業界歴47年・マリーゴールド小川代表が激白「多くの団体のレスラーはサラリーマン」
新団体マリーゴールドの両国国技館大会が13日、開催される。団体を率いるのは、業界歴47年のロッシー小川代表だ。今回は、この道ひと筋でプロレス界にかかわってきた小川代表が、67歳にして勝負に出た背景を探る。
豊田VS北斗は隙を見せたらやられる世界
新団体マリーゴールドの両国国技館大会が13日、開催される。団体を率いるのは、業界歴47年のロッシー小川代表だ。今回は、この道ひと筋でプロレス界にかかわってきた小川代表が、67歳にして勝負に出た背景を探る。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
47年という長きにわたる業界歴を持つ小川代表が最初にこの世界に入ったのは全日本女子プロレス(全女)だった。全女といえば、松永兄弟が経営し、長らく女子プロレス界を牽引しながら、2005年春にその幕を閉じた団体だが、その時代によって、誰が現場を仕切っていたのか。まずはそこから話を聞いてみる。
「クラッシュギャルズの時はジャガー横田とデビル雅美、北斗晶、ブル中野の時は北斗、ブルかなあ。選手間を仕切っていたのはね。でも、仕切るっていうのは、その人たちを面倒見るということだから、それが役目としてあるってことなんですよ。面倒をみられないのに、仕切るだけ仕切るってないから、それはもう今の時代では考えられないかな」
全女の話をさまざまな選手・関係者に話を聞くと、まあ、狂っているような話が湯水のごとく湧いて出る。それに関して「全女は全女というひとつの国なので、そこから出ない限り、考えは変わらないんですよ」と話した。
さて、マリーゴールドが旗揚げする前の段階では、当然ながらエースであるジュリアが団体をけん引していくかと思われたが、旗揚げ戦で右手首を負傷してしまったことから、結果的に“太陽神”Sareeeがその役割を担ってきた。実はそのSareeeは、全女の頃にリング上にあった、激しいぶつかり合いを含めた“闘い”のある世界観を残したい、と考えながら、いまマリーゴールドのリングでそれを絶賛展開中でもある。
しかしながら小川代表は、「違うんだよな」とひと言。
詳しく話を聞いていくと、「全女時代はああいう子がいっぱいいたから、せめぎ合いなんですよ。でも、Sareeeは一人でそれをしているから無理がある。例えば全女で言ったら、豊田真奈美VS北斗晶とかね。隙を見せたらやられちゃうんですよ。だから自然とスリリングな試合になる。いま、Sareeeとそれをやってもいいって人が少ないわけじゃないですか。だったら対戦相手も作らないと無理なんですよ、継続していくのは」とのこと。
とはいえ、当初はそんなそぶりを見せなかったマリーゴールドの“貴婦人”桜井麻衣がSareeeに呼応し、最近はその世界に入り込もうとする雰囲気が出てきた。
「もちろん、そういう選手もいると思いますよ。ただ、多くの団体のレスラーはサラリーマンだから」
レスラーは常に懐に刀を持っておけ
それでも、せっかくならバチバチ激しい感情のぶつかり合った試合が見たい、と思うのは、自分が昭和生まれの人間だからではないだろう。
「もちろん全試合じゃなくてね。ひと大会に1試合くらいはね。全部がそれをやり出しちゃったら、プロレスが成り立たなくなるから。そのくらいの覚悟を持った試合が、ひと大会に1試合くらいあればと思いますよ」
もちろん、プロレスにはさまざまなカタチがあって楽しみ方がある。大前提として、多少の怪我はプロレスがコンタクトスポーツである以上避けられないが、大怪我を負わせるようなファイトが見たいわけではない。当然、そこまでのバチバチプロレスは、Sareeeであっても毎試合やっていたらカラダがもたなくなるに違いない。
「そう。ただ、Sareeeは全力でやらざるを得ないんですよ、カラダがちっちゃいから。弾丸のように。そうじゃないとSareeeのSareeeたるものがなくなっちゃうから」
