のお笑いは世界に類を見ないクオリティーになっていると思いますが、一方で笑いのジャンルとしては、顔だけで笑いを取るノンバーバルのような形もあったりします。日本のテレビをはじめとするメディアで、言葉に頼りすぎない笑いは、それほどたくさんあるわけではなく、ずっとお笑い番組に携わってきた僕からすると、そんな笑いを絵本に持ち込んで、子どもたちを楽しくさせたいと思うようになったのです」
実際に読み聞かせも開催「言葉を感じるという様子でした」
確かに、今の日本のテレビなどを見ていても、トークなどのやりとりを中心とするものが多く、『有吉の壁』のようなスタイルの、子どもも楽しめる番組というものは少なくなってしまったようにも思える。そんな中、倉本氏が絵本の世界で大喜利を手がけるという意味は大きいのではないだろうか。
ポプラ社の編集担当・齋藤氏は「実際、倉本さんとお話をしていると、非常に簡潔な言葉で、直観的な笑いのアイデアが出てくる。小難しい理屈や説明では無く、子どもたちの気持ちをつかんで、自然と笑いが生まれる、そんな絵本が倉本さんとだったら作れるんじゃないかと思いました。第1弾『ぱんだ』を刊行したんですが、これが想像以上に評判が良く、だったら他の動物でもやってみよう、と言うことで、第2弾『うさぎ』ができたんです」。
実際、子どもたちを集めて、保育園で読み聞かせをやったこともあるという。倉本氏は「僕も実際どうなるか不安だったんですが、子どもたちに向けてページをめくりながら言葉を紡いでいくと、理解するというよりも、言葉を感じるという様子でした。何回も『また読んで、また読んで』と叫ぶ子どもたちを見て、親御さんもぜひこの本で、お子さんたちに向き合って、大喜利してもらいたいなぁと思いました。兄弟がいるお家だったら、お兄ちゃんやお姉ちゃんが、弟や妹さんに向かって笑かしてあげるっていうのもいいんじゃないかなあ」とうれしそうに語った。
ありそうでなかった、「大喜利えほん」。数多くのお笑い番組に携わり、笑いのすべてを知りつくしているからこそ、極めて簡潔でシンプルな言葉の中から、子どもたちの顔がついほころんでしまう、そんな笑いが生み出せたに違いない。