『スクール☆ウォーズ』から40年…ワル演じた60歳・松村雄基の今 「無理だろう」と感じたシャンソン歌手に挑戦した理由

近年、舞台を中心に活動する俳優の松村雄基(60)。1984年、TBS系連続ドラマ『スクール☆ウォーズ』での姿を思い出す人も多いかもしれないが、今はシャンソン歌手の一面も持っている。松村が感じるシャンソンの魅力、ステージに立ち続けるための秘訣を聞いた。

インタビューに応じた松村雄基【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた松村雄基【写真:ENCOUNT編集部】

松村雄基 “夜中起床”ラン8kmの日々「自分のために」

 近年、舞台を中心に活動する俳優の松村雄基(60)。1984年、TBS系連続ドラマ『スクール☆ウォーズ』での姿を思い出す人も多いかもしれないが、今はシャンソン歌手の一面も持っている。松村が感じるシャンソンの魅力、ステージに立ち続けるための秘訣を聞いた。(取材・文=ふくだりょうこ)

 松村の起床時刻は午前3時半。そして、4時半にはランニングに出かける。距離は7~8キロ。公園の外周をいつも走っている。

「3時半にもう勝手に体が起きるんですよね。雪の日と、どうしても疲れたという時は休みますけど、それ以外の日は走っています。走ることでリセットできますし、気候にもよりますけど、いろいろなものを取り入れられるんです。車も人も少ないですし、自分と見つめ合う時間を持てたりして。体力維持とともに精神衛生上にも良い気が勝手にしています」

 朝のランニング習慣は、約30年続いている。ちょうど、舞台の仕事を始めたころからだ。

「舞台の公演1時間前ぐらいには体幹トレーニングやストレッチ、自重トレーニングをしています。ジムは続かないので行きません。不器用なんですよね。不器用な人間は決めないと流されるんです。やることをある程度は自分で決めて、『自分のためになるぞ』と思ったものは愚直にやってみる。すぐに成果は出ませんが、健康に舞台に立ち続けられているので、『やっていて良かったな』と自分でも思えるんですよね」

 1993年、最初の舞台はミュージカルだった。近年は毎年4本前後の舞台に出演。稽古だけでも約1か月を費やす。昨年、出演した『ムーラン・ルージュ! ザ・ミュージカル』だと稽古は2か月半、公演期間も長く、約5か月はどっぷりと同作につかっていた。

「舞台はやっぱり魅力的ですね。お客さまの生の歓声や、ため息、拍手、面白くない時は冷たいオーラも感じます。それによって動かされる何かがあるんですよね。舞台って、エネルギーのキャッチボールだと思うんです。お客さまとのキャッチボールがうまくいっている時は、自分にない120%の力が出る時があります。本来は稽古で完成すべきなんでしょうけど、お芝居はお客さまが最後のパーツ。お客さまが入って完成します。そのエネルギーのキャッチボールに魅了されています」

 舞台は毎日のように同じセリフ、同じ演技を繰り返す。稽古した通り、上演時間も1分と違わない。しかし、それでも公演のたびに舞台は変化していく。松村にとっては、それらも「楽しさ」の要素だ。そして、近年、舞台と同じように松村が魅了されているのがシャンソン。共通するのは、客席から何かを受け取っていることだ。

「シャンソンを歌うと、その曲の情景が見えるんですよね。僕が魅了された理由の一つです。その情景を歌うことで、お客さまに渡す。渡すとまたお客さまから何かをもらうんです。このフィードバックがあるからこそ、感動があって、刺激を受けます。これが一方通行ならあまり成長はないかもしれないけれど、舞台と同じように毎回違いますから」

 松村がシャンソンを始めたきっかけは、7年前にシャンソン歌手・ソワレのライブを見たことだった。その際、ソワレに「シャンソンやってみたら」と勧められたという。

「シャンソンは敷居が高く、『無理だろう』と思いました。人生経験を積んだ大人のおしゃれな歌というイメージがあったからです。でも、ソワレさんが何曲かおすすめをピックアップしてくださり、その中の曲を聴いた時、映画のワンシーンのように歌詞の状況が目の前に広がったんです。その後、YouTubeで他の方が歌っている映像を見て、出会ったのが『サンフランシスコの6枚の枯葉』を歌うクミコさんでした。セリフを言うかのように歌っていらしたのが新鮮で、『こういう感じなら僕も歌えるかな』と思ったのがスタートです」

 1981年にレコードデビュー後、歌手活動は休止していたが、2006年から再開。14年には精力的にライブ活動も行った。その後、「シャンソンの自由度」が松村を突き動かした。

