72歳・水谷豊が渾身の「バカ殿」披露 時代劇の“相棒”たちも爆笑「歴代最高です」

俳優・水谷豊が主演する人気シリーズのBS朝日時代劇スペシャル『無用庵隠居修行8』が今年も放送されることが24日、分かった。直木賞受賞作家・海老沢泰久氏原作の短編時代小説『無用庵隠居修行』を時代劇『だましゑ歌麿』シリーズの水谷×吉川一義監督コンビで2017年に初めてドラマ化。好評で毎年続いてきた作品の第8弾は9月23日(午後7時~8時54分)に放送予定。今回も水谷演じる『隠居殿・半兵衛』と岸部一徳演じる『お節介用人・勝谷』の名コンビに、檀れい演じる『半兵衛の妻・奈津』を加えた3人のコミカルなやりとりがありつつ、武家社会に潜む人間模様が描かれる。

9月23日に『無用庵隠居修行8』が放送されることが決まった
9月23日に『無用庵隠居修行8』が放送されることが決まった

BS朝日時代劇スペシャル『無用庵隠居修行8』 9月23日放送

 俳優・水谷豊が主演する人気シリーズのBS朝日時代劇スペシャル『無用庵隠居修行8』が今年も放送されることが24日、分かった。直木賞受賞作家・海老沢泰久氏原作の短編時代小説『無用庵隠居修行』を時代劇『だましゑ歌麿』シリーズの水谷×吉川一義監督コンビで2017年に初めてドラマ化。好評で毎年続いてきた作品の第8弾は9月23日(午後7時~8時54分)に放送予定。今回も水谷演じる『隠居殿・半兵衛』と岸部一徳演じる『お節介用人・勝谷』の名コンビに、檀れい演じる『半兵衛の妻・奈津』を加えた3人のコミカルなやりとりがありつつ、武家社会に潜む人間模様が描かれる。(取材・文=大島一郎)

 痛快エンタメ時代劇『無用庵』が今年も放送される。今作では、江戸で詐欺や強盗がはびこり、勝谷の将棋仲間の娘が吉原に売り飛ばされたりと、半兵衛の周囲で庶民を苦しめる事件が多発。それぞれの事件は裏でつながり、半兵衛らは黒幕を暴くべく立ち向かう。感動する場面もある中、半兵衛役の水谷が“バカ殿”に扮(ふん)する場面が見どころの1つになっている。

 前作の第7弾で老人に扮した水谷は「毎回、何をやらされるんだろう」と“定番化”をぼやきつつ、バカ殿姿を「面白いと思います」と自画自賛。記者を前に手をたたいて“思い出し笑い”をし、「何をやったかっていうのは言えないですけど、なんなんでしょうね、あの楽しさ」と言うと、檀に「どうでしたか、れいさん。バカ殿の横にいらっしゃって」と自ら質問した。

 檀は笑みを浮かべながら、水谷をめぐる恒例行事を説明した。

「いつも早い段階で撮影が終わったら扮装テストをするんですよ。『こういう感じでバカ殿やりますよ』とか、去年は『老人やりますよ』とか。『水谷豊さん、きょう扮装チェックあります』って言ったら、私は必ず見に行くんですね。『どんな扮装を半兵衛さんはされるんだ』と。じゃないと本番で吹き出してしまいますし」

 本番では笑ってはいけないゆえの“対策”だが、檀は「『どこまでいくんだろうか』っていう楽しいバカ殿でした。お芝居すると、よりバカ殿に磨きがかかってて。楽しかったです」と実感を込めた。

 妻からの“高評価”を受け、水谷は「カツラ、化粧、衣装。本当にいい世界を提供してくれるんですね。やらなきゃつまんないし、やりすぎるとまた良くないっていう、ものすごくいい世界を創ってくださるので楽しかったですね」とノリノリになる心境を解説。檀は「スタッフの遊び心も大きいです」と言い、岸部も「見事なバカ殿でした」と絶賛した。

「あまりのバカ殿ぶりに、もうぴったり面白かったですね」

 水谷が「歴代、いろいろなバカ殿があったと思いますね」と言うと、岸部は「歴代最高です」と即答。すると、水谷は「『歴代最高のバカ殿』って。どこが基準だか分かりせんけどね」と言いながら爆笑した。

 早くも次回の“扮装”への期待が高まるが、水谷は「何が似合うんでしょうね。大体、何でも似合うと思ってるんですけどね」と対応力をアピールすると、檀は、半兵衛と勝谷の“ツーショット扮装”とともに「外国人の方。カタコトの日本語で」とリクエスト。2人は嫌がることなく、水谷が岸部に「2人でカゴ担ぎます? (身長差で)高さ合わないか」と案を練ると、岸部は「それ面白いですね」と乗り気になった。

