「弱音を吐かない彼女が泣いた」…松本人志裁判 告発女性の元同棲相手が文春側書面で悲痛な訴え

ダウンタウンの松本人志が自身の性行為強要疑惑を報じた週刊文春に名誉を毀損(きそん)されたとして、同誌発行元の文藝春秋社などに5億5000万円の損害賠償などを求めた訴訟は、今月7日、文藝春秋社側が初めて本格的に記事の根拠などを示す主張書面を提出した。同書面を東京地裁でいち早く閲覧した元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、そこに記された事件の波紋に注目した。

西脇亨輔弁護士
西脇亨輔弁護士

書面を閲覧した西脇亨輔弁護士が注目

 ダウンタウンの松本人志が自身の性行為強要疑惑を報じた週刊文春に名誉を毀損(きそん)されたとして、同誌発行元の文藝春秋社などに5億5000万円の損害賠償などを求めた訴訟は、今月7日、文藝春秋社側が初めて本格的に記事の根拠などを示す主張書面を提出した。同書面を東京地裁でいち早く閲覧した元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、そこに記された事件の波紋に注目した。

 性加害によって最も傷つけられるのは、直接の被害者だ。しかし、その影響は周囲にも及ぶ。特に被害者と交際する異性がいたとしたら、その痛みは計り知れない。

 今回、明らかになった文藝春秋社側の主張書面には、松本氏による性被害を訴えた2人の女性のうちの1人、B子さんと交際していた男性への取材結果が書かれている。その訴えは悲痛だった。

「当時僕たちは同棲していました。その日彼女は深夜1時頃にタクシーで帰宅しました。照明を落とした部屋で『何があったの』と聞いた記憶があります」

 B子さんはその日、言葉少なに松本氏との飲み会だったとだけ話し、性被害を訴え出ることはなかったという。これを聞いて、松本氏のファンだった男性は無邪気に反応した。

「えっ。まっちゃんと会ったの!」

 数日後、B子さんから男性に電話があり、被害を打ち明けられた。その時の様子を男性は週刊文春記者にこう証言したという。

「『私、なんでこんなことに巻き込まれているの。芸能界って、こんな世界だったの』って。彼女は電話口で泣いたことなんて一度もないんですよ」

 この時B子さんのもとには性被害の場に松本氏と一緒にいた男性放送作家から「松本さんがもう一度会いたいと言っている」と連絡があった。放送作家は、松本氏からの性被害の際に何とか最終的な行為は逃れたB子さんに対して、こうしたことを告げたとしている。

 今度は食事だけではなく、体の接待みたいなこともしないといけない。

 B子さんはこの連絡を受けたショックで、交際していた男性に電話をしたのだった。性被害にあった際もそんなつもりなどなかったと涙ながらに訴える電話を受けた時の気持ちを男性は、取材にこう答えたという。

「普段弱音を吐かない彼女が『えっ、泣いてるな。これはマズイやつだ』と思った記憶があります」「僕と彼女の交際期間は3年間。その間で唯一彼女が涙したのが、この事件でした」

議論が徐々に核心へ

 これが、文藝春秋社側の主張書面で明かされたB子さんの当時の交際相手への取材結果だった。

 また、この主張書面には、もう1人の告発者A子さんが週刊文春で明かしている問題の「飲み会」に行くことになった理由も書かれていた。それは「ある人物への信頼」だったという。

「もともと私はスピードワゴンの小沢一敬さんとは知り合い同士のコミュニティーが同じなので凄く信頼していました。頻繁に先輩の芸能人たちの飲み会にも呼んでくれました。でも、彼自身は本当に下心がない。私の周りはみんなそういう評価でした。テレビ関係者も『小沢さんはいい人』と話していました」

 その小沢氏の誘いで向かった先で、今回の性被害が起きたとされている。文春側が示したA子さんの証言には、長年の小沢氏への信頼が裏切られる様子が記されていた。

 性被害はさまざまなものを深く傷つける。それを文藝春秋社の最新の主張書面は訴えていた。しかし、主張はあくまで週刊文春記者の「取材メモ」に基づくもので、A子さんら当事者本人の陳述書はまだ提出されていない。そして、松本氏側は、まだ問題の夜に何があったのかの詳細を語っていないので、その内容が判明すれば、事件の見え方は大きく変わるかもしれない。被害を訴える女性、周囲の人たちの声に松本氏側はどう答えるのだろうか。

 複数の証言内容が明らかになって徐々に議論の輪郭が見えつつある一方で、次回の裁判期日が「未定」という異例の展開となっている。だが、この裁判の議論が徐々に核心に迫っていることだけは確かだと思う。

□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。今年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。

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