「一つの楽曲をいろいろな人が歌い、いろいろな歌い方をしています。『こんなに自由でいいんだ』と思いましたね。ソワレさんは『シャンソンというのはね、フランス語で「歌」という意味なんだよ。歌だったら何でもアリなんだよ』と。僕は『こうしなければならない』と自分を追い込んでしまうところがあるんですけど、シャンソンが『自由にやってごらんよ』と人生のヒントを与えてくれている気がします」

6月30日放送のBS朝日特番『ニッポン・シャンソン~越路吹雪・銀巴里...歌い継がれる愛の讃歌~』で歌う松村雄基
6月30日放送のBS朝日特番『ニッポン・シャンソン~越路吹雪・銀巴里…歌い継がれる愛の讃歌~』で歌う松村雄基

山下真司、宮田恭男さんら共演者と親交「戦友のよう」

 芝居に歌に生き生きと活動を続ける松村。そんな彼のベースにあるのは、やはり1984年に放送されたTBS系連続ドラマ『スクール☆ウォーズ』だ。京都市立伏見工業高ラグビー部と元日本代表フランカーの山口良治監督をモデルにしたノンフィクション『落ちこぼれ軍団の奇跡』を基に制作された。松村は「川浜一のワル」と恐れられる不良少年からラガーマンに成長する大木大助の役を演じ、大ブレイクした。

「ストーリー自体はフィクションの部分が多かったんですけど、実話の持つ力というものがあるんですかね。そのおかげで僕らも厳しい撮影を乗り越えられましたし、毎回、感動していました。思い出深いです」

 当時のキャストとは、今も連絡を取り合う仲だ。特に主演の山下真司からは、年に何回かは必ず電話がかかってくるという。

「『今、何やってんだ。飲みに来い』というのが多いですね。あとは旅番組やクイズ番組でもご一緒したりですね。山下さんは僕よりひと回り上なんですけど、変わり者なんですよ(笑)。振り返ると、先生と生徒の役でしたけど、戦友のようですね。それだけつらい撮影だったので、当時のことは体と心が鮮明に覚えています」

 チームメート役だった宮田恭男さんとも親交は続いている。宮田さんは94年に芸能界を引退。実家のすし店を継いだが、その店の看板は書をたしなむ松村が書いている。

「ずっと一緒にいたので、彼が『役者を辞めておすし屋さんを継ぐ』と言った時は自分の何かをなくしたような喪失感がありましたね。すごく悲しかったんですけど、彼は生き生きとやっています。時々、YouTubeの撮影でおすし屋さんにみんなで集まったりしています。あとは小沢仁志さんにもお会いしています。『スクール☆ウォーズ』では小沢さんは僕の上の代で直接的な関わりはなかったのですが、その後、ドラマの『乳姉妹』でご一緒していて、それからよくしてもらっています。会うたびに20歳ぐらいの時に戻って昔話をしています。やっぱり、あの頃の絆は深くて大きいですね」

 舞台出演も相次ぐ中、松村は10月23日、東京国際フォーラムホールCで開催の「ニッポン・シャンソン・フェスティバル2024」に出演する。シャンソン・イヤーを記念し、BS朝日で放送された特別番組『ニッポン・シャンソン』が、そのままコンサートになる。松村に影響を与えたクミコ、ソワレも出演予定だ。

「クミコさんとソワレさん以外の方は初共演で、まずは出演者の方々の生歌を聴けることが楽しみです。お客さまの反応あってこその歌ですから、自分にどんな化学反応があるのかも楽しみですし、舞台ならではの演出もあるんだとか。ぜひ、生の我々の姿をお客さまに楽しんでいただきたいなと思っていますし、僕自身も楽しみにしています」

 当日も松村は午前3時半に起床し、トレーニングをして“整った”状態でステージに立つことだろう。その健康な姿と歌声が、観客の希望につながることを松村は願っている。

□松村雄基(まつむら・ゆうき)1963年11月7日、東京・文京区生まれ。80年9月、テレビ朝日系連続ドラマ『生徒諸君!』でデビュー。84年、TBS系連続ドラマ『不良少女とよばれて』『スクール☆ウォーズ』などで人気を博した。93年から舞台出演を重ね、現在はシャンソン歌手としても活動。特技の書道では、95年に第17回東京書作展(東京新聞主催)で内閣総理大臣賞受賞。今年3月1日には、TBS系連続ドラマ『不適切にもほどがある!』第6話に本人役で出演した。178センチ、65キロ。

<公演情報>
「ニッポン・シャンソン・フェスティバル2024」
日時:10月23日(水) 午後5時開演
会場:東京国際フォーラム・ホールC
出演者:クミコ/松田美由紀/松村雄基/安蘭けい/日野真一郎(LE VELVETS)/ア・ラ・シャンソン[きゃんひとみ&メイリー・ムー(星屑スキャット)&ソワレ]/レジョン・ルイ

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