80年代“黄金期”ジャンプ読者の夢空間…集英社が新たに仕掛けるマンガ居酒屋の舞台裏
そこには、“大人が子供に戻れる場所”があった。7月に新宿・歌舞伎町で期間限定オープンした夢の居酒屋「おとなのジャンプ酒場」だ。「ドラゴンボール」「キン肉マン」「北斗の拳」などが連載され、週刊少年ジャンプ(集英社)の「黄金期」と言われる80年代ジャンプがテーマとなっているこの居酒屋は一体どんな空間なのか。80年代ジャンプ作品で育った30代記者が夢の空間を体験した。
期間限定「おとなのジャンプ酒場」が歌舞伎町に…出版社が居酒屋展開の新機軸
そこには、“大人が子供に戻れる場所”があった。7月に新宿・歌舞伎町で期間限定オープンした夢の居酒屋「おとなのジャンプ酒場」だ。「ドラゴンボール」「キン肉マン」「北斗の拳」などが連載され、週刊少年ジャンプ(集英社)の「黄金期」と言われる80年代ジャンプがテーマとなっているこの居酒屋は一体どんな空間なのか。80年代ジャンプ作品で育った30代記者が夢の空間を体験した。
まさに大人のテーマパークの一言だった。エレベーターを降りると、懐かしい週刊少年ジャンプの表紙が迎えてくれる。店内に入ると、キン肉スグル(キン肉マン)・孫悟空(ドラゴンボール)・前田太尊(ろくでなしBLUES)・剣桃太郎(魁!!男塾)・星矢(聖闘士星矢)・ケンシロウ(北斗の拳)・冴羽獠&槇村香(シティーハンター)という80年代ジャンプのヒーローが描かれた巨大壁画が飛び込む。ドキドキ、ワクワクが抑えられなかった。子供の頃、待ち遠しくてしようがなかった毎週月曜日。ジャンプ最新号の表紙をめくる瞬間。あの胸の高鳴りと同じだ。
店内にはジャンプファンを喜ばせる演出が詰まっている。実際に読むことができるジャンプ本誌が置かれている本棚のほか、BGMはアニメ化された主題歌・エンディング曲が次々に流れる。ショーケースの中には、「ろくでなしBLUES」の作中舞台場面MAP@井の頭公園、ビッグサイズのフルカラー・キン肉マン消しゴム。それにケンシロウのブロンズテイスト胸像が飾られているテーブルもあった。
昨今の「レトロブーム」を反映させるような新規事業。背景には、漫画作品の知的財産(IP)を積極的に活用した出版社の新たなビジネスへの挑戦が貫かれている。集英社は2012年から人気漫画作品の展覧会を企画。連載作品の単行本化、アニメ・ゲーム化にとどまらない「楽しみ方の多様化」に着目。17年からは新しいコンテンツビジネスとして“居酒屋”の営業に乗り出し、週刊プレイボーイ編集部プロデュースによる公式居酒屋「週プレ酒場」を歌舞伎町にオープンさせた。
リリー・フランキー氏を始めとする文化人のイベントなどを開催。昨年12月から今年1月まで期間限定で展開された名作「キン肉マン」と週プレ酒場がコラボした“キン肉マン酒場”も好評だったという。
「おとなのジャンプ酒場」を運営する集英社コンテンツ事業部部次長の東秀人さんは、この“キン肉マン酒場”で80年代ジャンプのコンテンツとしての強さを改めて感じ、「かつてのジャンプ読者の方が30代・40代・50代といますので、その世代の方々のための場所はありだと思いました」と笑顔で語る。
今年5月で週プレ酒場が閉店。居酒屋ビジネスを辞めるという選択肢もあったが、お酒を飲みながらワイワイ思い出話ができる「おとなのジャンプ酒場」を、約1年間を予定の期間限定でスタートさせた。編集者として「ろくでなしBLUES」など担当経験のある東さんは「昔の読者の方と作家さんに喜んでもらいたいというのが一番にある。みなさんに喜んでいただいて、より作品を好きになっていただきたい」と思いを込める。