子どもの先天性心疾患の約20%を占めると言われる心臓病 自然に完治の報告も…現役医師が解説

子どもの先天性心疾患の約20%を占めると言われる「心室中隔欠損(しんしつちゅうかくけっそん)」。生後間もなく診断された1歳女児が、診断から1年後に「自然閉鎖」になって健康を取り戻したという話題がSNSで反響を呼んだ。この病気の治療法や自然閉鎖の可能性について、心臓病に詳しい表参道ウェルネス統合医療クリニックの院長を務める森嶌淳友医師に聞いた。

心室中隔欠損は子どもの先天性心疾患の約20%を占めると言われる【写真:写真AC】
心室中隔欠損は子どもの先天性心疾患の約20%を占めると言われる【写真:写真AC】

「心室中隔欠損」を解説

 子どもの先天性心疾患の約20%を占めると言われる「心室中隔欠損(しんしつちゅうかくけっそん)」。生後間もなく診断された1歳女児が、診断から1年後に「自然閉鎖」になって健康を取り戻したという話題がSNSで反響を呼んだ。この病気の治療法や自然閉鎖の可能性について、心臓病に詳しい表参道ウェルネス統合医療クリニックの院長を務める森嶌淳友医師に聞いた。

 心室中隔欠損は、心臓の中の筋肉の壁「心室中隔」に穴が開いた状態のことをいう。胎児の成長は一般的に妊娠5週目には心臓に加え、脳や脊髄、食道や胃、腸など、主要な器官の原型が作り始められる。一方で、心臓は赤ちゃんの体内に血液を循環させて、ほかの臓器たちの発育を支えるため、まだ4つの部屋(右心室、右心房、左心室、左心房)ができていない段階で拍動し始める。この時期に何らかの異常が発生すると、先天性心疾患と呼ばれる心臓の構造的な問題が生じることがある。そのため欠損孔の程度や出現の時期、治療の必要性などは、人によって異なるとされる。

 今回、SNSでわが子に起きた出来事について報告した母親によると、女児は生まれてすぐに心雑音が確認され、心室中隔欠損が判明した。産後翌日に医師から、心室に1.5ミリの穴が空いているとの説明を受け、生後2か月の昨年7月から自然経過観察の状態が続いた。そして、医師から「自然閉鎖、完治」との診断を受けたとのこと。ネット上では、「良かったですね 人間の身体ってすごいです!!」などの驚嘆の声が寄せられた。

 心臓血管外科医から統合医療の道に進み、日本心臓血管外科学会や日本外科学会に所属している森嶌医師は、この病気について以下のように解説する。

「特に遺伝性や家族性はありません。心室の穴の状態が小さければ経過観察をして、完全に閉じなくても心臓に負担がかかっていなければそのままになります」

 欠損孔の大きさは個体によってさまざまであり、治療方針にも影響を与える。

「体格により相対的な評価となるため、何ミリ以上が手術という基準はありません。大きさだけで見ると、3ミリ以下(small)、3~5ミリ(medium)、5ミリ以上(large)として取り扱います。手術適応としては体の症状や心臓の状態を加味して決めることになるので、単純に何ミリという基準はありませんが、4ミリ以上だと手術すべきであるというデータもあります」

 そのため、穴が大きい場合は手術の必要性が出てくることがある。手術方法については「穴をふさぐ手術になります。心臓の動きが悪い心不全の状態であれば、心臓の負担を減らす心不全用の薬を使って経過を見ていくということもあります」。専門医の指導に基づいた適切なアプローチが求められることを明かした。

 一方、経過観察する場合、定期的な心臓の聴診で心雑音の変化を確認するが、自然閉鎖で治るケースも存在する。「自然閉鎖は70~75%の確率と言われており、多くは生後1年以内に閉鎖します。2、3歳以降は閉鎖率は極端に下がり、思春期には6~15%と言われています」という。

 自然閉鎖そのものはどうやって起こるのか。「特にメカニズムは解明されていませんが、成長過程で癒着するなどして自然に修復されるものと思われます」とのことだ。

 成長するにつれて体が大きくなり、身体活動の増加などによって心臓への負担は多くなる。欠損孔が広がらないようにするための予防策があるという。

「激しいスポーツや運動は控え、定期的に心臓の超音波の検査などを行って心臓の状態を把握しておくことが必要と思います。あとは心臓の筋肉に必要な亜鉛やコエンザイムQ10を、サプリメントや食事(カキ、タラコ、かつお節、鶏モモ肉、イワシやサバなど)を通して摂取することも有効かと思います。子どもの時は心臓に負荷がかかってなくても、大きくなって体が大きくなると心臓にかかる負荷が増えます。穴が空いていることで、健常な心臓よりも負荷がかかっているので、心臓の働きが低下する心不全になりやすくなってくるためです」

 成長に伴う心臓への負担を考慮し、適切な生活習慣や栄養摂取を心がけることが将来の健康維持に役立つようだ。また、専門医の指導の下での定期的なフォローアップと適切な治療が、心室中隔欠損の管理と改善において重要な役割になりそうだ。

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