大原櫻子が明かす舞台を降りた“オフの時間” 「無理して笑ったりはしないんです」の真意とは

ソロデビュー10周年の大原櫻子が今月21日、『オールタイムシングルベスト 2014-2024「Anniversary」』をリリースした。デビューのきっかけとなった映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(2013年)の劇中歌『明日も』から、新曲『Anniversary』などを含むソロデビュー以降の全シングルで10年の記録が収められている。同作のリリースに伴い、ENCOUNTは俳優でもある大原に表現者として大切にしてきたこと、ステージ前のルーティン、ツアーを含めた今後のことなどを聞いた。

ソロデビュー10周年を振り返った大原櫻子【写真:冨田味我】
ソロデビュー10周年を振り返った大原櫻子【写真:冨田味我】

10周年記念でオールタイムシングルベストをリリース

 ソロデビュー10周年の大原櫻子が今月21日、『オールタイムシングルベスト 2014-2024「Anniversary」』をリリースした。デビューのきっかけとなった映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(2013年)の劇中歌『明日も』から、新曲『Anniversary』などを含むソロデビュー以降の全シングルで10年の記録が収められている。同作のリリースに伴い、ENCOUNTは俳優でもある大原に表現者として大切にしてきたこと、ステージ前のルーティン、ツアーを含めた今後のことなどを聞いた。(取材・文=福嶋剛)

――『オールタイムシングルベスト 2014-2024「Anniversary」』は、大原さんにとってどのような作品でしょうか。

「私の成長記録です。デビューシングルから新曲まで順番に収録したので、まさに1冊のアルバムを眺めているような感じがしました。内面的にも『どんどん大人になっているな』って感じました」

――今の大原さんから見た10年前の「大原櫻子」は。

「『一生懸命生きていたな』って思います。何にも知らなくて、とにかく周りの人たちの話をよく聞いて、毎日全力で走っていました。『カノ嘘』(映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』)でMUSH&Co.として歌った『明日も』や『ちっぽけな愛のうた』は、私なりにあの頃の最大の表現力で一生懸命歌ったつもりでした。でも、今になって聴くと『ちょっと棒読みだったかな』って(笑)。でも、あの頃しか出せないとっても真っすぐで雑念がない歌だと思いました。その瞬間しか出せない良さってあるんですよね」

――デビューからこれまでギターを弾きながら元気に歌うスタイルが印象的ですが、2019年にリリースした『Shine On Me』では、得意なダンスも披露しました。

「ダンスは小さい頃に『やりたい』って泣くほどせがんで習わせてもらったくらい、今でも大好きなんです。だから、『いつかダンスミュージックもやりたい』って思っていたんです」

――大原さんにとってのターニングポイントは。

「やっぱり、お芝居とか舞台の影響はすごく大きかったです。20歳の時、演劇ユニット地球ゴージャスさんの『The Love Bugs』に出演させていただき、そこで喉を痛めない発声方法とか歌唱方法を学び、歌手としての引き出しが1つえました。22歳の時に出演した劇団☆新感線さんの『メタルマクベス disc2』は、今までにないくらい感情の起伏が激しい役でした。舞台を下りてもしばらく役のままになってしまうくらい表現力にこだわっていたので、自分にはなかった表現力を身に付けられました。それは歌にもすごく良い影響を与えてくれて、曲の主人公を演じる上で大きなきっかけになりました」

――ここ数年は、『初恋』『寂しいの色』といった大人の女性を描いた曲も増えました。表現力や歌声にも包容力を感じます。

「最近、周りの人から『母性強いよね』ってたまに言われるんですよ。なぜなのか分からないんですけど(笑)。28歳でこれからの10年間って女性としても『いろいろな人生が待っているんだろうな』って思うんですけど、今は『同世代の女性に響くような歌を歌っていきたい』という思いが強いです」

――年齢とともに、歌手としても自然に成長していったということでしょうか。

「確かに意識して変化しようと思ったことはなく、年齢とともに自然に変わっていったと思います。あとは私の性格的な部分で、『嫌な過去を引きずらない』『ひと晩寝たら新しい1日が始まるから昨日より良い日にしよう』って思いながら生きています」

――新曲『Anniversary』は、デビュー曲を作った亀田誠治さんが、10年前と今をつなぐ曲を作ってくれたそうですね。

「亀田さんの歌詞はすごく分かりやすくて、10年前の自分からのメッセージでもあり、私からファンの皆さんへのメッセージでもある。いろんな解釈ができる歌詞で、デビュー当時を思い出して、ワクワクしながらレコーディングしました」

