大沢たかお「選ばれ続ける俳優でいなければ」 使命感でチームとヒットさせた『キングダム』

映画『キングダム』シリーズの第4作『キングダム 大将軍の帰還』が、今月12日に公開された。大沢たかおはこれまで通り、人気キャラクターである秦の大将軍・王騎役で出演。毎回映画をヒットさせてきた“チーム・キングダム”の一員として、大沢がチームの原動力やグローバル化するエンタメの最前線で思うことを語った。

『キングダム 大将軍の帰還』で王騎の最後の戦いに挑む【写真:山田ジュンペイ】
『キングダム 大将軍の帰還』で王騎の最後の戦いに挑む【写真:山田ジュンペイ】

グローバル化するエンタメ最前線で思うこと

 映画『キングダム』シリーズの第4作『キングダム 大将軍の帰還』が、今月12日に公開された。大沢たかおはこれまで通り、人気キャラクターである秦の大将軍・王騎役で出演。毎回映画をヒットさせてきた“チーム・キングダム”の一員として、大沢がチームの原動力やグローバル化するエンタメの最前線で思うことを語った。(取材・文=大宮高史)

 大沢ら俳優、スタッフは、第1作『キングダム』公開前の構想・準備期間を含めると、実に8年間『キングダム』に関わってきた。中国・秦の中華統一の歴史を描き、すでに連載開始から10年を超えていたヒットマンガの映画化であり、当初は関係者の全員が尋常ではない緊張感を持っていたと回顧する。

「当時は『また、マンガの実写映画化かよ』のようなネガティブな前評判もありましたし、まして、『キングダムなんて』という雰囲気の中で、主演の山崎賢人くん以下全員が、『コケたら後がない』と覚悟して臨んでいました。始まりからこのチームは崖っぷちにいたんです。追い込まれた人間たちが発する強烈なエネルギーが『キングダム』という映画を押し上げてきた原動力なのだと思っています。この情熱をベースに作品を重ねるにつれ、皆がどんどん狂気的になっていく。その集大成がこの『大将軍の帰還』ですね」

 およそ30年の俳優人生でも、一つの役にこれほど長く携わった経験は初めてだ。

「例えば『釣りバカ日誌』や『男はつらいよ』でも、一つのタイトルが数十年と続いて、人を笑わせたり、感動させることって本当に難易度が高い。『キングダム』の8年ですら、とても長い時間だった上に初期にやったことが通用しません。それを何十年と繰り返していくわけです」

 結果、第1作『キングダム』の公開から5年で4作、過去3作とも興行収入50億円を超える大ヒットシリーズとなった。

「皆、8年も関わっているので、勝手にキャラクターが動き出すというか、人格が入れ替わってキングダムの世界で生きている感覚になっていました。それに途中から新型コロナに見舞われました。撮影現場でもろくに話せないし、規制が厳しくなっていく中で前作以上のものを見せなければならなかった。もしかすると、それすらもヒットさせるための試練だったかもしれません。だから、皆が逆境で燃えていて、あんなに怖い目付きをしているんです(笑)」

 大沢自身は、今年公開の映画『沈黙の艦隊』では主演するとともにプロデューサーも務め、未公開シーンとその後の物語を描いたドラマ版『沈黙の艦隊 シーズン1 ?東京湾大海戦?』はAmazon Prime Videoで全世界に配信。世界を見据えて活動しつつ、危機感は常に持っている。

「我々だけがエンタメの担い手と言える時代では到底なくなりました。YouTube、ネットドラマ、テレビドラマ、それに映画に舞台と娯楽は無限にあります。YouTubeで誰でも動画をヒットさせられる時代になったのだから、プロとしてエンタメで稼げる裾野は広がりました。映画やドラマの業界にしても、欧米や中国、韓国の作品が全世界で見られて、横一線で比較されます。『キングダム』だって、『YouTubeの方が面白いから見なくていいや』と言われてしまうかもしれない」

 ヒットを生むための競争はより熾烈になっているが、大沢はそんな現状を歓迎する。

「俳優だけでなく、監督だろうとカメラマンだろうと、競争の中で生き残れる者だけが残って、選ばれなかった人間は辞めるしかない世界です。常に比較されているからこそ、面白いエンタメを作り続けていかねばという使命感は強くなりますね。消える時は一瞬なので、選ばれ続ける俳優でいなければなりません」

『大将軍の帰還』で「キングダム」は集大成を見せたが、もし、「キングダム」の映画が続くなら、俳優たちに求めるものは何かを聞くと…。

「賢人がいれば大丈夫です。彼も初めは先行きに確信が持てなかったと思いますが、シリーズが続くうちに頼もしくなりました。彼の情熱がキングダムの核になっていて、スタッフたちチームもマインドを共有しています。原先生も脚本に参加してくださっているし、彼らの熱さが途絶えない限り、ファンを裏切ることはないと信じています」

 『キングダム』で当たり役に出会ったが、競争の激しい業界でこれからのビジョンは抱いているのだろうか。

「俳優人生の中でもあまりに大きな経験でした。キャスト全員が成長できた作品ですが『どう成長できたか』も、これから分かってくるのかな。だから、将来へのイメージはまだ考えていなくて。でも、振り返ると、僕がこの8年間を生きた証しが、王騎の姿だったといえます。何物にも代えがたい年月になったことは、素直に誇っていいのかもしれません」

 世界で売れるエンタメを目指し、現代での大沢の闘いは続いていく。

□大沢たかお(おおさわ・たかお)1968年3月11日、東京都生まれ。モデルとして芸能界デビュー後、1994年にフジテレビ系連続ドラマ『君といた夏』で俳優デビュー。以降、ドラマ、映画で話題作への出演を重ねる。2019年からは映画『キングダム』シリーズに王騎役で出演。映画&配信ドラマ『沈黙の艦隊』(23-24年、続編決定)では、主演とプロデューサーを務めた。181センチ、血液型A。

(※山崎賢人の「崎」はたつさき)

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください