話題作への出演続く17歳・早瀬憩、ホラーで際立つ透明感 “平凡”痛感も「俳優が何より楽しくてやりがい」
抜群の透明感で映画界に現れた俳優・早瀬憩(はやせ・いこい)。6月公開の『違国日記』で新垣結衣とのダブル主演に抜てきされ、公開中の学園ホラー『あのコはだぁれ?』では呪いに立ち向かう学生を演じている。瑞々しさを放ちながら、「私は平凡です」と話す17歳の素顔に迫った。
公開中『あのコはだぁれ?』で呪い関わる学生役
抜群の透明感で映画界に現れた俳優・早瀬憩(はやせ・いこい)。6月公開の『違国日記』で新垣結衣とのダブル主演に抜てきされ、公開中の学園ホラー『あのコはだぁれ?』では呪いに立ち向かう学生を演じている。瑞々しさを放ちながら、「私は平凡です」と話す17歳の素顔に迫った。(取材・文=大宮高史)
『あのコはだぁれ?』は夏休みの学校で、いないはずの謎の女子生徒が怪奇を巻き起こしていく学園ホラー。『呪怨』『牛首村』などを手がけたジャパニーズホラーの名手、清水崇監督による作品だ。昨年公開の清水監督作『ミンナのウタ』のDNAを引き継いでいる同作で、早瀬は学校のある“呪い”に関わっていく生徒の三浦瞳役に選ばれた。
「ホラーが苦手なので、完成した本編も私が出ているシーン以外は直視できませんでした。自分で演じたお芝居だから、瞳のことは頑張って見ていたのですが、他の場面ではいつ何が起こるか分からない怖さがたまらなかったです。『ミンナのウタ』も、ずっと目と耳を押さえながら見ていたので、ストーリーよりも怖かったことしか記憶に残っていません」
早瀬が扮(ふん)した瞳は、『ミンナのウタ』に登場する呪いのカギを握る少女・高谷さな(穂紫朋子)とたたずまいも似ていている。はかなげだが、ミステリアスな雰囲気も醸し出した。
「瞳は『未来に希望が持てないで、『面白いことなんて何もないと思いながら、毎日を生きている子だな』と感じ、ローテンションな少女として役を作っていきました。ただ、それだけでなく、内面では母との関係に複雑な気持ちを持っていて、呪いの正体に近づくにつれて気持ちを表に出していきます」
自身の性格は「初対面ではなかなか打ち解けられないんですが、仲良くなるとうるさいくらいにしゃべっています。『犬みたい』って言われます」と明かした。
「さな役の穂紫さんのことは『ともちゃん』と呼べるくらいの仲になりました。瞳がさなにひき込まれていく展開がありますが、そんな場面で『さなだったら、どう思う?』と聞ける仲になりました。それもあって、さなと瞳の間に流れている不思議な空気感を出せた気がします」
実は芸能に興味を持ったきっかけは芝居ではなく、ライブだった。
「小学生の時から、欅坂46(現・櫻坂46)さんに憧れていて今も推しています。ライブも見に行って、たくさん元気をもらっています。なので、私もそういう存在になりたいと思いました。原宿に行くと、よくスカウトさんの誘いにあっていました(笑)が、アイドルも好きだし、『モデルもやってみたいな』と思いつつ、まだ自分がやりたいことのイメージが湧かなかったんです。迷っているところに『まずはいろいろ経験してみて、自分の進む道を決めればいい』と今の事務所の方に勧めてもらって、芸能への決心がつきました」
12歳でデビューすると、CM出演を経験しつつ、ドラマにも出演。次第に役者への意欲が湧いてきた。時に「私ってつまらない人間」と思うこともあるというが、それも原動力になっている。
「この業界に飛び込んだら、私よりずっとかわいい子もいますし、演技が上手い子も何人も見てきました。料理が得意とか、ダンスが得意といったアピールできる特技すら私にはなくて、『平凡だな』と痛感しています。その分、物語の中の魅力的な人になりきって、生き方を体感できる俳優のお仕事が何より楽しくてやりがいです」
素朴なニューヒロイン「一番楽しいのはお芝居をしている瞬間」
今年は新垣とのダブル主演の映画『違国日記』で両親を亡くし、年の離れた叔母と同居し成長していく少女を好演した。『あのコはだぁれ?』では初めてのホラーでの大役と、話題作への出演が続いている。
「責任感が強くなりました。映画館にお金を払って見にきてくださる観客の皆さんを裏切らないようにと思うようになり、周りの方すべてがお手本です。主演の渋谷凪咲さんも、初めて主演されたのに演技への理解が速くて圧倒されました。なので、私も足を引っ張らないように、いい緊張感を持っていました」
役への責任感は、キャラクターの心情に思いをはせることで形にしてきた。
「『あのコはだぁれ?』では、瞳が抱えている感情をまるっと理解して演技にぶつけていきました。特に呪いと家族の過去を知って母に怒りや悲しみもぶつけていくところは、瞳の本音が露わになる場面だったので、母役の小原正子さんに全力で向かっていきました。フィクションの中の人の気持ちについては、『演じる私が一番の理解者になってあげよう』といつも思っています」
作品は日常に突然、恐怖体験が現れるジャパニーズホラー。だからこそ、早瀬の透明感が際立ってもいる。
「ホラーならではの動きや表情、撮影法も学びました。怖くて見られなかったジャンルでも、代えがたい財産になったと思います」
大きな経験をした早瀬は、次に挑みたいジャンルにコメディーと時代劇を挙げた。
「コメディー自体がまだ縁がなくて、私の新しい一面が見つかりそうな予感がします。時代劇は、演技だけでなく時代背景も学ぶことでもっと深みが出るかなと思っています。知らなかったジャンルに出会えることは、発見ばかりですから」
インタビューの終盤、早瀬は「一番楽しいのは、やっぱりお芝居をしている瞬間です」と言った。素朴なニューヒロインは、いくつもの可能性を秘めている。
□早瀬憩(はやせ・いこい) 2007年6月6日、千葉県生まれ。21年に日本テレビ系『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』でドラマ初出演。今年は4月期のTBS系『からかい上手の高木さん』、NHK連続テレビ小説『虎に翼』などに出演。6月公開の『違国日記』で映画初主演。160センチ。