大好きな日本から「世界へ発信したい」 福岡を愛する28歳イタリア人社長が注ぐ、ゲーム開発への情熱
福岡県福岡市に住む28歳のイタリア人、ボ・ヴァルテルさんは、同市の起業サポート施設である「スタートアップカフェ」の支援を受けながら、2021年にゲーム開発を行う会社を起業した。子供の頃から日本のアニメなどに大きな影響を受けてきたヴァルテルさんが、来日してゲーム作りを始めた経緯と、そこにかける思いを聞いた。
「福岡在住イタリア人社長を直撃」第2回、学生時代から温めていた1つのアイデア
福岡県福岡市に住む28歳のイタリア人、ボ・ヴァルテルさんは、同市の起業サポート施設である「スタートアップカフェ」の支援を受けながら、2021年にゲーム開発を行う会社を起業した。子供の頃から日本のアニメなどに大きな影響を受けてきたヴァルテルさんが、来日してゲーム作りを始めた経緯と、そこにかける思いを聞いた。(取材・文=白石倖介)
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日本で起業し、WEBサイトの制作やPOSレジの開発を請け負っていたヴァルテルさんは、ある出会いをきっかけにゲーム開発を始めることになる。カギとなったのは彼が学生時代から温めていた、あるアイデアだった。
「僕には学生時代から考えていたゲームのアイデアがあって、それはみんなで3Dの世界で遊べる、みたいなアイデアだったのね。僕の学生時代はそういうゲームは全然なくて、技術的にも作ることが難しい、解決しなきゃいけないことがたくさんあってできなかったから、僕はそれをノートにまとめておいていたんよ。当時、ある会社のWEBサイトを制作していて、そこの役員の方によくしてもらっていたんだけど、ある時そのノートの話、ゲームのアイデアの話をその役員の方にしたら、すごく面白がってくれて。『人を集めてあげるから、ゲーム会社をやってみようよ』と言ってくれて、ゲームの開発が始まったんだ」
この時を契機として、株式会社Asobiholicが誕生。現在に至るまで、ゲーム開発を続けている。
開発を始めてから今年で4年。来年の春までに新作をリリースする予定だという。ゲーム開発はヴァルテルさんにとって、好きなものへの情熱が溢れてしまう作業のようだ。
「学生時代からMMO(Massively Multiplayer Online:大人数が同じサーバーにログインして、同じ空間を共有して遊ぶゲーム)の『Black Desert』や『Trove』などで遊んでいたからゲームは大好き。アイデアも温めていたぐらいだからね。だけど、それを自分が日本で作るようになるとは思っていなかった。時々イタリアの友達と連絡を取るんだけど、『僕は今、日本語を覚えて、日本でゲームを開発しているんだ』って言うとすごく驚かれるよ」
今のところは大好きな日本で“勝負”をするつもりだというヴァルテルさん。イタリアに帰ることも特に考えていないという。また、ゲームを日本で開発すること自体にもメリットがあるのだと話す。
「イタリアでは会社にまつわるあらゆる処理が、すごくスローなんよ。とにかく待たされるし、余計な費用もたくさんかかる。これは役所でも企業でも一緒。イタリアは長いし詰まるから、自分の国だけどそこは嫌いな部分かな(笑)。対して日本は、そういう処理がすごくスムース。今は日本から世界に自分のゲームを発信することがすごく楽しみ!」
イタリアの開発者とも連携、寝る間も惜しんで働く日々
開発においてはイタリアの人々とも連携しながら、日本で業務を進めているという。現在の1日のスケジュールについても聞いてみた。
「大体8時ぐらいに起きて、朝ご飯を食べながらまずアニメを見る(笑)。その後はイタリアと連絡を取ることが多いかな。時差があって向こうはもう夜中だけど、前の夜に送ったもののフィードバックがあったりするんよね。そうやって仕事を確認したり、ドキュメントを読んだり。その後は開発……デザインやテキストの確認、他の開発者の仕事の準備をしたり。昼には事務所で打ち合わせをしたり、夕方になると今度はイタリアがデイタイムになるから、あっちの開発者との打ち合わせをしたり。
毎日誰かと話しているんよ。計画を立てて、開発をして……合間に夜ご飯を食べたらまた打ち合わせをして。寝るのはだいたい2時か3時頃かな。昨日も夜中の2時ぐらいまでイタリアの人と打ち合わせだったから、ちょっと眠いんよね」
開発しているゲームには自分の好きなモノ・コトをたくさん入れ込みたいと楽しそうに語り、寝る間も惜しんで精力的に働くヴァルテルさん。大好きな日本で働けることが、大きなモチベーションになっている。
(第3回へ続く)