急増する“黒い吉野家” 「全体の9割が男性客」からの脱却と新たな戦略 シフトした背景とは

大手牛丼チェーン・吉野家が、従来のイメージを覆す黒を基調とした外観と、シックな内装が特徴的な「黒い吉野家」を続々と新規出店している。カフェのような雰囲気から、女性客や家族連れでも気軽に訪れることができる空間を提供。テレビ番組でも話題となった“黒吉野家”だが、通常の吉野家とは何が違うのか。長年築き上げてきたブランドイメージを刷新する経営戦略に迫った。

従来のイメージを覆す黒を基調とした外観【写真:ENCOUNT編集部】
従来のイメージを覆す黒を基調とした外観【写真:ENCOUNT編集部】

『上田と女が吠える夜』でも紹介

 大手牛丼チェーン・吉野家が、従来のイメージを覆す黒を基調とした外観と、シックな内装が特徴的な「黒い吉野家」を続々と新規出店している。カフェのような雰囲気から、女性客や家族連れでも気軽に訪れることができる空間を提供。テレビ番組でも話題となった“黒吉野家”だが、通常の吉野家とは何が違うのか。長年築き上げてきたブランドイメージを刷新する経営戦略に迫った。

 黒い吉野家は現在、全国に401店舗を展開。恵比寿駅から徒歩1分の場所にある「吉野家 恵比寿駅前店」が、2016年にリニューアルオープンした第1号店となる。24時間営業のクッキング&コンフォートスタイル(レジでの注文後に利用客自身が商品を受け取り席まで運ぶ提供方式。以下、C&C)の店内は通路が広く、カウンター席18席、テーブル席38席を備えている。利用者からは「店内は広く、清潔感がありました」「吉野家の店内とは思えない、オシャレなカフェのようでした」と好評を博している。今月18日放送の日本テレビ系『上田と女が吠える夜』でも恵比寿駅前店を紹介。カフェのようなおしゃれな店内に、出演者から驚きの声が上がっていた。

 新機軸1号店となる恵比寿駅前店の立地について、担当者は「もともと吉野家の店舗があった土地柄で、女性の利用客が多い傾向があったため、C&Cの第1号店としました」と説明する。

 メニューは看板商品の牛丼に加え、ドリンクバーや限定商品などが楽しめる。ホームページではC&C限定メニューとして、「牛丼ON野菜」「大判豚肩ロース焼き丼(旨ダレ生姜)」「バニラアイス」「チョコチップアイス」などが紹介されている。人気商品のトップは「牛丼」だが、他の吉野家の店舗形態と比べると「から揚げ」の売上割合が多いことを明かした。

 新しいスタイルに至った背景には、女性や若年層が来店するハードルが高かったことが関係しているという。「圧倒的に男性客の比率が高かった。10年代前半までは全体の9割を男性客が占めていました」と担当者。「女性や若年層でも店に入りやすい、入れば快適に過ごせる、C&C限定の健康的な食事や気軽なカフェメニューもあるといった点が支持されていると感じます。家族連れが多いこともC&Cの特徴です」と、より多様な客層にアプローチしていることを明かす。

 かつては「全体の9割が男性客」だったという吉野家だが、近年では女性客が増加。吉野家全体の飲食利用における男女比は「7:3」、テイクアウトでは「5:5」に変化しているという。「C&Cの店舗数や商品バラエティーの拡大により、女性や若年層が来店するハードルが下がったことや、コロナ禍を経てテイクアウト利用がお客様の生活に根付いたことが要因と考えています」と担当者。今後もさらなる集客の手立てを考えていくとしている。

次のページへ (2/2) 【写真】落ち着いた雰囲気の「吉野家 恵比寿駅前店」
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