そんな話をしたところで、時計の針を2015年2月に巻き戻す。当時、スターダムでは世志琥が安川惡斗に馬乗りになって、顔面を拳で何度も殴り、病院に緊急搬送される事件が起こった。もちろん賛否は起こったが、ああいう場面を含めてもなお、楽しめるのがプロレスという世界なのではないか、と思うのだ。
この提言に対し、小川代表は「あれは楽しめないけどね」と苦笑いしながらも、この後、非常に重要な物言いを残した。
「まあ、でもあれをどう肝要な見方ができるかだよね。あれがダメだっていったら、プロレスの根源をね……(否定してしまう)。あれはプロレスとはいえないかもしれないけど、そこまで極限に達しちゃったわけですよね。そりゃあ闘っている以上はそういうこともあるだろうし」
だが、よくないのは分かった上で、あれも起こり得るんだ、という覚悟だけは持っておかないと、リングに上がってはいけない気がするのだ。
「そう。だからレスラーは常に懐に刀を持っておけじゃないけど、鍛えて、何が来てもいいっていう状況にしなきゃいけないんですよ。だから常に鍛えていなきゃダメってことなんですよ。そしたら、やらないんです。あそこまでやらなくても済むかもしれないし。ちょっと腕を捻ってしまえばできなくなってしまうわけだから。あれは世志琥も必死だったと思う。もっと強かったら早く極めちゃって、言うことを聞かせていたと思いますよ。よくこの世界でもどの世界でも、一方的にやってきたりするじゃないですか。やり返したら、もうやってこなくなるんですよ。だから、『今回来てる外国人がすごくカタく来る』とか言うから、やり返せばいいじゃん。そしたらやらなくなるよって言うんですよ。そういうもんですよ。ただ、それは古くからある日本のプロレス。世界ではそんなことは許されないからね。日本ではそういう感情的な、闘い的なものはあるから」
ウチには他の団体と交流しながらやる意図はない
ちなみに7月13日の両国大会がマリーゴールドにとっては最初の天王山になるが、その後はどう展開させていくつもりなのか。
「本当はねえ、12月28日にもう1回、両国大会をやりたかったんですよ。たぶん29日にスターダムが両国をやってくるから。そしたら『興行戦争』って久々に聞くフレーズがよみがえったんだけどね。それをやりたかったんですよ。『両国興行戦争』を。そうなれば両方とも注目されるし」
そこまで話した小川代表だが、「だからやりたかったんだけど、すでにどっかの団体が入ってましたね」と残念そうに語りながら、「そういうけしかけるのも面白いでしょう、プロレスっていうのは。こういうの、昔あったなあとか」とコメントした。
たしかに、今こそそんな大会が実現すれば、令和の今だからこそ、新しい場面として扱われていくかもしれない。
「そうやって仕掛けるんだなって。もちろん、こっちも年末はビッグマッチはありますよ。でも、あの規模ではないかなー。やりすぎるとビッグマッチじゃなくなっちゃうし、やる必然性があるほうがいいじゃないですか。大きい団体みたいに、毎年この時期はここでって組むのもいいと思うし。自分たちははじまったばっかりなので、こうじゃなきゃっていう例がないからね」
さらに小川代表は、「ウチは他の団体と交流しながらやっていくっていう意図はまったくないんですよ。ゼロではないけど。ここでしか見られないプロレスをつくっていく。じゃないと存在意義がなくなってしまうから。どこでも見られるようになってしまったら」と語った。
小川代表いわく、イメージ的には「90年代の新日本プロレスにはいろんな仕掛けがあった」と話す。
「あの頃の新日本は興行パッケージとしての仕掛けがあって、適度に他団体の選手を、ドームとかでは使っていた。そういうのはいいかもしれないけど、日常茶飯事にやってしまう必要はない。まずはマリーゴールドというブランド力をつけなきゃいけないから。どっかと対抗している場合じゃないですよ」
そう言って、他団体との交流よりもマリーゴールドのブランド化が先だとの見解を示しながら、これまでの道程を振り返り、次のように話した。
「でも、人生は思い通りにいかないんですよ。山があって谷があって、挫折があっての繰り返しなので、今がいいからと言って、その気になってもあれだしね」