「何かあればすぐ消します」 物議の“誇張モノマネ騒動”でハリウッドザコシショウが見せたプロ意識

4年連続となる『R-1グランプリ2024』のみならず、今年は『ytv漫才新人賞決定戦』でも審査員を務めたハリウッドザコシショウ。よわい50歳を迎えますます芸に磨きがかかる“芸人の中の芸人”が、芸能界に激震が走った“松本人志ショック”や、R-1グランプリの芸歴制限撤廃、思わぬ波紋を呼んだ“誇張モノマネ騒動”まで、お笑い業界を巡ったニュースの数々にざっくばらんな本音を語った。

ハリウッドザコシショウがお笑い界のニュースを本音で語った【写真:北野翔也】
ハリウッドザコシショウがお笑い界のニュースを本音で語った【写真:北野翔也】

“松本ショック”、R-1の芸歴制限撤廃に言及

 4年連続となる『R-1グランプリ2024』のみならず、今年は『ytv漫才新人賞決定戦』でも審査員を務めたハリウッドザコシショウ。よわい50歳を迎えますます芸に磨きがかかる“芸人の中の芸人”が、芸能界に激震が走った“松本人志ショック”や、R-1グランプリの芸歴制限撤廃、思わぬ波紋を呼んだ“誇張モノマネ騒動”まで、お笑い業界を巡ったニュースの数々にざっくばらんな本音を語った。(取材・文=佐藤佑輔)

――一連の騒動を巡る松本人志さんの活動休止について、思うところは。

「松本さんにはお世話になってきたから、なんでこんなことになんねんという思いはあります。自分は松本さんに見いだされて出てきた芸人だと思っているし、松本さんと絡みたくてやってきたから。どの番組に出ても松本さんがいないし、正直張り合いがないです。松本さん不在でも芸能界は回ってる? いやいや、それぞれの番組の攻撃力はだいぶ減っているでしょう。水ダウ(『水曜日のダウンタウン』)にしたって、VTR後の松本さんのツッコミがあるかないかで全然違う。『酒のツマミになる話』も松本さんあっての番組。『IPPONグランプリ』だって、絶対に松本さんの力が必要だと思います。僕、将来の目標のひとつにIPPONグランプリ優勝というのがあるんですけど、松本さんのいるIPPONグランプリで優勝したいと思っています。

 賞レースの審査員席にいないのも違和感があります。松本さんの場合、審査員としてももちろんですけど、優勝した後の芸人への影響力も大きいんです。(R-1で優勝した)街裏ぴんくも、松本さんがいないから今一つ使い道が見いだされてないところがある。何となく松本さんと絡むと、何かしら芸人としての答えが出るんです。僕もR-1優勝じゃなく、その後のドキュメンタルで自分の芸人としての使い道が分かりましたから」

――今年のR-1から「芸歴10年以内」とされていた制限が撤廃された。

「芸歴制限を続けているといずれ面白い人が誰もいなくなりますから。やめてよかったと思います。M-1は結成15年以内、キングオブコントには結成年数制限はないけど、どっちも実質的に若手の登竜門的な大会になっていて、R-1にはそれに出られなくなった人たちの再生工場的な意味合いがないといけないと思っていて。15年コンビを組んで解散しちゃったやつが、R-1にも出られないとなると厳しいですよね。ピン芸人にはもうチャンスがなくなっちゃう。ピン芸人同士でユニットを組んでM-1とかキングオブコントにも出られますけど、それもまた違うじゃないですか」

――制限撤廃後初の大会で、芸歴20年目のベテラン勢の優勝は象徴的だった。

「確かに芸歴が物をいっているなという印象はありました。妥当だと思いますけどね、あのメンバーからしたら。演者を批判したいわけじゃないんですけど、用意してきた絵や大喜利をビジョンとかフリップで見せて、それにツッコむ芸風のピンネタがあったじゃないですか。絵とかフリップがよくできていても、ただツッコむだけで、ツッコミに気合いというか、言霊が乗ってないんですよね。ツッコミの火力が弱いから、例えば同じネタを松本さんがやったほうが数倍面白いと思う。それじゃいけないと思うんですよ。それはその人の芸と言えるのかと。

 僕は自分の芸を松本さんがやったとしても、僕の方が絶対に面白いという自信がある。ネタの面白さは作った人が一番であるべきで、他の人がやったほうが面白いと思われてしまうのであれば、それは何かが足りてないと思うんです。絵もフリップも、それ自体は芸ではない。厳しいことを言うようだけど、どんなに出来がよくても“小道具を作り込んできた”という評価しかできないんです。審査員としては芸を見せてほしいわけだから。

 仮に優勝できたとしても、それが後々自分の首を絞めることもある。ご祝儀で出演ラッシュが回ってきて、例えば『(さんまの)お笑い向上委員会』でネタを求められたときに、あの芸でテレビ用の短い尺にカットして、さんまさんから『お前おもろいな!』と言われるのかというと……。引き合いに出してしまって悪いんですけど、(昨年R-1チャンピオンの)田津原理音くんも現場では面白かったんですけど、そこから1年芸能界を渡り歩くなかで、細かい小道具を使ったネタだとバラエティー番組で伝わりづらかったり……。

