タワマン部屋を賃貸→住民「家賃を下げろ」 専門家が忠告する「サブリース契約」の落とし穴
物価上昇ばかりが嘆かれる昨今。そうした価格上昇の動きは家賃においても起きているが、その動きはまだまだ鈍く、「物価が上がっているのだから」と住居費を下げるよう要求されることも少なくないようだ。
借主からの値下げ請求にどこまで応じるべき?
物価上昇ばかりが嘆かれる昨今。そうした価格上昇の動きは家賃においても起きているが、その動きはまだまだ鈍く、「物価が上がっているのだから」と住居費を下げるよう要求されることも少なくないようだ。
今回、悩みを打ち明けてくれたのは神奈川県在住の穐間康介さん(仮名・40歳)。独身時代に県内某所のタワーマンションの一室を購入。結婚してから賃貸に出し、今は家族とともに戸建て暮らしを満喫しているという。
「コロナ禍に入ってから顕著になったように思うのですが、ここ立て続けに入居者から家賃の減額を求められているんです。連絡が来るたびに断っていて、住人も2度変わっているのですが、不動産屋を介して度々『このままじゃ住み続けることができないので、5000円でいいから下げてほしい』というような要望が届き、それでも値段を下げない自分がまるで“人でなし”のような、後ろめたい気分になってしまうんですよね」
家賃については入居前に提示されるものなので、住める金額じゃなければ入居を見合わせればいいだけのこと。入居してから「家賃を下げろ」と言ってくる行為に、穐間さんは辟易しているという。
「なぜ、住んでから言うのか……。その気持ちが理解できなくて。そもそも貸し出している部屋は立地もよく、約40平米と単身向けにしては広さがあります。ただ、タワマンという性質上、最寄りのアパートより家賃が高くなることは仕方の無いことだと思うんですよね。ローンを返しながら利益を出すことを考えたら、今の金額を下げることは絶対にできません。それでも毎回同じように言われるということは、設定が高いのでしょうか。それとも、家賃を値切ることが主流になりつつあるのでしょうか。不動産屋から電話が来るたびに、ストレスを感じてしまっています」
それ、もしかしたらサブリース契約かも?
20年以上不動産業界に籍を置き、賃貸契約にも詳しい中目黒コレカライフ不動産の姉帯裕樹さんに話を聞いた。
「住む前に家賃が下がらないか聞くことはあっても、住んだ後で家賃を値切るという話はあまり多くありません。よほどセコイ客に当たったか、コロナ禍の不況で本当にお金が無かったのか……。値下げ要求に関しては、無理なら無理で応じる必要はありません。その金額で契約を結んでいるので、しつこいようであれば宅建業法の規定に基づき、住人に退去してもらうことも可能です」
だが、話を聞いた上で「1点、気になることがある」と姉帯さんは語る。
「もしかして、なのですが、間に入っている不動産業者やどこかの不動産業者と『サブリース契約』を結んでいるということはありませんか。不動産会社に物件を委託する方法として、『管理委託契約』と『サブリース契約』の2種類があります。
管理委託契約の場合は不動産会社はあくまでも仲介のみで、貸主はオーナーである穐間さんになります。サブリースの場合は不動産業者が穐間さんから物件を借り、それを住人に『転貸』する感じになります。
管理委託契約では、借り手がいない場合に損をするのは穐間さん自身になりますが、サブリースの場合は借り手がいない間も穐間さんに対する賃料が発生するため、業者はできるだけ間を空けずに誰かに貸し続ける必要があります。しかし、経年劣化により物件が古くなれば、借り手が減るのは必然のこと。業者側はあの手この手で入居者を確保する必要が出てくるんです。
つまり何が言いたいかというと、不動産業者が住人からの意見を装って『価格を下げろ』と言ってきている可能性もなくはない、ということ。もしもサブリース契約であるようなら、借り上げ賃料を下げにくる可能性もあるので、今後の心の安定のためにも契約解除を考えることも選択肢に入れましょう。
また、こうしたやりとりが面倒なのであれば、物件を手放すのも1つの策。今後の資産運用について、不動産について詳しい人などに聞いて、見直してみることもおすすめします」
□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。