俳優の森田望智が、主人公・佐田寅子（伊藤沙莉）の同級生で、兄嫁の猪爪花江役で出演するNHKの連続テレビ小説『虎に翼』（月～土曜、午前8時）の取材会に出席し、出演が決まった際の心境や演じる上で心掛けていること、自身と役の共通点などを語った。

「沙莉ちゃんのヒロイン発表があった時、絶対に見るぞと思ったんです。沙莉ちゃんはお芝居がすてきですし、題材も面白そうでしたのでオーディションはないのかなとも思いました。そんな時に声をかけていただいてお話をもらえたことに、すごくうれしかったのと同時に責任感と信頼してくださるありがたみを感じました」

　花江をどんな人物ととらえ、どう演じようと心掛けているのか。

「トラちゃんと対照的とよく言われますが、確かに猪突猛進のトラちゃんに対し、花江は一歩引いて計画的に戦略を練るのでタイプ的には違いますが、根本的にはすごく似ていると思っています。2人とも地に足がついていて目的のために努力を惜しまない人。着実に一歩一歩、自分の成し遂げたいことをしていく強い女性という意味では同じだと思います」

　花江はしたたかと言われることもある。

「したたかという言葉には、粘り強い、圧力に屈しないという意味があります。そこも花江に備わっていると感じるので、トラちゃんに似ていると思います。自立した一人の女性であり、家庭で家を守る女性ですが、それも女性の一つの生き方。働く女性ばかりが偉いわけでなく女性たちは平等に尊い存在であることを花江は体現していると思います。そこは大事にしています」

　花江と森田自身の共通点も尋ねてみた。

「今まで演じてきたどの役よりもすごくやりやすいんです。多分、気持ちが分かるからだと思います。花江は一見、柔らかそうだけれど、とても強いし、頑固な部分もあり、しっかり者。見た目とのギャップという意味では私も柔らかいと思われることが多いんですけど実際は違うので、そういう意味では似ています。花江は周りがよく見えていて本質を見抜く力がありますが、自分のことになると見えなくなります。私も自分のことがよく分からなくなり、どれが私だっけ？　となる時があるので、そこも似ています。私はしたたかと言われたことはないですが、“自分の意志がある”という部分は一緒だと思います」

　判例を再現する猪爪劇場と称される劇中劇では猪爪家の家族が“俳優”として出演し、事件をコミカルに伝えて視聴者を楽しませた。

「第3週はトラちゃんの声のナレーションで皆さんのせりふを言ってくれるので、現場では何を言ってもいい、みたいな感じでした。面白かったのは、岡部さんが毒饅頭を食べて亡くなってしまう描写のとき、放送では音声がオフになっていますが『ああ、いい香りが鼻から抜けていく』と言ってそのまま倒れていく姿が面白くて、みんな笑いが止まらなくなりました。はるさん（石田ゆり子）がホクロを付けたいと言えば、みんなも付けようとなったり。いい意味で楽しくふざけて、猪爪劇場をいいものにしたいという思いで、全力で遊んだ記憶があります」

　伊藤との印象に残るシーンを尋ねると、はるの他界に関する場面を挙げた。またアドリブへの思いも明かしてくれた。

「トラちゃんと亡くなったはるさんへの思いをはせた後のシーンはカットがかからなかったのでアドリブでやらせていただいたんです。1、2分カメラを回してくれたと思いますが、沙莉ちゃんだからこその自然な気持ち、半年間撮影を続けている中で生まれたものがあり、花江とトラちゃんの関係を超えて私と沙莉ちゃんの気持ちが通ったシーンでした。ゆり子さんの演じるはるさんが大好きで、いなくなったことに役としても私としても思いがのっていました。沙莉ちゃんも同じだと感じました。お芝居の楽しいところはこういうところだと思ったシーン。アドリブは使われるかどうかが大事ではなく、役としての思い出を少しでも長く作れる時間だと思っているので大事な時間でした」

　あらためて花江と寅子の関係をどうとらえているか尋ねた。

「第15週で今まで言えなかった分、トラちゃんへの花江の気持ちが爆発するシーンがあります。なぜ親友なのに花江は言いたいことを言えなかったのかと考えていたところ監督からこの時の2人は親友を超えて夫と妻という関係性なんだとおっしゃってくださいました。気持ちに蓋をして妻として夫をたて、家を守り、外に働きに出てくれているトラちゃんを私が支えなければいけないという思い。夫婦であり、家族であり、親友、いろんな思いが花江にあってのトラちゃんの見え方になっていきます。そこがすごく面白いですし、長丁場ならではと思います」

　カメラが回っていない森田と伊藤の関係はどうだろう。

「花江とトラちゃんが話しているような感じですが、ドラマは、たまに花江がトラちゃんにつっこんでいますが、私が沙莉ちゃんにつっこまれるという違いはあります（笑）。でもそんなに変わらないです」

　最後に視聴者にメッセージ。

「登場人物みんなの気持ちが分かる群像劇だと思いますので、みんなを好きになってもらいたいです。法律の部分もコメディーを交えながら分かりやすく組みこまれていますので楽しく見てもらえたらうれしいです」