猛暑のスーパー駐車場で車の中に赤ちゃん→通報 戻ってきた母親の「少しの間だから」の説明に苦悶

たまたま立ち寄ったスーパーの駐車場で、偶然に見かけた乗用車の“異変”。赤ちゃんが1人で乗ったままで、車のエンジンが切られている。母親はなかなか帰ってこない。とっさの判断で、警察に通報した。赤ちゃんの母親とも会話。心配でたまらなかったことも伝えた。それでも、「余計なことしたかなあ」。子どもの車内放置の不安がよぎり、赤ちゃんの命最優先で決断した行動だったが、事後に思い悩んだという。一部始終について発見・通報した当事者の女性に聞いた。

赤ちゃんの車内放置を巡って通報した報告が反響(写真はイメージ)【写真:写真AC】
赤ちゃんの車内放置を巡って通報した報告が反響(写真はイメージ)【写真:写真AC】

西日の当たる夕方の時間帯 母親は「『少しの間だから…』『着いた時は寝てたから…』と言っていました」

 たまたま立ち寄ったスーパーの駐車場で、偶然に見かけた乗用車の“異変”。赤ちゃんが1人で乗ったままで、車のエンジンが切られている。母親はなかなか帰ってこない。とっさの判断で、警察に通報した。赤ちゃんの母親とも会話。心配でたまらなかったことも伝えた。それでも、「余計なことしたかなあ」。子どもの車内放置の不安がよぎり、赤ちゃんの命最優先で決断した行動だったが、事後に思い悩んだという。一部始終について発見・通報した当事者の女性に聞いた。

「あぁもう今日はダメな日だ
車内放置の赤ちゃん見つけて通報した
戻ってきたママさんと話したけど『少しの間だから…』って
いやエンジン切った瞬間から暑いの分かるじゃん…
警察きて結構おおごと感出してくれたからもうしなくなるといいな…
でもこの件で隠す方に行ってしまったらどうしよう」

 車内放置を疑い、実際に通報した女性は、複雑な思いと共にXにこう報告した。絵本と木のおもちゃが大好きというワーママで、2児の子育てに奮闘している。「れい 4y1y積み木と絵本(@m00808rs)」のアカウント名でXで発信を行っている。

 7月下旬の午後5時頃、仕事帰りに寄ったスーパーの駐車場での出来事だ。晴れた日で、西日が当たって暑さの残る夕方の時間帯だ。しかも、その駐車場は、屋外の平地で日陰がない構造だった。

 駐車場に女性が停車中、2つ隣の駐車スペースに母親が運転する車が止まった。母親だけが車を降りていくのを見かけた。少し気になって、車の様子をうかがうと、赤ちゃんが乗っていることが分かった。「赤ちゃんが座っていた席、助手席の後ろなのですが、3センチほど開いていただけで、締め切ってありました。施錠もされていました。車が停車して、15分~20分ほどお母さんは帰ってきませんでした」。赤ちゃんを連れていかないことに驚きながらも、時間が経過するにつれ、どんどん不安になってきた。

 赤ちゃんは慣れているのか、時々グズるものの落ち着いてはいる。とはいえ、夏場の酷暑が続いている時期。何かあってからでは遅い。意を決して、警察に電話することにした。

 結果、赤ちゃんは無事だった。1歳児だったという。事なきを得て、安堵(あんど)した。「赤ちゃんは汗をかいている程度で、身体的にはそこまで心配する状態ではなかったようです。お母さんが来て抱っこされて安心した様子でした」。

 女性は現場で母親と少し話し、気になることを直接聞いてみた。「お母さんは『少しの間だから…』『着いた時は寝てたから…』と言っていました。私が見た時は赤ちゃんは寝ていなかったですけど……。あと車を降りる時も赤ちゃんの方を見ていなかったような気がします。私が『心配で』と伝えたら、『そうですか…』と、どこかひとごとのような感じでした」と振り返る。子育てに追われて日々大変な中で、判断が鈍ることがあるかもしれない。しかし、最も大事なのは命だ。今回は無事だったが、もどかしい思いは消えない。

「SOSを出せない子どもの命を守るために、周りの目も必要だと思います」

 子どもの車内放置は、社会問題化している。近年も幼稚園の送迎バスに置き去りにされた園児が命を落とす痛ましい事件が起きたことは記憶に新しい。社会的な取り組みを推し進め、悲惨な事案を防ぐことが求められている。

 子どもの被害を防ぐために必要なこと。女性は「現実的ではないと思いますが、チャイルドシートのベルトや、シートベルトが装着された状態でエンジンが切れないような仕組みを作るなど、何かしらの対策が必要だと思いますが……難しい問題ですね。親の意識を変える、周りが気を付けるくらいしかないのでしょうか……」と話す。ハード面での安全装置のさらなる強化は有意義な提案になるだろう。

 JAF(日本自動車連盟)は2012年8月に行ったテスト結果として、「エアコン停止からわずか15分で、熱中症指数が危険レベルに達した。乳幼児は体温調節機能が未発達で、高温下では短時間で体温が上昇し、死に至ることがある。寝ているからという理由で、車内に子どもを残すのは大変危険である」と報告。夏場はエンジンを停止すると車内温度が高温になって健康リスクが高まることについて、繰り返し注意を呼びかけている。

 今回の投稿は反響を呼んだ。「うわありえない」「車の中の熱さわかってないんですかね!」「そんなことする人まだいるんだ」など驚がくする反応に加えて、「余計なことでは決してなく、良いことされたと思います!」「すごい…拍手です!! 救世主とはこのこと…!」「勇気ある行動、絶対に間違ってないです!!!」と、女性の行動を評価する声が寄せられている。

 女性は改めて、車内放置の怖さを実感したといい、「少しの時間でも車内放置は危険です。子どもを残してエンジンを切るなんてとてもじゃないけど信じられません。1人でも苦しむ子どもが減ることを願います。もしかしたら不審者扱いされるかもしれないですが、私自身、普段から停車中の車のチャイルドシートに子どもが乗せられていないか、見るようにしています。SOSを出せない子どもの命を守るために、周りの目も必要だと思います。見つけたら迷わず通報してほしいと思います」と、切実な思いを訴えかけた。

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