『虎に翼』日本初の女性弁護士を演じた小林涼子、子役→モデル→俳優で「逃げる道すらなかった」

俳優・小林涼子(34)はNHK連続テレビ小説『虎に翼』(月~土曜午前8時)で、日本初の女性弁護士・久保田聡子を演じている。主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)が通った大学の先輩でもあり、可憐(かれん)な見た目と凛々(りり)しい口調で話題になった。そんな小林は、4歳で子役を始め、モデル、俳優として活動。久保田の役はオーディションで選ばれた。2回渡ってお届けする小林へのインタビュー企画。「前編」では、『虎に翼』の視聴者が気なる小林の歩み、小林が抱く同作への思いを紹介する。

朝ドラ『虎に翼』で久保田聡子を演じた小林涼子【写真:舛元清香】
朝ドラ『虎に翼』で久保田聡子を演じた小林涼子【写真:舛元清香】

インタビュー「前編」久保田聡子の役で気付いたこと

 俳優・小林涼子(34)はNHK連続テレビ小説『虎に翼』(月~土曜午前8時)で、日本初の女性弁護士・久保田聡子を演じている。主人公の猪爪寅子(伊藤沙莉)が通った大学の先輩でもあり、可憐(かれん)な見た目と凛々(りり)しい口調で話題になった。そんな小林は、4歳で子役を始め、モデル、俳優として活動。久保田の役はオーディションで選ばれた。2回渡ってお届けする小林へのインタビュー企画。「前編」では、『虎に翼』の視聴者が気なる小林の歩み、小林が抱く同作への思いを紹介する。(取材・文=よもつ)

 女性の法曹界進出を描く『虎に翼』。寅子が通う明律大女子部で1学年上の久保田聡子は、常に毅然とし、誰に対しても凛々しい口調で接する役柄だ。

「オーディションで(演じたの)のは久保田とは全く違う役だったので、台本を見た時は『この役?』『私ってこういうイメージ?』と思いました(笑)。なので、最初はどう演じればいいのかが分からなかったんです」

 だからこそ、しっかりと準備をし、役作りにこだわった。

「限りある出演シーンの中で、彼女らしさを出せるように、内面はもちろん見た目にもこだわりました。特に髪型はあの時代を象徴する『モガ(モダンガール)』のスタイルになるようにカットしました。内面部分では、(寅子のモデル・三淵嘉子が通った)明治大学に寅ちゃん(伊藤沙莉)たちと一緒に行き、数日ほど法学を学びました。法を学ぶ姿勢を(昨年の)9月頃から時間をかけて準備してきたことが、作品にも生きていると感じます」

 久保田は女子部のリーダー的存在。だが、演じる中でその内面の変化を感じたという。

「久保田先輩は、皆といる時に一歩引いている存在です。悲しい時はもちろん彼女も悲しいけど、それだけで終わらない。廊下を歩くシーンも印象的で、前にいる人のことも感じながら、自分の後ろについてくる皆のことも感じ、真っすぐ前を向いて歩く。演じる中で、『これは自分だ』と思う瞬間もいっぱいあり、彼女と一緒に闘ってきた気もします。最初は強い言葉遣いが印象的だけど、次第に笑顔を見せ優しく接するようになっていく。だからこそ、皆を守りたいとさらに強くなっていった部分もあると思います。どんどん彼女を好きになりました」

 結婚、出産に伴い、弁護士を続けることを諦めた久保田。その悔しさを吐露するシーンは、「仕事と家庭の両立」という現代にも通じる女性の問題を示した。

「久保田先輩は、寅ちゃんよりも前を歩いていた人物。周りの受け入れ体制がない状態の中に切り込んでいった人なので、風当たりは強かったと思います。だけど、それを後ろにいる人に言ったら、目指す人がいなくなってしまう。『自分だけでせき止めなくては』という気持ちもあり、それで必死で前を向き続けていた。だから、最後にポキッと折れてしまう。完璧なんて絶対ないのに、女性として家を守り、母として子を守り、さらに社会的に活躍して、それでも周りから『もっと、もっと』と言われ続けてしまう。本当に苦しかったと思います。この世の全ての女性が抱える悩みを代弁していると感じました」

これまでの芸能人生を「逃げる道すらなかった感じ」とも話す【写真:舛元清香】
これまでの芸能人生を「逃げる道すらなかった感じ」とも話す【写真:舛元清香】

オーディションに受かったり、落ちたりの繰り返し

 小林自身の経歴は4歳で子役デビュー。中学時代は雑誌モデルだった。2004年には日本テレビ系連続ドラマ『一番大切な人は誰ですか』に出演し、脚光を浴びた。

「子役は幼なじみの子がやっていて、家族にも勧められたので始めました。その後は1度辞めましたが、中学生の時に声をかけてもらって、モデル事務所に入りました。ただ、私は身長が伸びなかったんです。そんな中で当時のマネジャーさんが『お芝居はどう?』と提案してくれて、オーディションに参加しました。そこから、オーディションに受かったり、落ちたりを繰り返して今につながっているという感じです」

 俳優として数多くの作品に出演。順調にステップアップしてきた印象だが、小林自身の体感は異なっていた。

「(タレントが多く通う)堀越高等学校に通っていたこともあり、(芸能以外の)選択肢が自分の中でなかったので、この道に進んだ部分もあります。仕事で疲れたり、思うようにいかないこともありましたが、逃げる道すらなかったという感じでした」

 それでも、小林は「縁と運と人に支えられてここまで来ました」と言った。芸能活動を続ける中、20代で農業に出会った。2021年には、農業と福祉の連携を目指す株式会社AGRIKOを設立。インタビュー「後編」では、小林にとっての農業、俳優業との両立や農業を通じて目指す未来を紹介する。

□小林涼子(こばやし・りょうこ)1989年11月8日、東京都生まれ。4歳で子役デビュー。2003年から雑誌『二コラ』で専属モデルとして活動。04年の日本テレビ系連連続ドラマ『一番大切な人は誰ですか?』で脚光を浴び、数々のドラマ、映画、舞台、CMに出演。俳優業の傍ら農業に携わり、株式会社AGRIKOを設立。農林水産省から農福連携技術支援者に認定。160センチ。

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