80年代“黄金期”ジャンプ読者の夢空間…集英社が新たに仕掛けるマンガ居酒屋の舞台裏
「ドラゴンボール」にちなんだ“ドラゴンミートボール”が大人気!
ジャンプ本誌の本棚が象徴的だ。筆者が取材に訪れた際は1983~90年、8年分が本棚にズラリと並んでいた。東さんは「当時のジャンプが置いてあるだけで話のネタになりますよね。『北斗の拳』の連載が始まった時、ほかにはどんな作品が連載されていたのか。あの時『キン肉マン』はこんな展開だったのか。改めて見てみると、当時とは違った楽しみ方ができます」と話す。単行本では味わえないジャンプ本誌ならではの楽しみ方だろう。
メニューも魅力的だ。同店は2時間制3000円で、フードメニュー(全42品)、ドリンク(全52種)が食べ放題・飲み放題。別料金でジャンプ作品をモチーフにしたコラボメニューもある。「おとなのジャンプ酒場」の米川良孝店長に話を聞くと、特に人気なのが「ドラゴンボール」を取り上げた“ドラゴンミートボール”。ソフトボールほどの大きさのミートボールに星が4つ。孫悟空が“じっちゃんの形見”として大切にしていた四星球(スーシンチュウ)をイメージした一品だ。
「キン肉マン」の世界を表現した“マッスル・ドッキングバーガー”はハンバーグとてりやきチキンを豪快にバンズでサンドした大ボリュームの一皿。米川店長は「キン肉スグルは牛肉(ハンバーグ)、2代目キン肉マングレートの正体はテリーマンなので、てりやきチキンなんです」と料理に込められたこだわりを教えてくれた。
ほかにも、「魁!!男塾」名物の油風呂を再現した“富樫源次の大海老油風呂アヒージョ”、「シティーハンター」の定番シーンを料理にした“槇村香の100tハンマーコブサラダ”が楽しめる。これらのレギュラーコラボメニューに加え、“期間限定のコラボメニュー”を合わせて常時10~12種類が用意されるという。
店名に“おとなの”とあるように30代以上の世代をターゲットにした同店。米川店長によると、40歳前後の客層がメーンで、女性が2割を占めているという。土日祝日は午後2時から営業しており、子供を連れて来店する人も多く、東さんは「想定外でしたが大歓迎なことです。新しい世代の人が漫画を読むきっかけなればと思っています」。名作が新たな世代に語り継がれることに期待を寄せた。これまで同店では、「ろくでなしBLUES」の森田まさのり先生の特集企画、「北斗の拳」応援企画などを実施してきた。東さんによると「ほかにも企画を考えています」という。期間ごとに変化する店内の展示物・装飾品にも注目だ。
スポーツ漫画で熱くなり部活動に明け暮れたあの時、仲間と回し読みをしてギャグ漫画で笑い合ったあの時、ヒロインに憧れ恋愛に興味を持ち始めたあの時、30代、40代、50代の青春時代にはいつも週刊少年ジャンプがそばにあった。「ジャンプ酒場で同窓会というのもいいですよね」と東さん。ジャンプヒーローに囲まれた居酒屋で、仲間たちと童心に戻って思い出を語り合える。とびきりの夢が広がっている。
(イシイ ヒデキ/Hideki Ishii)
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