タワマン住民に顕著な変化? “成功者の証”は過去の話…専門家が今後の動向を分析

若いうちは虚栄心を満足させてくれるタワーマンションに住み、子どもが生まれたら広く快適な注文住宅や、安全面に配慮された低層マンションへ――。こうした流れから比較的若手の富裕層から人気を集めてきたタワマンに、今、異変が起きている。

タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】
タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】

シニア層急増…「今後も増えていく」

 若いうちは虚栄心を満足させてくれるタワーマンションに住み、子どもが生まれたら広く快適な注文住宅や、安全面に配慮された低層マンションへ――。こうした流れから比較的若手の富裕層から人気を集めてきたタワマンに、今、異変が起きている。

「つい最近、都内某所のタワマンに引っ越したんですが、シニア層が多くて驚きました」

 そう話を切り出したのは、外資系コンサル企業に勤める赤城拓真さん(仮名・39歳)だ。コロナ禍の最中に、遠距離で2年間付き合った20代女性と結婚。その妻の強い要望でタワマンを購入し、昨年、海の見える部屋に引っ越すこととなった。

「幼い頃から田舎暮らしだった妻は、都心のタワマン暮らしに憧れを抱いていたようで、海が見えるタワマンを理想としていました。まぁ、まだまだ駆け出しのコンサルである僕の稼ぎで買えたのは、中古の部屋なんですけど。全面リフォームしたので快適ですし、子どもが生まれても大丈夫なように3LDKの部屋を購入したので、終の棲家とまではいかないにしても、長くここに住むことになるだろうと思っていました」

 そんな目論見が外れたのは、タワマン住人の年齢にあったという。

「入居してから知ったんですが、ウチのタワマン、高齢の住人が多いんですよ。僕はクライアントの関係で早朝から仕事に行くことが多いのですが、エレベーターで出会う人に高齢者が多いことを『シニアの方は朝が早いんだな』くらいに思っていました」

 引越してから半年くらいたった頃、帰宅した赤城さんを待っていたのは、妻からの苦情だったという。「思っていた暮らしと違う!」。そう言われたとき、脳内にクエスチョンマークがたっぷり浮かんだと、赤城さんはその時のことを振り返る。

「もっと同世代の若い人が多く、ラウンジでパーティーしたり、スポーツジムで楽しんだり、そういう華やかな暮らしが待っていると思っていたのに、ラウンジはシニアのたまり場と化しカラオケ喫茶状態。スポーツジムも高齢者だらけで、行くたびにマシンの使い方をいちいち聞かれ、自分が鍛えるどころじゃなくなるとのこと。妻いわく、『老人ホームで暮らしているみたいで、なんか思ってたのと違う!』と……」

 自分が言いたいことばかり言って、こちらの話をまったく聞いてくれない。何度も何度も同じ話を繰り返す。こちらが話を聞かないと「礼儀がなっていない」と文句を付けられる……。赤城さんの妻は、そうした“高齢者あるある”な状況にもストレスを抱えているようで、「タワマンじゃなくていいから、引っ越したい!」と苦情を訴え続けているのだとか。

「どうやら、私たち夫婦にまだ子どもがいないことについても、あれこれ詮索されるようです。やめてほしいと訴えても『私たちは親切で言っているのよ!』と、聞く耳を持ってくれないのがつらいと妻は訴えています。プライベートに関して口を出すのはおかしいと管理組合に苦情を呈したのですが、組合そのものが高齢者で成り立っているからか、被害妄想では? と一蹴されてしまいました。タワマンって……いつから、シニアの巣窟になったんでしょう」

子育てが終わった世代がタワマンに集う、そんな時代が到来

「終の棲家として、手間がかかる戸建てより管理が行き届いたマンションを選択するシニアが増えています」そう語るのは、中目黒コレカライフ不動産の姉帯裕樹さん。ここ最近のシニアの動向を教えていただいた。

「昭和~平成にかけては、戸建てに住むことが“人生の成功”の証になっていました。狭い社宅で暮らし、お金を貯めて戸建てを購入するのが“当たり前”だったんです。しかし、子育てが終わり、子どもが巣立ち、広い家が必要なくなると、もてあます結果になります。

 そこで、住んでいた家を売ってマンションに引っ越すシニアが増加しているんです。家を売ることである程度まとまったお金が入り気が大きくなるからか、死ぬ前にやりたかったことをしておきたいという気持ちからか、タワマンをチョイスするシニアも増えているので、赤城さんが住むタワマンのような状況は今はまだ特殊だとしても、今後増えていくと思われます」

 シニアのタワマンへの流入を拒む術はなく、受け入れる以外に方法はないのでは? と姉帯さんは続ける。

「内閣府の発表によれば、日本の総人口における高齢化率(65歳以上の人口の割合)は、2019年時点で28.4%。約30年後の2065年には、2.6人に1人が65歳以上になるといわれています。たとえタワマンであっても例外なくシニア層は増え続けるので、タワマンだけがイケイケな若者でいっぱいの状態を保つことは考えられません。

 いずれシニアだらけになるであろう社会を見越して、今のうちにシニアの扱いに慣れておくのもアリだと思いますが、あまりにウザイようであれば逃げるが勝ちかもしれません」

□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください