“米騒動”に新米値上げ 「ボリューム維持」は死守したいけど…大盛り弁当店が抱える苦悩

米の品薄が続き、買い占めが発生するなど“令和の米騒動”とも呼ばれる事態が、全国的に波紋を広げている。スーパーやディスカウントストアの店頭から米が消え、SNSでは「米買わせてくれ~」「本当に無いんですよ」と悲鳴が。9月に入って新米の入荷が少しずつ始まり、これから収穫の秋を本格的に迎えるが、新米の価格上昇も指摘されており、米不足解消への消費者の不安は拭えない。こうした混乱の中で、大盛り・大ボリュームのメニューを売りにした都内の弁当店は、ぎりぎりの調整を余儀なくされている。飲食業界では、もともとの原材料価格の高騰の影響もあり、値上げに踏み切るか耐えるかの葛藤が続いており、悩みは尽きない。

“令和の米騒動”はいつまで続くのか(写真はイメージ)【写真:写真AC】
“令和の米騒動”はいつまで続くのか(写真はイメージ)【写真:写真AC】

4店舗で「1日に使う米の量は200~250キロ」、300キロになる日も

 米の品薄が続き、買い占めが発生するなど“令和の米騒動”とも呼ばれる事態が、全国的に波紋を広げている。スーパーやディスカウントストアの店頭から米が消え、SNSでは「米買わせてくれ~」「本当に無いんですよ」と悲鳴が。9月に入って新米の入荷が少しずつ始まり、これから収穫の秋を本格的に迎えるが、新米の価格上昇も指摘されており、米不足解消への消費者の不安は拭えない。こうした混乱の中で、大盛り・大ボリュームのメニューを売りにした都内の弁当店は、ぎりぎりの調整を余儀なくされている。飲食業界では、もともとの原材料価格の高騰の影響もあり、値上げに踏み切るか耐えるかの葛藤が続いており、悩みは尽きない。

「1日に使う米の量は200~250キロ。300キロになる日もあります。正直、影響は出てきてしまっています」

 東京・江東区の弁当店「キッチンDIVE 亀戸店」の店主は、こう打ち明ける。亀戸のほかに、御徒町、水道橋、浅草の系列4店舗を抱えており、4店舗で扱う米の合計はかなりの量になる。総重量1キロのデカ盛りで知られる「1キロ弁当」や「1キロおにぎり」など米を押し出すメニューが看板商品だけに、米騒動の余波が直撃している。

 米の仲卸業者との交渉・調整により米の確保はできているが、仕入れ値の上昇が頭の痛い問題になっているという。取引をしている4~5社の業者すべてで2~3割の値上げ。業界内ではもともと春から米の値上げの可能性が取りざたされていたといい、「なんとかできないかと交渉を続けてきましたが、数社が脱落したという経緯もあります。それで今回、全部の社が値上げということになりました。そうなると、うちはもう(弁当商品の)値下げはできないな、という感触を持っています」と明かす。

 亀戸店では、今年7月に完全キャッシュレス決済を導入。弁当の最低価格を「500円」に設定する値段改定を行ったばかりだ。米騒動の前の段階から進めていた施策で、今回の仕入れ価格の値上がりに関係するものではないという。

弁当店・キッチンDIVEはおいしさとボリュームが売りだ【写真:キッチンDIVE クマ店長(@divemamuru)さん提供】
弁当店・キッチンDIVEはおいしさとボリュームが売りだ【写真:キッチンDIVE クマ店長(@divemamuru)さん提供】

 この夏に訪れた日本人の主食の緊急事態。新米の時期に入ったが、JAなどの集荷業者が、米の出荷の際に生産者側に仮渡金として支払う「概算金」が引き上げられるという報道が相次いでおり、新米の店頭価格に反映されるとの予測が出ている。

 日々業者から業界事情を聞いているという店主は「業者さんの話では、もともと新米の端境期は米が少ない、昨年が不作だった、自然災害による心理的不安から買いだめが起きたなどの事情は聞いています。米も野菜にも同じことが言えますが、米農家の生産ラインを考えてみると、農作物は急に増やせるわけでもなく、高齢化や人手不足の問題を抱えていると思います。インバウンド需要や円安による海外輸出がもっと出てくるかもしれません。米の需要や消費は増えているけど、作付面積は増やせない。そうすると、値上げは仕方ない、安くはならないよねという話になると思います」と話す。

 大盛りが代名詞で行列のできる同店にとって、「ボリューム維持」は死守したい大きなポイントだ。「お米はボリュームとグラム数を出せる食品です。原価率が一番低い米の値上げとなると大変になり、しんどくなっていきます。モヤシが値上がりするとスーパーが大変になることと一緒です。年内はこのままでいけると思いますが、その後は……。同業他社さんや仕入れ値の動向を見極めながらになるかと思います」と店主。値段を上げるケースを想定せざるを得ない瀬戸際でもある。消費者だけでなく、飲食業界にとっても、やきもきした状況が続きそうだ。

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