倍賞千恵子「渥美さんと仕事ができたことは財産です」 BS特番でコロナ禍の柴又散歩

「人間はいろんな素敵なものを持っている生き物」

 柴又訪問は昨年11月のイベント「寅さんサミット」以来だそうで、「私の故郷、滝野川はすっかり様変わりしちゃって、面影がなくなってしまった。柴又は初めの頃は参道の道路は土で雨が降ると泥水が跳ね返ったり、犬が電柱におしっこを引っ掛けたりしていましたね(笑)。今は石畳で電柱もない。実は変わっているんだけども、変わらない印象があります。だから、柴又の方が、自分にとっての故郷になりつつあって、来る度にその思いが濃くなってきています」としみじみ。

 新型コロナウイルスの影響を実感しながら、商店街の人々の話に耳を傾けた倍賞。そんな中、「男はつらいよ」の良さを改めて感じたという。「寅さんはあちこち旅しながら、啖呵売(たんかばい)して、物を売っていく、人との接点がなければ生きていけない人。それができなくなっちゃったら、どうするんだろうと思うし、もし、ラブシーン、キスシーンがあったら、どうするのか。そういう画はできなくなっちゃうかな。もっと違った表現の仕方があるのか。50作目(の公開)は(コロナ禍で)尻切れで終わってしまった印象もあるので、もう1回劇場で封切って、観てほしいという思いがありますね。人間はいろんな素敵なものを持っている生き物かということを、寅さんを通じてわかっていただけたら。番組がそのきっかけになれば」とアピールした。

 さくら役については「渥美さんにとって、寅さんがそうであったように、私にとってのさくらは、役者人生の中で、二度とない役です。映画で使っていた前掛けを1つだけ取ってあって、時々かけて、いろんなことを思い出すんです。これからも役者として生きていく以上は、ちゃんと自分を認識しながら、さくらさんを土台にして生きていかないとと思いますし、さくらさんを通して本当にいろんなことを学んだと思っています。役者だけじゃなくて、人間として一番大事なこと、日本人の素敵なところ、人の優しさ、悲しさ、社会のことも学びました。ああいう映画に出られたっていうことはすごい誇り。渥美さんと仕事ができたことは財産です」と振り返っていた。

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