Sareeeが大一番へ本音を激白 骨折で出場不透明なジュリアの「代わりになる選手なんて誰もいない」
今現在、“太陽神”Sareeeほど、令和女子プロレス界を縦横無尽に駆け抜けている人物はいないだろう。SEAdLINNNGのシングル王者としての防衛戦はもちろん、スターダムに乗り込んだかと思えば、今度は新団体マリーゴールドでメインを務め、翌日はまた別の団体で激闘を展開する。要は、最もダイナミックにフリーという立場を活用している女子プロレスラーがSareeeなのだ。今や「令和女子プロレス界のエース」となったSareeeを直撃し、現在の心境を聞いた。
ジュリアが怪我したことは気づかなかった
今現在、“太陽神”Sareeeほど、令和女子プロレス界を縦横無尽に駆け抜けている人物はいないだろう。SEAdLINNNGのシングル王者としての防衛戦はもちろん、スターダムに乗り込んだかと思えば、今度は新団体マリーゴールドでメインを務め、翌日はまた別の団体で激闘を展開する。要は、最もダイナミックにフリーという立場を活用している女子プロレスラーがSareeeなのだ。今や「令和女子プロレス界のエース」となったSareeeを直撃し、現在の心境を聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
「私はもっともっと何かができると思っていますね」
Sareeeに対し、「自分が令和女子プロレス界のエースだと思っているか」と聞いたところ、そんな答えが返ってきた。Sareeeが米国から凱旋し、5月に日本での凱旋試合を実施してから約1年2か月。これ以上ないほど、際立った動きを見せてきたと胸を張っているかと思いきや、本人的にはまだまだという意識があるようだ。
だからこそSareeeは「だからまだ女子プロレス界のエースにはなれていないと思っていますね」と謙虚な姿勢を見せた。
ともあれ、今週末(13日)には新団体マリーゴールドの“天王山”、両国国技館大会でジュリアとの一騎打ちが発表されている。ジュリア対Sareee戦は、現在の女子プロレス界において最大のキラーカードだが、実はジュリアが旗揚げ戦(5月20日、後楽園ホール)で右腕を負傷したため、この一戦が本当に実施されるのか。今現在も予断を許さない状況にある。
ちなみに旗揚げ戦でSareeeは、ボジラと組んでメインに登場。ジュリア、林下詩美とのタッグマッチを闘った。その際、ジュリアとは5年ぶりとなる“危険な再会”を果たした。
「実際、ジュリアとは日本に帰ってきてから闘いたいと思っていたし、あっちも思い続けてくれて、やっと念願の闘いだったわけでですよ。だからファンの人たちもそうだったかもしれないですけど、自分たちもタッグとはいえ、楽しみにしていた対決でした。だから、向かい合った瞬間はメラメラと燃えましたよね。やっとジュリアとリングで闘うんだ、今からみたいな……感じだった」
しかしながら、ここでアクシデントが起こる。前述通り、ジュリアが右腕を負傷してしまったのだ。
「終わってみたら、ジュリアははじまってすぐに骨折してたって知って」と、Sareeeにとってはまさかの再会になってしまったが、Sareeeは「それを聞いて、すごく悔しかったっていうのもあるんですけど、すごいなこの人とも思いましたね」とコメントした。
その理由はこうだ。
「私は気づかなかったんですよ、ジュリアが怪我してることを。それを気づかせないで最後まで闘い抜くって、相当な強い心がないと、魂ですよね、それこそ。それがないとできないと思うから」
そう考えると、待望の再会は不完全燃焼だったが、Sareeeは試合後になって、ジュリアの闘争本能の高さを実感したというのだ。
「旗揚げ戦では私がジュリアに勝ったけど、万全の状態のジュリアとやったらどうなるんだろうっていう怖さはありますね。だから次にジュリアとやる時は、万全の状態じゃないと意味がないって思っていますね。私はコンディションもすべてバッチリなので」
そう話したSareeeは、「ジュリアがやるって言ってる限り、私はそれを信じることしかできない。ジュリアの代わりになる選手なんて誰もいないですよ。だって待ちに待って、やっと大舞台で闘えるんだから。私はこの一戦に賭けていますから」と語った。あとはジュリア次第だが、最終的にはどうなるか……。
水と油の両団体と自然体で付き合えるSareee
さて、実はSareeeは、昨年5月に「Sareee-ISM」なる自主興行を開催し、これを凱旋試合としながら、これまで3度の「Sareee-ISM」を開催してきた。
そして、この夏には「同Chapter IV」(7月29日、新宿FACE)と「同Chapter V」(9月3日、新宿FACE)を開催する。
過日、前者の対戦カードが発表されたが、Sareeeは「最も仲良くしている」という、スターダムのなつぽいとドリームタッグを結成する。スターダムとは、年商15億円を弾き出した、今や日本女子プロレス界の最大手団体だ。
「側宙プレス(フェアルアルギフト)ができるのは、女子プロレス界ではなつぽい一人。その点ではオンリーワン。人気も実力も急成長していて尊敬してますし、妖精みたいなイメージがある選手だけど、強さを持っている選手なので、上に行くためにはなんだってやるんです。だから『Sareee-ISM』の空間で何かをやってほしいと思っていました。なつぽいにも闘う魂が絶対にあると思っているので、『Sareee-ISM』ではそれを引き上げたいですね」
