酷暑で巨大地震、避難所生活はクーラーなし? 小中学校の体育館で空調設備設置が進まない切実事情
今月8日、宮崎県で最大震度6弱を観測した地震を受け、気象庁が初めて「南海トラフ地震臨時情報」を発表。南海トラフ地震の想定震源域では大規模地震が発生する可能性が普段と比べて高まっているとして、注意を呼び掛けている。実際に巨大地震が起こった際に懸念されるのが、危険な暑さの中での避難所生活。災害時に主な避難所となる公立学校体育館の空調設備について、文部科学省や地方自治体に現状を聞いた。
宮崎県で震度6弱を観測した地震を受け、気象庁が初めて「南海トラフ地震臨時情報」を発表
今月8日、宮崎県で最大震度6弱を観測した地震を受け、気象庁が初めて「南海トラフ地震臨時情報」を発表。南海トラフ地震の想定震源域では大規模地震が発生する可能性が普段と比べて高まっているとして、注意を呼び掛けている。実際に巨大地震が起こった際に懸念されるのが、危険な暑さの中での避難所生活。災害時に主な避難所となる公立学校体育館の空調設備について、文部科学省や地方自治体に現状を聞いた。
南海トラフ地震臨時情報は、調査状況に応じて「巨大地震警戒」「巨大地震注意」「調査終了」の3つのキーワードを設けており、現在発表されている巨大地震注意は、少なくとも1週間、日ごろの備えの再確認を求めている。最も危険度の高い巨大地震警戒の場合、津波からの避難が間に合わない地域での事前避難を求めており、調査終了後は地震の発生に注意しながらも通常生活を送ることになる。
お盆シーズン真っただ中の突然の発表に、帰省や旅先へのキャンセルが相次ぐなど列島は大きな混乱に包まれている。実際に今巨大地震が発生した際、最も懸念されるのが酷暑の中での避難所生活における熱中症のリスクだ。
文部科学省の報道発表によると、大規模災害の際に避難所となる全国の公立小中学校体育館の空調(冷房)設備設置率は2022年9月の調査で11.9%。災害などの緊急時に外部からの確保が可能な室数を含めても22%に留まっている。また、都道府県ごとに設置状況は大きく異なり、東京都が設置率82.1%と高い水準を維持する一方、2位は大阪府の27.4%。10%以上は7都道府県のみで、東北地方や北陸地方では軒並み1%台が並び、南海トラフ地震の被害が大きいと予測される想定震源域では、静岡県が1.9%、愛知県が7.8%、三重県が3.6%、和歌山県が9.2%などとなっている。
毎年のように熱中症リスクが叫ばれるなか、なぜ体育館への空調設備設置が進まないのか。文部科学省・防災部施設助成課の担当者は「全体の設置状況は把握しているものの、設置の判断はそれぞれの自治体ごとに異なるため、こちらからはお答えできない」と回答。総務省が南海トラフ地震での死者数を最大で約8.8万人と試算している静岡県教育委員会の担当者は、ENCOUNTの問い合わせに苦しい財政事情を明かす。
「最終的にはそれぞれの首長ごとの判断となるのでしょうが、まず一番に費用の問題があります。既存の体育館の多くは建物が断熱仕様となっておらず、老朽化も進んでいて、空調設備設置の前に建て替えや改修が必要です。静岡県ではようやく校舎改修の目途がついたところで、普通教室や特別教室と比べるとどうしても体育館は後回しにならざるを得ない。国からの補助制度もありますが、県内すべての小中学校となると相当な金額となり、当然持ち出しも発生する。防災に限らず、本来の熱中症対策という用途の面でも、今後体育館の空調設備設置の機運が高まっていけばいいのですが……」
場合によっては停電なども発生するなか、風の通りが悪く、避難民でごった返した体育館の“蒸し風呂地獄”は想像に難くない。巨大地震による直接死はもとより、熱中症による災害関連死を防ぐためにも、早急な対応が求められる。