松本幸四郎「僕はすごい人なんだなぁ」と照れ笑い 京極夏彦氏から称賛「頼もしいことこの上ない」
歌舞伎俳優の松本幸四郎と、小説家の京極夏彦氏が9日、都内で行われた「歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』第三部『狐花(きつねばな) 葉不見冥府路行(はもみずにあのよのみちゆき)』」の取材会に出席。京極氏が、幸四郎の魅力について語った。
キャスト陣を知った京極氏「豪華な名前が出て来た」
歌舞伎俳優の松本幸四郎と、小説家の京極夏彦氏が9日、都内で行われた「歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』第三部『狐花(きつねばな) 葉不見冥府路行(はもみずにあのよのみちゆき)』」の取材会に出席。京極氏が、幸四郎の魅力について語った。
同作は、2024年に小説家デビュー30周年を迎えた京極氏が、初めて歌舞伎の舞台化のために書き下ろした新作歌舞伎。26日には同名小説が発売され、8月4日から歌舞伎座で上演される。京極氏の大人気作品で、古本屋を営む京極堂こと中禅寺秋彦が、“憑き物落とし”によって事件の真相を解き明かしていく『百鬼夜行』シリーズや、直木賞、柴田錬三郎賞、吉川英治賞の文学賞三冠を果たした『巷説百物語』シリーズに連なる物語。
今回は江戸を舞台に、中禅寺秋彦の曽祖父・中禪寺洲齋の時代を描き、美しい青年の幽霊騒動と作事奉行らの悪事の真相に中禪寺が迫る。幸四郎が主人公の中禪寺洲齋を演じ、中村勘九郎が作事奉行・上月監物、謎の男・萩之介と上月監物の奥女中・お葉の二役を中村七之助が演じる。
京極氏によると、小説を書き始めた段階ではキャストは決まっていなかったという。執筆途中で配役の知らせがあり、そのメンバーに「正直びっくりしました」と語った。「役者さんってすごいなと思うのは、役を引き寄せたり、役に寄っていったり、必ず“そのもの”になってしまう。僕が書いたキャラクターは、どなたがやってもその人なりの役になると思っています。舞台化前提なので、役者さんに頼ることになる。それにしても豪華な名前が出て来たので、その段階でやめようかなぁ……いいのかなぁ……と少し思いました(笑)」と、プレッシャーを感じたと明かした。
「でも裏を返せば、どんなに出来が悪くても、『きっとこの人たちなら立派にやってくれるのではないか』と。怖いなというプレッシャーの反面、安心するという、相反する気持ちが同時にわきました」と語った。
幸四郎は、「この作品が『新作として誕生するんだ』という気持ちと、自分の妄想がいっぱいふくらむけど、『ふくらみきった妄想で、(実際に)やるのは自分』というので、(歌舞伎化への理想と現実で)苦しんでいく。今回は(役を)引き寄せる部分もあるけど、まずはその世界に飛び込んで、『自分が変身する』という気持ちで取り組みたいなと思います」と意気込んだ。
京極氏は幸四郎について、「お若い頃から見ていて、(幸四郎を)襲名されてからは、その名前通り、頼もしいことこの上ない。鬼平(鬼平犯科帳)も引き継がれた」と絶賛。続けて、「姿が良いとか声が良いとか、あると思いますが、総合的に『今の大看板を表せる方なんだなぁ』と、改めて思いました。背負って立つお方」と魅力を語った。京極氏から称賛された幸四郎は、「僕はすごい人なんだなぁ……って思いました(笑)」と照れながら喜んだ。