――この10年間のライブ活動についてお聞きします。

「ライブに関しては、デビューからずっと日常生活を忘れるくらい無心で全力で楽しむことを大切にしています。例え歌詞を間違えたり、失敗したとしても、『それも楽しんじゃおう』って」

――ライブ前、ルーティンはありますか。

「ライブに限らず、舞台の時も毎日1時間はストレッチ、筋トレをやっています。あとはその日の体調に合わせた発声練習をやっています。そして、本番を迎えて袖で『真心を込める』という意味で手のひらに『心』を3回書いて飲み込みます。その瞬間、私のスイッチがオンに切り替わって『はい! じゃあ、歌いましょう』ってステージに上がります」

――それまではオフ状態ですか。

「はい。このまんま(笑)。家にいる時と同じです」

――今度はオフに変わる瞬間は。

「1人の時間になった瞬間ですね。家に帰ったら完全にオフになります。ちなみに私ってめっちゃ撤収が速いんですよ(笑)。ステージを下りて楽屋に戻ったら、『超楽しい!』ってライブのテンションのまま帰り支度を始めるんですが、『一体、何の競争をしているの』っていうくらい『ハイ、ハイ、ハイ』ってめっちゃテキパキしていて、1人で勝手に盛り上がってるんです(笑)」

10周年ツアーは「日常を忘れるくらいハイテンションで楽しみたい」【写真:冨田味我】
10周年ツアーは「日常を忘れるくらいハイテンションで楽しみたい」【写真:冨田味我】

“推し”YouTuberのネガティブ発言に感じたこと

――ステージ上で見せる笑顔も印象的です。

「ありがとうございます。ステージはいつも楽しいので、お客さんを前にしたら自然に笑顔になってしまいますけど、普段は笑いたくない日もあって、そんな時は無理して笑ったりはしないんです。最近、推しの女性YouTuberさんがいて、普段はいっつもニコニコ笑ってポジティブに発信しているのに、この前は『昨日の自分を超えられない』みたいなネガティブなことをおっしゃっていたんです。『滞ってる感じがして、なりたい自分になれない』って。そんな正直に生きている姿を見た時に『人間臭くていいな』って余計に好きになっちゃいました。太陽と月じゃないですけど、『辛いことがあるから笑顔が輝く』と信じているので、辛さを乗り越えた先の笑顔ってホント素敵ですよね」

――今年は、ミュージカル『この世界の片隅に』で主人公の浦野すず役を演じました。

「今回は歌手としてやってきたことがお芝居に生かされた舞台でした。音楽担当をされたアンジェラ・アキさんから『ミュージカルだけど、今回はポップスの歌い方で歌ってみてね』とアドバイスをいただきました。なので、素の大原櫻子ではないんですけど、今の私の歌い方に近い感じで歌えたので、これまでとは違う雰囲気で楽しめました」

――アンジェラ・アキさんとは初対面だったそうですね。

「はい。初めてお会いした時は『めっちゃ、キレイな方だな』と思いました。そしたら、私と一緒でおしゃべりがとっても大好きな方だと分かったので、お会いするたびにずっとぶっちゃけトークをしていました。2人の会話スピードが半端なく速いので、誰も付いてこれないんですよ(笑)」

――ベスト盤を記念したリリースツアーが、9月7日にスタートします。

「今回は懐かしさに浸りながら、日常を忘れるくらいハイテンションになって楽しんでいきたいと思います。

――10年前の自分に戻るような。

「曲を聴くとあの頃に戻るんですが、歌うと、やっぱり『今の私だな』って思いますね」

――今後については。

「年齢を重ねるって、できることもできないことも増えていきますけど、私にとっては楽しみなことなんです。それこそ今回、新録したカバー『サヨナラの準備は、もうできていた』は、『カノ嘘』の10代の時には歌えなかった曲です。なので、年齢を重ねた今だからこそ歌える曲をこれからも歌っていきたいです」

□大原櫻子(おおはら・さくらこ) 1996年1月10日、東京都生まれ。日本大芸術学部映画学科卒。2013年、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の全国ヒロインオーディションで5000人から抜てきされ、スクリーン&CD同時デビュー。14年、俳優として日本映画批評家大賞新人賞、23年、第30回読売演劇大賞 杉村春子賞、歌手として日本レコード大賞新人賞を受賞。15年、全国高校サッカー選手権大会応援歌の『瞳』で、『NHK紅白歌合戦』に初出場。その後も歌手活動と並行して、数々のテレビ、ドラマ、舞台に出演。

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