ここまでサラリと書いてしまったが、現在のSareeeがマリーゴールドのエース、ジュリアとの一騎打ちを直前に控えた状況にあることはすでに書いた。だが、マリーゴールドが今春スターダムから分派し、物議を醸した団体であることを考えると、あくまで今現在のスターダムとマリーゴールドの関係は決して良好ではない。いや、最も険悪な水と油の関係にある両団体と言ってもいい。
それでも、なぜかSareeeだけはその双方とも友好的に付き合っている。これはいったいどういうことなのか。
改めてSareeeにそれを訊(たず)ねると、「なんでなんですかね?」と、自分でもよく分からない、といった雰囲気だと話した。
それでもSareeeはスターダムのリングにも立った。いや、立っただけではなく、“スターダムのアイコン”であり第3代IWGP女子王者の岩谷麻優とのタイトル戦(4月27日、横浜BUNTAI)の切符を手に入れた。
実は両者は4年前に対戦が発表されながら、前日に中止になった過去があり、その点でも注目度は集まったが、両者はその注目度を遥かに上回る“作品”を作り上げた。
試合は、お互いの“凄み”をいかんなく発揮し続けた出し末、最後はSareeeが敗れ、岩谷が5度目の防衛に成功。Sareeeはあと一歩のところでIWGP女子王座を腰に巻くことはできなかった。
「私は私のプロレス人生で、絶対にIWGPのベルトは巻くって決めていて。そのチャンスがやっと来たのに、それが掴めなかったっていうのは、ホントに悔しい試合でしたね」
岩谷戦では苦渋を舐めたSareeeだったが、とくにIWGP史上、最も弱気な発言を繰り返してきた岩谷の強さを、Sareeeが引き出すことに成功。要は、Sareeeが岩谷を覚醒させたのだ。
「Sareee-ISM」ではなつぽいとタッグを結成
それが証拠に岩谷はSareee戦を終えると、IWGPのルーツとなっているアントニオ猪木の権利を管理する猪木元気工場に表敬訪問。その際に今後の抱負を聞かれると、「誰の挑戦でも受ける」と、全盛期のA猪木が言い放った言葉を口にした。それまでの岩谷が弱気な言動や行動を繰り返して来たことを考えると、まさかあの岩谷が、そんな強気な発言を口にするとは驚くばかり。おそらくSareee戦を勝ち残ったからこその自信が、岩谷にA猪木の言葉を言わせた可能性は高い。
これに関してSareeeは、「でも、やっぱIWGPのチャンピオンならば、それぐらいの覚悟を持ってもらわなければ困りますし、やっと覚醒してくれたのかな」と語り、次のように言葉をつないだ。
「もしそれが私と闘ったことによって岩谷麻優がそう思ってくれたんだったら、やった意味があったし、私も挑戦した意味があった。こうやってあのベルトの価値がどんどん、みんなの想いがいっぱい詰まった、せっかく猪木さんがつくった、IWGP女子のベルトができたってことで、そうやって女子プロレス界が盛り上がってくれたらいいなと思いますね」
まさかA猪木も、自身が世界統一を掲げて3年越しで1983年に立ち上げたIWGP王座が、めぐりめぐってそれから40年以上経った、この令和の時代の女子プロレス界を盛り上げることに活用されていくとは思ってもいなかったに違いないが、それでも、こうなると雲の上から「ンムフフフ」とほくそ笑んでいるのが伝わってくる。
もちろんSareeeも「必ず私はあのベルトを取りに行くので、その日を待っていてほしいですね」と、来るべきリベンジの日を見据えている状況だ。
そうやってリング上で熱い試合が行われるのは非常に素晴らしいことだが、Sareeeが岩谷やジュリアと闘えるのは、業界の常識ではあり得ない話なのだ。それを知ってか知らずか、Sareeeはこう話した。
「私の場合はずっと岩谷麻優、ジュリアと闘いたいと思っていて、その二人がいる場所に行ったら、そこがスターダムだったし、マリーゴルードだっただけなんです。でも、それに似た質問は、取材を受けると聞かれることもあるから、その度に考えるんですけど、今話したことしか考えられないんですよねえ……」
いわゆる大人の事情の話なのだが、Sareeeは「深く考えずにいますし、とくに(それぞれの団体に)気は遣っていない」という。もしかしたらそういった、あっけらかんとした性格のSareeeだからこそ、双方の団体とも難しく考えずに付き合えるのかもしれない。
それよりもSareeeは、間近に迫ったジュリア戦と、その先にある、なつぽいとのタッグ結成に夢を馳せている。
考えれば昨年の「Sareee-ISM」では、初代IWGP女子王者の実績を持つKAIRIとのドリームタッグを結成した。
「あの後、KAIRIさんが渡米してしまったことを考えると、いつどうなるかわからない。それでも、あの時も自ら動いたから夢が叶ったんです。だから、なつぽいとだって、これが最後でもう一生ないかもしれない。やりたいことは今やるしかないと思ったんです。後悔しないように。だから絶対に観にきてほしい」
そう言って、“令和女子プロレスのエース”Sareeeは目を輝かせた。Sareeeが己の“闘い”を追求する旅は、これからも続いていく。
(一部、敬称略)