浅田美代子が明かす樹木希林さん、明石家さんまとの交流秘話「『カラクリTV』出演は6か月と思ってた」

オリジナルウェブ映画『ミライヘキミト。』(ウエダアツシ監督、無料配信中)に出演した俳優の浅田美代子。同映画は3世代家族で暮らす女性たちのターニングポイントを描く。浅田が、自身の転機になった出来事、樹木希林さんや明石家さんまとの交友を明かした。

浅田美代子がこれまでの人生のターニングポイントを語る【写真:冨田味我】
浅田美代子がこれまでの人生のターニングポイントを語る【写真:冨田味我】

オリジナルウェブ映画『ミライヘキミト。』に出演

 オリジナルウェブ映画『ミライヘキミト。』(ウエダアツシ監督、無料配信中)に出演した俳優の浅田美代子。同映画は3世代家族で暮らす女性たちのターニングポイントを描く。浅田が、自身の転機になった出来事、樹木希林さんや明石家さんまとの交友を明かした。(取材・文=平辻哲也)

 樹木さんとの出会いは、デビュー間もないTBSドラマ『時間ですよ』(1973年)にさかのぼる。銭湯「松の湯」を舞台にした森光子さん主演、久世光彦さん演出のホームドラマ。女湯のシーンでは、女性たちのセミヌードが人気という昭和らしいドラマだった。「悠木千帆」の芸名で活躍していた樹木さんは銭湯の従業員役、浅田は第3シリーズから従業員として加わった。

「希林さんからは、『セリフの言い方は気にしないでいいよ』とか、そういうことは教わったけど、『こうした方がいい』みたいなことを言う方ではなかったです。ただ、お風呂屋さんのドラマで、周りの人がみんな裸になるので、恥ずかしくて目をそらしていたら、『ミヨちゃん、従業員なんだから目をそらしちゃダメなんだよ』と言われました」

 続く『寺内貫太郎一家』(74年)は、東京・下町の谷中を舞台に、石材店の頑固親父・貫太郎(小林亜星)を中心に家族、近所のふれあいを描くホームドラマ。浅田は新潟から上京してきたお手伝いのミヨコ役で、樹木さんは貫太郎の実母70歳のきんを演じた。

「希林さんのことはドラマの間、ずっと『おばあちゃん』と呼んでいました。考えてみれば、当時31歳。若かったんですけど(笑)。その後、私が結婚していた間は、芸能界の風を吹かしちゃいけないと思っていたらしく、たまに電話をいただいていたくらいだったんですけど、離婚したら、『やっぱり、帰ってきたのね』みたいに言われました」

 浅田は、この2つのドラマに出演したことが俳優としての財産になっているという。

「思えば、ドラマが一番いい時代だったと思うんです。あの時代に希林さんと久世さんに出会ったことで今も仕事を続けられていると思っています。すごく丁寧に育ててくれました。今の時代だと、時間がないから、見た目だけをやることが多いと思うんです。悩んでいるシーンなら、ちょっと目線を下げる画を撮ってしまう。当時は、台本に『泣く』とト書きがあっても、『泣かなくていい。気持ちがあれば、通じるから』と演出してくれた。久世さんには大事なことを教わりました」

『さんまのからくりTV』出演は「チャレンジでした」と振り返る【写真:冨田味我】
『さんまのからくりTV』出演は「チャレンジでした」と振り返る【写真:冨田味我】

「今では考えられない」西田敏行&三國連太郎の芝居対決

 ウェブ映画『ミライヘキミト。』は海辺の小さな町を舞台に、3世代5人が暮らす家族の物語。大学進学を控える次女・由宇(川島鈴遥)、ひそかに会社を辞め、転職・結婚に悩む長女・咲季(平祐奈)、子育てが一段落し、自身のセカンドキャリアを考えるようになった母・羽菜(西田尚美)、そんな家族を見守る祖母・海(浅田)。それぞれの人生の転機が描かれるが、浅田の転機は何か。

「いっぱいあるんです。まず芸能界に入ったのが転機です。それから、結婚したのも転機、離婚したのもそうだし、芸能界に出戻ってきたのも、そう。私の人生って、いつも右か左かのどちらかを選ばないといけないという二択の連続でした。最近、年を取ってきたから、さっと決められないことも多いけど……」と笑う。

 結婚後は芸能界から遠ざかっていたが、83年から活動を再開し、84年の離婚成立後に俳優業を本格化させた。

「当時は、離婚が今のように普通でなかった時代だったので、世間からは『離婚してかわいそう』と思われていた。役的にも、かわいそうな人の役が多かったんです。それが、『からくりTV』で明るい感じが出せて、いろんな役がくるようになったんです」

『さんまのからくりTV』(92年)はさんまが司会するクイズ形式のバラエティー番組だ。

「これもチャレンジでしたね。さんまさんとはドラマでご一緒して、『変な奴がいる』と思ったみたい(笑)。クイズ番組なんて、できないと思ったんですけど、頭が良くなきゃ出られないものじゃなかったから、よかった。おしゃれして、友達の家に遊びに行くみたいな感覚でやっていたんです。だから、全然答えてない時もあれば、思いっきりツッコまれる時もあったりして……。最初は6か月くらいの出演と思っていたら、20年以上出ています」

 石田えりの後を継いだ映画『釣りバカ日誌』シリーズ(7~20/1994~2009年)のみち子役も当たり役の一つだろう。

「お話をいただいた時は、『私でいいのかな?』『大丈夫かな』と思っていたんです。ところが、漫画の原作者の方が『みち子さんの画のイメージは浅田美代子さんだったんです』と言ってくれたんです。それで、前作のことは気にしなくていいのかと思えました。だから、前のシリーズは見ていません。西田敏行さんと三國連太郎さんのお芝居の対決は毎回、見ていて、とても面白かった。台本のセリフを変えてくるので、その日のうちに撮れないということもありました。今では考えられないですよね」

 浅田は、実際の詐欺事件をモチーフにした映画『エリカ38』(19年)で映画初主演。38歳を自称する女詐欺師役だった。樹木さんが企画・出演したが、18年9月15日に亡くなり、これが遺作となる。

「せっかく希林さんが用意してくれたのに、この作品は、ちゃんとできなかったなという後悔があるんです。希林さんが亡くなって、(共演した)木内みどりさんも亡くなってしまいました。木内さんとも打ち解けてたので、『ご飯を食べたりしようね』と次の約束を言っていた矢先に(19年11月)旅先で突然亡くなって、本当にびっくりしてしまいました。木内さんは札束を見せるシーンの時に、『作ったお金では感じがでない』と銀行から下ろして、100万円くらい用意してきたんです。すごい方だなと思いました」。個性的な先輩俳優に囲まれ、愛され、今の浅田美代子がある。

□浅田美代子(あさだ・みよこ) 東京都出身。1973年にドラマ『時間ですよ』でデビュー。劇中で歌った『赤い風船』が第15回日本レコード大賞新人賞を受賞し、一躍人気アイドルに。その後『寺内貫太郎一家』シリーズなど数多くのドラマに出演。映画『釣りバカ日誌』シリーズ(1994~2009)では、主人公「ハマちゃん」の妻「みち子」役の2代目として参加。映画『朝が来る』(20)では日本批評家大賞助演女優賞を受賞。近年の主な映画作品に『あん』(15)、『エリカ38』(19)、『とべない風船』(23)、『キリエのうた』(23)など。2025年放送のNHK連続テレビ小説『あんぱん』にヒロインの祖母役として出演が決定している。

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