豪州では仰天の1箱4800円…“円安ニッポン”に外国人喫煙者も笑顔 日本のたばこ価格は高騰も「間違いなく安い」
急速な「円安」の進行とともに、訪日外国人の数も右肩上がりだ。日本政府観光局が発表した今年5月の外国人旅行者数は、推計304万100人と3か月連続で300万人を突破。前年同月比では60.1%増という驚異的な伸びを見せている。
来日中の外国人愛煙家に聞いた「たばこ価格」への本音
急速な「円安」の進行とともに、訪日外国人の数も右肩上がりだ。日本政府観光局が発表した今年5月の外国人旅行者数は、推計304万100人と3か月連続で300万人を突破。前年同月比では60.1%増という驚異的な伸びを見せている。
大挙して来日する彼らが口を揃えて言うのは、現在の日本が「安い」ということ。ホテルに宿泊してもレストランで食事をしてもブランド品を買っても、訪日外国人のお財布に優しい状況が続く。
例えば、近年物価の上昇が止まらない英国の首都ロンドンでは、地下鉄の初乗り運賃がICカード使用時で2.70ポンド(約555円)、現金で切符購入の場合は6.70ポンド(約1377円)にもなるが、都内を走る東京メトロの場合はICカード使用時で178円だ。また、ロンドンでは食事の値段も日本に比べて総じて高く、1ポンド=205円と円安がさらに加速していることもあり、カフェで飲むコーヒーも安くて1杯700円超え、リーズナブルなランチセットでも2000円が当たり前というほどだ。
こうした傾向は、世界的な嗜好品の1つである「たばこ」も同様となっている。日本のたばこ価格は1990年代後半からたばこ税の増税を受けて値上がりを続けており、例えば人気銘柄の「セブンスター」は2003年時点で280円だったが、現在は600円と20年間で約2倍に。それでも海外と比べれば、今もリーズナブルだ。
海外の各国価格比較サイト「NUMBEO」によれば、20本入りの紙巻きたばこ「マールボロ」の価格を比較した国別ランキング(2024年6月27日時点)で、日本は3.74ドル(現在の換算レートで約600円)で56位。1位オーストラリアの29.99ドル(約4800円)、3位英国の16.87ドル(約2700円)、12位米国の10.00ドル(約1600円)などと比べて低い水準だ。
この価格差には昨今の円安の影響はもちろん、喫煙に対する各国の政策や税制面の違いも関係している。果たして日本を訪れた外国人喫煙者は、母国とのたばこ価格の違いについて、どんな印象を抱いているのか。多くの人で賑わう原宿・表参道エリアの喫煙所で、外国人愛煙家を直撃した。
「みんなとても丁寧に接してくれるし、すごく居心地がいいですね」
日本の印象についてそう語ってくれたのは、スペインからやってきたマリオさんとサイダさん。大阪、京都、広島を巡り東京にやってきた。日本の物価については以前より安くなったと感じているようで、「日本に来るまでの飛行機代は高いけれど、日本に到着すれば滞在費はとても安く感じます」(マリオさん)、「買い物をたくさんしてしまいました」(サイダさん)と充実した表情を見せる。
愛煙家である2人は、スペインを出国する際に空港でたばこを多めに買ったが、日本でも1パック購入したという。スペインでは「5ユーロ(約850円)くらい」だったため、日本より少し高い状況だ。それでも2人とも、母国のたばこ価格について「喫煙は健康を害することもあると言われているので、たばこを高額なものにして喫煙者を減らそうとするのは理解できます」(マリオさん)と受け入れている。
サイダさんが続ける。
「スペインでもまた、たばこの値段が上がるかもしれないと言われていますが、私はそれは仕方がないと思っています。だって、たばこは生活をする上で絶対に必要というものではないから。私は食料品や日用品の価格が上がるよりも、たばこの値段が上がるほうがいいと思っています」
異国の地のルールに従い、決められた場所でたばこを愉しんでいた2人は、喫煙者の目線で持論を展開していた。
イタリアでは「約5年で340円以上」たばこ価格が上昇
原宿駅近くの喫煙所で話を聞いたのは、日本でIT関係の勉強をしている来日2年目のアリアさん。米国ジョージア州の出身で、「日本の生活はグレイト!」と異国で過ごす日々を満喫している。
円安ドル高の恩恵を直接受けており、「私がメインで使っている銀行口座はアメリカのもので、米ドルでの預金があるから日本で引き出すととても多く感じることはあります。だから、学生の身としてはとても助かっていますね」と本音を明かす。
たばこ価格については「間違いなく日本のほうが安いですね。(米国だと)銘柄にもよるけど、安いものは6ドル(約960円)くらい、高くて11ドル(約1760円)くらい」。もっとも米国より安くたばこを手に入れられることで喫煙本数が増えているわけではなく、逆に「私は自宅ではたばこは吸わずに外で吸っているので、スモーキングエリアが限られている日本では少し減っていますね」とのこと。外出先で喫煙所を見つけるのが難しい場合もあり、今では禁煙も視野に入れているという。
表参道の喫煙所で声をかけたイタリア人のアリスさんは、友人夫婦と旅行中。京都や飛騨高山も観光したなかで、昨今の日本の物価の安さを実感している。
「今はドルが強いので、私たちにとっては日本のほうがイタリアより物価が安く感じます。食べ物、洋服、日用品……ほとんどすべてのものがイタリアより安い気がしますね」
たばこ価格についても「日本のほうが安いですね。日本では1パックが2ユーロ50セント(約425円)くらい、イタリアでは5ユーロ(約850円)くらいなので、ほぼ倍です」と母国との値段の差を指摘。イタリアでは近年たばこ価格が上昇しているようで、「(5年前は)日本と同じくらいの値段でした。ここ5年くらいで2ユーロ(約340円)以上も上がったので、本当に困ります」と喫煙者としての本音も。そして「日本でたばこを買って帰ろうと思います」と、帰国前に“円安ニッポン”を訪れた恩恵にあずかることを笑顔で宣言していた。
今回、街頭で話を聞いた外国人喫煙者に共通していたのは、近年のたばこ価格上昇にさまざまな思いを抱きつつも、嗜好品であることを理解し、異国の地でそれぞれがマナーを守って愉しむ姿だ。同時に日本の喫煙所の少なさを指摘する声も上がっていたため、今後整備を進められるかが、外国人愛煙家が“円安”日本をさらに満喫する上での1つのキーワードになりそうだ。