フワちゃん活動休止の発表文に「違和感」 復帰前提の内容に「今、書くことではない」の指摘

お笑いタレント・やす子に対して暴言投稿をしたフワちゃんが11日午前、Xで「しばらくの間」の活動休止を発表し、「反省して、精進します」とも宣言した。だが、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は「この発表文に違和感がある」とし、フワちゃんの今後に求められることを指摘した。

フワちゃん【写真:ENCOUNT編集部】
フワちゃん【写真:ENCOUNT編集部】

元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士

 お笑いタレント・やす子に対して暴言投稿をしたフワちゃんが11日午前、Xで「しばらくの間」の活動休止を発表し、「反省して、精進します」とも宣言した。だが、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は「この発表文に違和感がある」とし、フワちゃんの今後に求められることを指摘した。

「これでは台なしではないか」。活動休止を発表する文面を見て、私はそう思った。フワちゃんとしては、事態を鎮静化させるための「最後の切り札」だったはずだ。しかし、この表現ではさらなる炎上につながりかねない。

 私はかつてテレビ局の法務部で働いていたので、会社のコメントを書いたり、時には不祥事関係者の謝罪コメントに助言することがあった。その経験から言うと、この発表文は「なし」だ。

 指摘すると、まず書き出しから間違っている。タイトルは「いつも応援してくださっている皆様、お世話になっている関係者の皆様へ」。そして、冒頭で「まずはじめに、いつも応援してくださっている皆様、そしてお世話になっている関係者の皆様に大きなご迷惑とご心配をお掛けしていることをお詫びいたします」とお詫びをしている。

 宛先は、「いつも応援してくださっている」自分のファンと、「お世話になっている」仕事関係者だけ。暴言投稿を向けられたやす子氏についても、投稿を見て傷ついたり、不愉快に感じたであろう一般読者やいじめ被害者についても、一言も触れられていないのだ。

 もし、フワちゃんが「ひとつ前の謝罪文で謝ったんだから、それでやす子や一般読者への対応はおしまい」と考えているなら、大きな間違いだと思う。

 今回の炎上した根底には、人の命を軽視する発信は許されないという社会の「規範」を踏みにじったことへの、社会全体の怒りや拒否反応がある。そして、活動休止を社会全体に向けてXで発表する以上、書き出しは「今回の投稿で不快な思いをさせてしまった方々への改めてのお詫び」であるべきだった。

 自分の周りのファンや仕事関係者にだけ活動休止を伝えたいなら、個別に告知やメールをすればいい。しかし、そうはせずに敢えて広く発表するのなら、「内輪」だけでなく、全ての人へのメッセージがなくてはならなかった。

 さらに発表文には、活動休止は「一つの区切りとして、しばらくの間」と書かれ、最後には「精進します」とある。これは「活動再開を前提に、一時的に活動休止することで『区切り』、つまり『みそぎ』にします」と宣言しているように受け取られる。仮にそれがフワちゃんの「本心」だとしても、今、書くことではなかった。もし、私が助言を求められていたら、確実に「カットすべき」と伝えていた。

 発表文には「活動休止期間中は自分のことを見つめ直す時間にできればと思っております」とも書かれている。この文章は一見するともっともらしく思えるが、よく考えてみると、そこには「自分のこと」しか書かれていない。

 今回の事態を受けてフワちゃんのCMを止めたGoogleが「Googleは、他者を尊重しない行為に関しては厳格なポリシーを有しています」と述べ、フワちゃんの番組降板を決めたニッポン放送が「他者を尊重しない誹謗中傷する行為については決して認めることができないと考えております」とコメントしている通り、この問題の本質は「他者の尊重」を欠いた点にある。それなのに活動休止の発表に「自分のこと」しか書いていないのでは、「事の本質をまだ分かっていないのではないか」と読者に思わせてしまう。

 こうした活動休止発表文の表現の問題は「重箱のすみ」というより、フワちゃんが今回の件を真剣に受け止めているのかという「真ん中」の部分に疑念を抱かせるものではないだろうか。活動休止に伴って改めて投稿を謝罪し、「今回の問題と真摯に向き合い、SNSの発信などについて考え直す機会にしたい」と宣言して、その後の復帰については何も言わず、世間の受け入れに委ねる。それが素直な対応だと思うが、なぜそうならなかったのか。

迷走し続ける対応「助言できる“大人”がいないのか」

 振り返ると、フワちゃんの暴言騒動への対応は迷走し続けた。今月8日に発表した謝罪文では「問題の投稿は携帯電話の誤操作だ」という弁明をし、「言い訳に無理がある」と再炎上する騒ぎにもなっている。こうした一連の経緯を見ていると、フワちゃんの周りには問題の本質が何かを説明したり、世間へのメッセージの出し方や表現について助言できる「大人」がいないように見えてならない。

 しかし、今回の問題は「少し休んで自分探しをすればすべて解決する」ような軽いものではない。きちんとした助言を受けられる体制づくりも含め、問題と正面から向き合っていかないと「形だけの活動休止」になりかねない。真の再出発のための一歩はこれからだと思う。

□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。今年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。

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