 ただ、小道具を使ったネタが全部ダメだとは言わない。極めたらいいんです。バカリズムだって陣内(智則)だって、小道具が面白いんじゃなく、あの間やテンションで、彼らにしかできないネタだから評価されているんです」

思わぬ波紋を呼んだ“誇張モノマネ騒動”も振り返った【写真:北野翔也】
思わぬ波紋を呼んだ“誇張モノマネ騒動”も振り返った【写真:北野翔也】

漫才未経験ながら、新人賞では審査員に抜擢

――今年は漫才未経験ながら『ytv漫才新人賞決定戦』でも審査員を務めた。

「大変でした。漫才も好きだけど自分がやってないから、ちょっとコメントもしづらかった。僕の隣にパンクブーブーの佐藤さんがいて、漫才のうんちくを語るんです。その次にコメントを求められるから、何も言うことがなくなっちゃって。

 大会自体はどんぐりの背比べ。よく言えばネタが秀逸で、ブラッシュアップして隙のない笑いをやっていた。悪く言うと机の上だけで作った頭のいいネタだなと。キャラクターがあるかというとそうでもない。本当の破天荒なボケと切れ者のツッコミみたいなコンビはいなかった。

 まあでも、そうなっていくんじゃないんですか。お笑いに限らず、プロ野球でも昭和の時代の傑物はもう出てこない。野球だったら、江夏とか、東尾とか、江川とか、王・長嶋とか。あの辺ってキャラも強いし、今だとありえない成績残したりしているじゃないですか。今はみんなスマートになって、何でもそつなくこなせる選手が増えてきてる。大谷選手がいい例じゃないですか。プロレスだってそうです。ジャンボ鶴田、天龍源一郎、長州、藤波。さらに上の猪木、馬場って、みんなマイクパフォーマンスも私生活もとんでもない連中ですよ。試合より舞台裏の方が面白かったくらいだから。

 今後も個性派の芸人は出て来づらいでしょうね。世間が求めるお笑い芸人の在り方が狭まってきているから。若い人の価値観がというより、見て育ってきたものが違うから仕方のないところもある。コンプラも厳しいし、難しいといえば難しいです」

――コンプラといえば、誇張モノマネでは騒動もあった。

「すでに世に出ているものをモノマネしたのであって、何か裏事情を明かしたり、知られたくないことを暴いたりしたわけでもない。僕なりには配慮したつもりなんですけど。あの動画は、毎日自分の考えたネタを記録用としてYouTubeに残しているもので、見たい人だけが見ればいいというスタンスのもの。あれで商売をしているわけでもないし、別に再生数がゼロでも構わない。消さないでほしいという声もありましたけど、今回に限らず著作権の問題とか、何かあればすぐ消します」

――さまざまな芸風がある中で、あらためてモノマネの難しさとは。

「モノマネって、それ自体は簡単なんです。子どもだってやる、別に芸を学ばなくてもできるものだから。解散してピンになって、一から何かやらなあかんとなったときに、僕はコントで見せるとかは下手だから、一番楽だったのがモノマネだった。ストーリー性のあるコントだと世界観に入り込まないと分からないけど、モノマネはその手前、ギャグよりももっと分かりやすいところにある。若い人でもお年寄りでも、似ているか似ていないかという判断は誰でもできる。万人が楽しめるものなのかな。

 ただ、マネして似ているか似ていないかと、そこから面白いかどうかはまた別。歌マネ番組で、例えば福山雅治さんのマネで歌ってすごく似ているなんていうのは、あれはもう芸術ですよ。あれはあれでひとつの形だけど、似てるだけだったらそっくりだねで終わっちゃう。僕はそこで終わりたくなくて、どうせやるなら笑える芸でありたいから、そうなるとどうしても誇張というか、オーバーに見せる手法になっていきます。モノマネだけど、人と同じことはやりたくない。既存のものをなぞりたくはないんです」

□ハリウッドザコシショウ/本名:中澤滋紀(なかざわ・しげき)1974年2月13日、静岡県出身。92年、高校の同級生とともに大阪NSCに11期生として入学。翌93年、お笑いコンビ『G★MENS(ジーメンス)』としてデビュー。2002年からピン芸人として活動を始め、16年の『R-1ぐらんぷり2016』で優勝。21年から4年連続で『R-1グランプリ』審査員を務める。24年には『ytv漫才新人賞決定戦』でも審査員に抜擢。大阪NSC時代の同期に陣内智則、中川家、ケンドーコバヤシ、たむらけんじら。『ハリウッドザコシショウのミニ単独ライブシリーズSEASON⑮ おまえいったなー↑ツアー』の公演情報詳細は公式HP(https://www.sma.co.jp/s/sma/artist/382?ima=0000#/news/0)参照。

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