「一部の高齢住人が猛反対」 タワマン資産価値が落ちる原因は? 管理組合が頭を抱えるワケ
原油高やコロナ禍、円安などさまざまな要因により、日本の物価は急加速中だ。至るところで「値上げ」というワードを聞くことが増えてきた。そんな中で、マンションの「修繕積立金」においては、組合員(住人)からの反対にあって値上げできず、大規模修繕を先送りする物件が増えているという。この状況は驚くべきことに、裕福層の象徴とされるタワーマンションですらも起こっているという。
タワマンシニアの「プライドが邪魔する」?
原油高やコロナ禍、円安などさまざまな要因により、日本の物価は急加速中だ。至るところで「値上げ」というワードを聞くことが増えてきた。そんな中で、マンションの「修繕積立金」においては、組合員(住人)からの反対にあって値上げできず、大規模修繕を先送りする物件が増えているという。この状況は驚くべきことに、裕福層の象徴とされるタワーマンションですらも起こっているという。
都内某所、タワマンが林立するエリアに住む加藤圭さん(仮名・53歳)は、昨年、管理組合の理事になった。解決しなければならない課題は山盛りにある。中でもここ数年、検討課題の筆頭に上がっているのが「修繕積立金の値上げ」についてだ。
「かれこれ3年ほど、毎年必ず総会の議題にあがっているのですが、議決総数に足りず、いつも否決となっています。現状の金額では絶対に足りないこと、5000円でいいから値上げをしなければ厳しいことなどをデータを集めて説明しているのですが、一部の高齢住人の猛反対にあっているんです」
反対理由の多くは「年金暮らしで、金銭面に余裕がない」というもの。発売当時から億を超える超高級マンションに住んでいる富裕層なのに、たった5000円の値上げすらできないのか……と頭を抱えているといいます。
「歯に衣着せぬ言い方になりますが、経済的に厳しいようであれば、部屋を売るのも1つの手では? とおすすめしたこともありますが、『余計なお世話だ』と激怒される結果に終わってしまい、ヘタを打ったなぁ……と反省中です。でも、傍から見ている限りで言えば、5000円の値上げでどうこうなるような暮らしぶりでもないんですよ。お孫さんであろう小さなお子さんと、近所のステーキハウスで食事している姿もよく見かけるので。お金が無いなら無いなりに暮らせばいいだけ。プライドが邪魔するんでしょうけど、他の住人の迷惑になるような行為は止めていただきたいものです」
古いマンションに、救いの道はナシ?
一般的には12年ごとを目安に行われる大規模修繕だが、資金不足を理由に、15~20年周期への見直しを行うマンションが増えているという。しかし、修繕をしないまま放っておくことで水漏れなどさまざまな不具合をもたらすことがあり、管理組合と住人との間にいらぬいさかいを呼ぶこともあるという。
20年以上のキャリアを持ち、不動産業界に精通する中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんに、解決策について尋ねてみた。
「大規模修繕は必ずしなければならないというものではありませんが、メンテナンス面を考えたらできるだけマメに行いたいもの。それができないとなるとマンションの価値そのものが下がる原因になりかねません。管理費や修繕積立金を担保に銀行からお金を借りることができます。こうした借金自体がマンションの売買評価を下げることはありませんので、多少の借金をしてでも、修繕を行ったほうがいいと思います」
姉帯さんによれば、今、多くのマンションで起きている“難問”とのこと。
「残念ながら、裕福なまま暮らせるシニアは減ってきています。そうした住人の反対を回避するためにも、いきなり金額を5000円上げるのではなく、1000円ずつ上げるなど、段階を踏んでじわじわ値上げする以外に方法は無いように思います。ただし、ここ近年は物価上昇率が高すぎるため、安心できるほどの金額が貯められているマンションは少ないようです。
厳しい言い方になりますが、不動産物件は古くなればなるほどお金がかかるようになります。便利で快適とされるタワマン暮らしですが、その未来には大きなデメリットが隠れているということも、ぜひ、覚えておいてください」
□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。