地元で“とびっきりの美少女”と呼ばれ…結城モエが中・高で猛勉強した理由「努力の成果で評価されたい」

『乱歩の幻影』(今月26日公開、秋山純監督)で映画初主演の俳優・結城モエ(30)は、慶応大法学部卒で歴史と音楽に精通した読書家だ。幼い頃から芸能界入りのチャンスはあったが、勉学とピアノにまい進。上京、大学進学を経て、俳優を志すまでENCOUNTに語った。

『乱歩の幻影』に主演する結城モエ【写真:冨田味我】
『乱歩の幻影』に主演する結城モエ【写真:冨田味我】

『乱歩の幻影』で映画初主演の結城モエ

『乱歩の幻影』(今月26日公開、秋山純監督)で映画初主演の俳優・結城モエ(30)は、慶応大法学部卒で歴史と音楽に精通した読書家だ。幼い頃から芸能界入りのチャンスはあったが、勉学とピアノにまい進。上京、大学進学を経て、俳優を志すまでENCOUNTに語った。(取材・文=大宮高史)

『乱歩の幻影』の主人公、弓子は江戸川乱歩の小説の熱烈な愛読者。秋山監督はこの役を演じられる俳優を「2年間、探し求めていた」が、結城を見て“即決”していた。結城は監督と初めて会った日をこう振り返る。

「弓子役を探していた監督と初めてお会いした時は『私なんかでいいのかな』と現実感も薄く、ネイビーのTシャツを着てカジュアルな格好で行きました。でも、すぐに文学の話題で意気投合して、(監督は)すごくうれしそうでした」

 秋山監督は結城の存在感を「ドアを開けて入ってきた瞬間、春の風が吹き、ミステリアスな香りが漂う錯覚を覚えました。読書を通じて同じ景色を見ることができる」と絶賛。原作は島田荘司氏の同名の小説で、脚本も同氏が執筆した。江戸川乱歩にまつわるあるうわさを聞いた弓子が、乱歩の作品世界にのめり込んでいき、過去と現在、空想と現実がごちゃ混ぜになっていく。

「衣装合わせが始まって、いろんな服を合わせていったら『弓子と私には白が一番似合う』となりまして、弓子の服は白系で統一しました。監督はデニムなどラフな服装も思い描いていたそうですが、純粋さを視覚的に象徴できて、着ている私も弓子のヒロイン力に近づいていけたと思います」

 幼い頃から文学好きで、特に歴史ものを読みふけってきた。

「一番始めに好きだったのは、子ども向けの怪談話でした。それから歴史小説も読むようになって、史実とフィクションをミックスした壮大な展開の本が好きになりました。すると、歴史に名を遺した人たちの思想も知りたくなって、孟子やソクラテスのような古典や、文豪の大作も読んでいきました」

 一方で、地元の福岡では「とびっきりの美少女」として覚えられていた。

「生まれた時は、『お目目がまん丸。すごくかわいい赤ちゃんが生まれました』と新聞の新生児紹介コーナーで書いていただきました。 母が私をベビーカーに乗せて買い物に行くだけでスーパーやコンビニの方が、『今日もかわいいね』と声をかけてくださったり、動物園に行ったら、子役のスカウトを受けたりでした」

 繁華街でもスカウトが相次ぎ、自宅には芸能事務所の名刺が山積みに。本人は「気づいたら 事務所の社名を覚えていました」と振り返るが、当時は読書と勉学、2歳から始めたピアノに打ち込んでいた。

「ピアノはただ楽譜に従って弾くのではなく、曲が作られた時代にも思いをはせて弾くことで、パフォーマンスが完成するんだと思っています。戦乱の時代に生まれた音楽なら、死と隣り合わせの恐怖感が聴き手に訴えかけてくるように思えます。ほんの数十年時代をさかのぼれば、社会が音楽に見出す価値が変わってくることも歴史を学んで知りました。過去を想像するのも楽しくて、勉強というよりも好奇心が満たされる感覚でいました」

相次ぐスカウトを断って学業、ピアノにまい進

 中学、高校と進学しても、学業とピアノの課外活動にまい進。そのストイックさは、「ルックスありき」の視線への反発でもあった。

「容姿を褒められたり、芸能のお仕事に誘われることは素直にうれしかったです。でも、外見だけを評価されることへの抵抗もありました。『何も努力してないくせに』と学校で嫉妬もされましたし、自分の努力で勝ち取った成果で評価されたいという思いがあり、勉強と音楽に必死になれました。母や祖母も『娘はピアノを頑張っているので、気持ちは向いていません』とスカウトを断って協力してくれました」

 そして、慶大法学部に 合格。懸命な努力が報われた瞬間だった。

「東京の大学にずっと興味があったのですが、『あなたが行きたいというだけでは学費は出せない』ときっぱり親から言われて。『お金を出してもらうにふさわしい大学でなければ』と目標にして合格できました」

 大学生活を送る中、結城はあらためて自分の進路を考えた。そして、フィクションの中の人物になり切れる俳優の道が具体化してきたという。

「高校までは、テストが終わればコンクールに向けての練習でした。いつもタスクに追われていましたね。逆に大学では時間に余裕ができ、ボランティアやミスコンも経験しましたが、人生を懸けてやりたいこともじっくり考えるようになりました。時間に余裕ができ、自分自身としっかり向き合えたからこそ、自分がやりたいことに気づくことができました。そして、芸能界に行くことを選びました 」

 だが、芸能界は評価され続ける業界。結城は「打たれ弱いし、感情移入しやすいんです」と繊細な面ものぞかせた。

「身近な人の反応を気にしてしまったり、姉には『素直すぎる』と言われます。その分、人間のダメなところにも共感できます。『人間の不完全な脆さ』をいかに描くかもフィクションの見どころですから、弱さを抱えた人間も魅力的に見せられる俳優を目指したいですね」

 豊富な読書歴と音楽の経験。努力で内面も磨いてきた。志してきた“演技派俳優”への道はまだ始まったばかりだ。

□結城モエ(ゆうき・もえ)1994年5月18日、福岡県生まれ。慶応大法学部に在学中、「ミス慶応2014」ファイナリストに。卒業後の2017年に日本テレビ系連続ドラマ『脳にスマホが埋められた!』で俳優デビュー。その後もドラマに多数出演し、21年のテレビ朝日系『ドクターX~外科医・大門未知子~ 第7シリーズ』、今年の日本テレビ系『新空港占拠』などに出演。趣味はワイン、ピアノ、戦争や音楽の歴史の勉強。165センチ。

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