【電波生活】『脱力タイムズ』芸人に渡すのは衝撃の“ウソ台本”、製作総指揮が「天才です」と絶賛する有田哲平の力

初めて見た人からは「報道番組だと思ったら何かおかしいぞ。あれコント番組だ」という声が聞こえてきそうなフジテレビ系人気番組『全力!脱力タイムズ』(金曜午後11時)。有田哲平がキャスターを演じ、お笑いタレントや俳優をゲストコメンテーターとして招き、著名な学者陣も解説者として顔をそろえ報道番組ふうにコントを展開する。報道番組とコントを結び付けた画期的な番組。制作総指揮の名城ラリータ氏に番組の舞台裏を取材し有田の魅力や人気の秘密を探った。

有田哲平(左から2人目)ら『全力!脱力タイムズ』の出演者【写真:(C)フジテレビ】
有田哲平(左から2人目)ら『全力!脱力タイムズ』の出演者【写真:(C)フジテレビ】

制作総指揮・名城ラリータ氏が番組の舞台裏明かす

 初めて見た人からは「報道番組だと思ったら何かおかしいぞ。あれコント番組だ」という声が聞こえてきそうなフジテレビ系人気番組『全力!脱力タイムズ』(金曜午後11時)。有田哲平がキャスターを演じ、お笑いタレントや俳優をゲストコメンテーターとして招き、著名な学者陣も解説者として顔をそろえ報道番組ふうにコントを展開する。報道番組とコントを結び付けた画期的な番組。制作総指揮の名城ラリータ氏に番組の舞台裏を取材し有田の魅力や人気の秘密を探った。(取材・文=中野由喜)

 有田にMC(キャスター)を依頼した理由から尋ねた。

「有田さんが報道番組でMCをやっている姿はフェイクの感じに合いますし、もう一つの理由は、くりぃむしちゅーの上田晋也さんが他局でスポーツ番組をやっているので、そのアンチテーゼでお笑いの形でやるのも面白いと思って有田さんに相談に行きました」

 気になる台本はどう作られているのか。

「有田さんが座長、出演者が劇団員というイメージで番組を作っており、台本は基本的にまず僕らが種を作ります。お笑い芸人と俳優のゲストが決まったら、その人たちに合ったネタなど番組の軸になるものを考えます。それをもとに有田さんと話し合います。芸能生活の長い有田さんはゲストの魅力を肌感覚で分かっていることが多く、僕らの考えた企画をこのままいけるとか、つらいとか、各ゲストに合った台本を有田さんと一緒に作ります。でも何でもツッコむゲストの芸人さんをいかに自重させるかとか、ゲストの魅力を出しつつも画一化されていないジャンルを追求している感じです」

 ゲストのお笑い芸人は困惑した表情などドッキリを仕掛けられたような表情を見せることが多い。

「芸人さんの台本はあるんですけど、渡しているのはまるっきりウソの台本なんです。本物と同じページ数で必ず『こんばんわ。全力!脱力タイムズです』という言い回しから入りますが、その後の企画などすべて本当の台本とは違う内容です。そのニセ台本を渡し約15分芸人さんと打ち合わせしてから撮影に入ります」

 衝撃のニセ台本。ゲストにどう説明しているのか。

「芸人さんは台本も打ち合わせもウソだと気付いているんです。芸人さんから『ウソの打ち合わせだと分かっています。これ、やらなきゃいけないですか』と言われますから。でも僕らは『この通りやります。僕らは収録のやり方が下手なので途中で収録の内容が変わるかもしれませんが』と言ってとぼけています。だから本当の台本の内容を芸人さんは知りません」

 ニセ台本を渡されたお笑い芸人の出演後の反応はどうだろう。

「何度も出演している藤森慎吾さんは、どんな仕掛けで翻弄(ほんろう)させられるか楽しみにしているMタイプ。一方で、パンサー・尾形貴弘さんのように自分が仕掛けて笑いを取れている感じがしないと不安になるタイプがいます。陣内智則さん、藤森さん、河本準一さんはやりきった感じで終わり、尾形さんや津田篤宏さんは大丈夫だったかと気にしています。でも本物の台本を知らずにうまくできなかったことで逆に面白くなることが生まれるすき間ができるので、そこはこの番組の魅力の一つだと思います」

 経済学者の岸博幸氏、明大文学部教授の齋藤孝氏、侵入生物専門家の五箇公一氏ら本当の報道番組に出演する先生たちが解説委員として出演している。

「こんなことをしなくてもいい先生たちが出演してくれたのは僕らも七不思議の一つです(笑)。先生たちがいないと報道番組然というものが作れませんし、先生たちが思い切りふざけていることが、ある種、番組の色にもなっているので本当に感謝しています」

 先生たちの反応も気になる。

「最初は衝撃映像を見て脱線コメントをしていただく番組としてお願いしていましたが、だんだん内容がコントになっていき、犯罪心理学者の出口保行先生がブルゾンちえみの物まねをしたり、岸先生と齋藤先生が新しい学校のリーダーズのようなことをやったり、先生たちも、こんなはずじゃなかったと思っているかもしれません。でも先生方も学生から『脱力タイムズ』を見ましたと言ってもらえるとか、その分野の方々とつながるコミュニケーションツールになっているようです。皆さん楽しんでやってくださっているのは間違いないです」

 報道番組然とした形と雰囲気を醸し出すのは先生だけでなく有田の力も感じる。

「有田さんにも番組の構成や演出に携わってもらっていますが、アイデアが出るまであっという間なんです。企画を改良する時も瞬時にアイデアが出てきます。すごい才能を感じます。若手の芸人さんには熱心にアイデアを出してあげています」

『全力!脱力タイムズ』のタイトルロゴ【写真:(C)フジテレビ】
『全力!脱力タイムズ』のタイトルロゴ【写真:(C)フジテレビ】

有田の凄さとは?「有田で笑いをとっていないところがすごい」

 有田の凄さはまだある。

「有田さん自身は笑いを取っていません。あくまでも陰のプレーヤーとしてゲストや先生方が活躍できるように努めています。有田さんが有田で笑いをとっていないところがすごい。お笑い芸人がMCを務め、軸になって笑いを取る番組はよくあります。でも有田さんは極端に言うと、きっかけしかつくっていません。でも面白い。それは有田さんのエッセンスが番組に込められているから。MCが前に出なくても面白い異例の番組。ゲストの芸人が面白いと思って見ている人は大勢いると思いますが、編集していると我々は有田さんのアイデアが引き出した面白さだと分かります。有田さんは天才です」

 天才の原点はどこにあると感じるか。

「有田さんはすべてを知って上で撮影をしていながらもワクワクしたいんだと思います。自分がワクワクするためにいろんなことを考える。物事を楽しもうとすればするほど、それ自体が得意になっていくことの典型なのかなと思います」

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください