不動産業者は「ただ物件を売りたいだけ」 “詐欺まがい”の甘い誘惑にだまされない術とは?
世の中には「建前」と「本音」が存在する。それは不動産売買の現場でも同様で、甘い言葉をバラまいて欠陥住宅を買わせたり、相場より高い住宅を購入させたりする悪質な業者は後を絶たない。今回は、不動産業者のシミュレーションを鵜呑みにしてタワーマンションを購入してしまった結果、思ってもみない状況に追い込まれたという男性の例を紹介する。
不動産購入の落とし穴はシミュレーション?
世の中には「建前」と「本音」が存在する。それは不動産売買の現場でも同様で、甘い言葉をバラまいて欠陥住宅を買わせたり、相場より高い住宅を購入させたりする悪質な業者は後を絶たない。今回は、不動産業者のシミュレーションを鵜呑みにしてタワーマンションを購入してしまった結果、思ってもみない状況に追い込まれたという男性の例を紹介する。
コロナ禍の中、東京の湾岸エリアの新築タワーマンションを購入した金澤一哉さん(仮名・38歳)は、怒りのあまり眠れぬ夜を過ごしているという。その原因となっているのは、金澤さんが今まさに住んでいる部屋だという。
「それまでは、恵比寿のマンションに住んでいました。2LDKで家賃は20万円ほどでしたが、駅にほど近く、僕自身、収入がある程度あったので問題なく住むことができていました」
そんな金澤さんがタワマンを購入するきっかけとなったのは、大学時代の先輩の言葉だった。
「大手不動産会社に勤める先輩から、『家賃を20万円も払っているのはもったいない、20万円あれば8000万円程度の新築のタワマンが買える、一度、シミュレーションしてみたほうがいい』。そう言われたんです。
後日、先輩の職場に誘われたので興味本位でシミュレーションしてみると、経費を含めても月々の支払は家賃より少ない18万円程度とのこと。だから絶対に買ったほうが得だと、先輩とその上司らしき人から数時間かけて熱く説得されました。最初は躊躇していたんですが、信頼している先輩からの話だからうそはないだろうし、上司らしき人から『投資にもなる』と言われ、今より経費が安くなる上に、資産が増えるなら……と思い、購入することにしたんです」
そのシミュレーションに大きな落とし穴があることに気付いたのは、契約を終えて引越し、暮らしが落ち着いてきた頃のこと。
「まぁ……あるあるだと思うんですが、住んでしばらくした後に、固定資産税の通知がきたんですよ。それがまぁ、驚くような金額で……。間接照明が多いからか電気代もバカにならず、駐輪場も有料に(以前のマンションは無料でした)。管理費や修繕積立金も高く、マンションのイベントに寄付しろと言われるなど、思わぬ費用がバンバンかかるようになってしまったんです」
不動産取得税や固定資産税、管理費などがかかることは知っていたが、まさか、そうした必要経費すらシミュレーションに含まれていないとは思いもしなかったという金澤さん。
「自分がバカだったことは承知しています。でも、あのシミュレーションはひどい。先輩にそう苦情を伝えたら、以後、LINEをブロックされちゃいました。一体全体、俺はどうすればよかったんでしょうか?」
シミュレーションはあくまでも、不動産屋が考える「理想」の数字
購入した後を見据えて数字を出すのがシミュレーションでは? そう思うのが一般的だが、なぜ金澤さんは残念な結果に陥ってしまったのか。不動産業界に精通する中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんに不動産業界の闇についてお聞きした。
「残念ながら、こうした詐欺まがいのことを行う業者は後を絶ちません。彼らはただただ、物件を売りたいんです。1件売れたら数百万円の仲介手数料がもらえるんですから。真っ正直に『固定資産税も管理費も高いですよ』なんて言ったら、購入意欲を失くしてしまう方も多いので、メリットだけを訴えるようになるんですね。
ただ、だまされた方も反省していただきたいです。高い買い物ですから、失敗したくないというのであれば、シミュレーションの表面の数字だけを見て『トクするかも!』と思い込むのではなく、必要経費についてしっかり聞き取りを行わなければなりません。ずばり、『広告を見るときは、下の方に書かれている小さい注意書きまでよく読め』ってやつです!
シミュレーションはあくまでもシミュレーション。目安にする程度ならいいですが、信用するのはやめたほうがいいでしょう」
□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。