歌手・AIが大切にする“子育て中心の音楽活動” 「ママ行っちゃダメ」作られたバリケードで気付いた仕事のやり方

来年デビュー25周年を迎える歌手のAIが10月13日、東京・立川ステージガーデンで開催される全国のママを応援する音楽フェス『ママホリ 2024』に出演する。オーガナイザーの中村あゆみを中心に毎年ママアーティストたちが一堂に集う同イベントは、今年で4回目。初参加となるAIも、9歳の長女と5歳の長男の子育てに奮闘中だ。今回はAI自身が母親としての思いや日常を語った。

2人の子どもたちとの日常を語ったAI
2人の子どもたちとの日常を語ったAI

ママアーティストが集う音楽フェス『ママホリ 2024』に出演

 来年デビュー25周年を迎える歌手のAIが10月13日、東京・立川ステージガーデンで開催される全国のママを応援する音楽フェス『ママホリ 2024』に出演する。オーガナイザーの中村あゆみを中心に毎年ママアーティストたちが一堂に集う同イベントは、今年で4回目。初参加となるAIも、9歳の長女と5歳の長男の子育てに奮闘中だ。今回はAI自身が母親としての思いや日常を語った。(取材・構成=福嶋剛)

 私の家は、小学3年の長女・平和(へいわ)と来年、小学1年になる長男・博愛(はくあ)、夫との4人家族です。8月28日は平和の9歳の誕生日だったので、みんなでお祝いしました。

 私はママ9年目を迎えましたが、家にいると振り返る暇もないくらい濃厚な毎日です。娘の誕生日を迎えて、「やっと9歳になったんだ」って。振り返るというより「まだまだ長いな」って、そんな風に思いました(笑)。

 長女は、早くもお姉さんになってきました。食器やおもちゃのお片付けなど、私が気付かないことをさり気なくやってくれるんです。いつも私をサポートしてくれる「片付けのプロ」ですね(笑)。さっきも「今日はママお仕事で忙しいから、猫ちゃんのエサあげておいたよ」って。『こんなに優しく成長してくれたんだ』と思うと、「ありがとう」と言って、つい涙が出てしまうんです。すると、「ママまた泣いてる~」って。私より大人です。

 お姉ちゃんらしい「上手さ」も出てきました。私は厳しいママなので、怒られそうになるとパパを見つけて「いいよ」って先に許してもらいます(笑)。

 長男は、活発で家でも手が掛かります。「ママ、ママ」って1日100回くらい呼ばれます。ちょっと一息入れようと思ってお茶を飲みながらスマホを見ていると、思い切り背中に乗っかってきて「何、やってるの」「遊ぼう」って(笑)。

 今(リモート取材の合間)は、お姉ちゃんと2人でご飯を食べてもらっているんですが、…口ゲンカが始まっちゃったみたい。ちょっと待っててもらっていいですか。(すぐに戻ってきて)アハハハ(笑)。いつもこんな感じなんです。

 2人で好きなアニメを見たり、息子は恐竜が好きでいつもお人形で遊んでいます。一緒に公園に行くと、子どもの頃の私みたいに泥んこになって遊んでいます。最近、2人が夢中になっているのはお絵描きです。お姉ちゃんは、描いた絵を段ボールに貼って、丸く切ってコレクションしています。私が教える前に自分で思いついたことをどんどんやっているので、私も「すごいね。こんなことができるんだ」と言ってハグしてあげます。

 私の母親は海外の人なのでいつも強めの英語で怒られて怖かったのですが、褒める時は思い切りハグをしてチューしてくれたり、愛情表現がハッキリしていました。私も母親になって、母親のクセがしみついていて、怒り方も愛情表現も自然と似てきました。怒る時はちゃんと怒って、褒める時はたくさん褒めてあげるようにしています。とにかく「大好きだよ」っていつも伝えて、ハートマークをたくさん送っています(笑)。

 夫も私と同じ職業なので、結婚したばかりの頃は、それぞれの活動をお互い自由にやっていました。私も夜遅くから朝までレコーディングする生活を送っていたので、遅寝遅起きが当たり前でした。

 長女が生まれた時、そんな2人の生活が一変しました。子どもが私たち2人を変えてくれたんだと思います。「この子を一生守っていこう」と2人で決めて、今までとは真逆の早寝早起きの生活に切り替えました。夫も本当に細かいところまで見てくれるし、いつも助けられています。

「公園で走り回ったり、泥んこ遊びも水遊びも何でも好き」【写真:インスタグラム(@officialai)より】
「公園で走り回ったり、泥んこ遊びも水遊びも何でも好き」【写真:インスタグラム(@officialai)より】

「恐ろしいくらい子どもってかわいい」

 振り返ると、デビュー前からずっと私のために動いてくれているスタッフや周りの人達のことを思うと、予定を断わることは1度もしたことがありませんでした。子どもが生まれても同じスタンスでやってきたんですが、ある日、子どもたちが玄関にバリケードを作って「行っちゃダメ」って。それが毎回続いて「そろそろ仕事のやり方も変えなくちゃいけない」と思うようになり、子どもの誕生日や行事など大切な日は、予定を入れないようなスタイルに変えました。スタッフもとても協力的で、それからは子育て中心の音楽活動に切り替えました。

 幼稚園では汗だくになって子どもたちとサッカーを楽しんだり、家族で運動会にも参加しました。パン食い競争で子どもたちがパンを食べ過ぎてお腹いっぱいになり、余ったお弁当をパパと分け合った思い出もありました。

 お弁当も毎朝1時間早く起きて、2人分を作っています。でも、娘の小学校が給食とお弁当を選択できて、最近、「給食にしたい」と言い始めました。息子も来年、小学校に上がるので、2人とも「給食がいい」と言ったら、お弁当を作らなくて済むんです。でも、それはそれで寂しいだろうなと思っています。

 そんな風に家事も育児も毎日大変ですが、それが私たちの心を安定させてくれていて、不思議といつも心地の良い疲れなんです。子どもを早く寝かしつけるために良い音楽を選んで聴いていると、自分にとっても癒しになります。お店に行く時間もないから、髪染めも上手くできるようになりました。人任せだったスケジュールも、夫婦が不在の時はどうするかって早めに相談したり、全てのことがプラスに働いています。1人だった時は、仕事のイライラを家に持ち込んでいたのに、これだけ子どもたちに鍛えてもらうと仕事のストレスなんてホント小さくて、コーヒー飲んだら一瞬でスッキリします。

 子育てを通して、子どもたちから学ぶこともたくさんあります。「今日は公園でどんなことをして遊ぼうか」と言って、横断歩道を渡ろうとしたら信号が赤に変わり「危ないよ」と言って、教えたことをちゃんと守って止まってくれる。そんな子を見ていると、「自分は普段、仕事でも何でも赤信号を無視して渡っていないだろうか」と振り返ることも多くなりました。子どもたちがご飯を残した時に「もったいないよ」と注意しておきながら、自分が料理する時に「食材を無駄に捨てていないだろうか」と思うこともあり、子どもが鏡になって自分が正されている感じがしています。

 私が書く歌詞も、今は子どもたちから学んだことがベースになっていて、子どもたちが私に大切な言葉を届けてくれているような気がします。昨年リリースしたアルバム『RESPECT ALL』の1曲目『リスペクト』は、私たちの普段の生活の中でもいじめや差別で人を傷つけてしまったり、傷ついてしまうことが後を絶たない。お互いにいろんな環境で育ち、さまざまな事情を抱えた者同士が、この社会で生きていくためには、リスペクト(尊敬)し合うことが大切。他人事と捉えないで『お互いをリスペクトし合うことで世の中少しは変わるんじゃないか』という普段の子どもたちとの生活からヒントを得た曲です。

 そして、この曲で初めて娘がコーラスで参加しました。朝、学校に行く前の寝起きの娘をつかまえて、何パターンかの「リスペクト♪」という声をスマホに録音したものをプロデューサーに送って作りました。一緒にできてうれしいです。子どものピュアな声が、より強いメッセージになったかなと思っています。

 10月13日。私は音楽フェス『ママホリ 2024』に出演させていただきます。ママアーティストたちのフェスってすごく珍しいですよね。本当にみなさんお母さんたちだから、絶対話が合うと思うし、初めましての方や先輩ママもいらっしゃるので、きっと楽屋でもステージでもママトークで盛り上がるんでしょうね。私もいろんな質問をしてみたいと思います。そして、ここで歌える幸せを噛みしめ、全てのママたちにリスペクトを込めて歌いたいと思います。

 子育てってやってみると大変なことばかりですが、やっぱり、恐ろしいくらい子どもってかわいいんです。この子たちに出会ったことで人生が大きく変わりましたし、これからどんどん成長していって、若い頃の私みたいにやんちゃになったとしても、それはそれで愛おしいんだろうなって思います。いつか「ハグをしたくない」と言い出したら、「何でよ!」って言いながら、ギューッとハグしてチューもすると思います。

□AI(アイ) 米国ロサンゼルス生まれ、鹿児島県育ち。中学卒業後、ロサンゼルスでダンスやゴスペルを学ぶ。2000年、ソロデビュー。05年、シングル『Story』をリリースし、NHK紅白歌合戦に出場。以降、『ハピネス』『アルデバラン』など多数の楽曲がヒット。14年に結婚。1男1女をもうける。

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