 芝居から離れても息の合った2人には「(劇中で)コントは?」の案が出ると、岸部は「なかなか僕はやる機会がないですから」と前向き発言。水谷は「コントはいいかもしれないですね」と同調後、「でもね。必ず何かまた意表を突かれると思いますよ。まさか僕がバカ殿を生涯やると思ってなかったですからね。そんな日が来たんですから。まあ、変装しないってことはないと思いますね。やらないと、視聴者からクレーム来ますよ。『なぜ変装がないんだ』とね」と言い、扮装の継続を予告した。

 火野正平、勝村政信、金子貴俊、小川菜摘、狩野英孝ら豪華ゲスト陣も注目される。多彩な顔触れについて、水谷が「今回、いつにも増して色の濃い役者さんたちがゲストに出てくださいまして、我々の色が消えてしまうんじゃないかって」とオチをつけると、岸部と檀が大笑い。その空気感の中、水谷はゲストたちとのクライマックスシーンの撮影を「本当に面白かったですね」と思い返して言った。

「濃い人たちと濃いお芝居をするというのは時代劇ならではでしょうから、楽しかったですね」

 今作でも半兵衛は悪を成敗するために立ち上がるが、水谷は「権力というのは、いい権力の使い方をしてくれればいい代になるんだけれども、『権力をこう使われたらたまらないな』というドラマが今回あるんです」と説明。岸部は用人の世界もきちんと描かれるとことを伝え「見応えがあると思います」と力を込めた。

 檀は、さまざまなキャラクターの登場人物がどうつながっていくのかがポイントとし、「少しずつ少しずついろんな要素が絡み合って、最後のバカ殿につながっていくんです」と明かす、水谷は「アハハハ」とリアクションし、檀、岸部、スタッフの笑いを誘った。

水谷豊が作品への思いを語った
水谷豊が作品への思いを語った

岸部一徳、檀れいと続けてきた作品「ライフワークみたい」

 文字通り、現場で笑い、笑わせの水谷だが、今月14日で72歳。「隠居生活」への憧れを問われると、作品を絡めて思いを語った。

「還暦を過ぎたころでしょうかね。本当に1度『欲も得もなくなりたいな』って思ったことがあったんですね。実はそのころに『無用庵』に出合って、『これは丁度いいや』と思って。『僕も半兵衛と同じようなこれから人生をたどるな』って想像しながら、この仕事を続けてるんですけど」

 そんなことを語りつつ、水谷は「しかしね。今回」と小声で本音を口にした。

「『ああ、そういうもんなんだな』って改めて思ったんですけど、『欲も得も捨てよう』という半兵衛が、奈津と結婚して何年か経ちますけれど、若い女の子に囲まれる瞬間、(うれしくて)ウヒャウヒャ言うんですよ。奈津がいながら、奈津が(そばに)いないと、『こんなにウヒャウヒャ言う自分は何なんだろう』ってあらためて思いまして、『もしかして、オレもこんな風に若い人に囲まれてウヒャウヒャ言ったりするんだろうか』なんて思ってね」

 そして、檀から「欲だらけでした。半兵衛さんは」とツッコまれると、「難しいですね。欲を捨てるっていうのは」と苦笑いした。

 撮影は3月から約1か月、京都で行われた。第9弾の扮装の話題が持ち上がり、その先の第10弾も見えてきた。3人とも作品への思いは強い。まず、檀が言った。

「1年に1回、丁寧に丁寧に撮っている作品なので、続くことならいつまでも続いてほしいです。学びの多い現場ですし、水谷さん、一徳さんとご一緒させていただくのは宝物のような時間で。それが『8』まで続いたのは本当にうれしいことですし、誰一人欠けることなく来年、再来年とつながっていけば、こんな幸せなことはないなって思います」

 それを受け、水谷が「奈津はいいこと言いますね、勝谷」と感激し、岸部も思いを込めて言った。

「俳優にとっては幸せな現場というか、素晴らしい監督、スタッフ、共演者と一緒にできる機会はなかなかないんで。いくつになっても勉強できる場。『こういう現場を失いたくない。もっとやりたい。もっと続けたい』というの(感情)はどうしても出てきますけどね。なかなか他ではない現場ですね」

 実は21年の第5弾が最終回というつもりだったという水谷は、自身のクランクアップの際、「来年、5回目の最終回に期待しています」とスタッフらにあいさつしていた。今後について「かなうことならば、やりたい作品ですね」と明言。そして、「いつを最終回にしていいのか。時々、やめ際を失う作品ってあるんですね。まさにそうかもしれませんね。『どうやめたらいいんでしょう』っていう作品ですね。ライフワークみたいになりつつありますね」と熱のこもった言葉をつむいだ。水谷が、同じ志を持つ2人の“相棒”とともに作り上げる名作は、まだまだ回数を重ねていきそうだ。

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