22歳・川島鈴遥、子役デビューも感情表現に苦しんだ過去 「辞めるために」演技を続けて変化した“意識”

演出家の詩森ろばさんが手掛ける舞台『神話、夜の果ての』が7月5日から上演された。ヒロインを演じる川島鈴遥(22)にとって舞台出演は2作目だが、本格的な出演は今回が初となった。カルト宗教とその施設で育つ子どもたちの物語を描いた衝撃作で川島が演じるのは現実と夢の狭間に存在しているような謎めいた女性だが、どのような思いで本番に臨むのだろうか。

舞台『神話、夜の果ての』への意気込みを語った川島鈴遥【写真:ENCOUNT編集部】
舞台『神話、夜の果ての』への意気込みを語った川島鈴遥【写真:ENCOUNT編集部】

自身が思い描く理想の女優像は「縁の下の力持ちの存在」

 演出家の詩森ろばさんが手掛ける舞台『神話、夜の果ての』が7月5日から上演された。ヒロインを演じる川島鈴遥(22)にとって舞台出演は2作目だが、本格的な出演は今回が初となった。カルト宗教とその施設で育つ子どもたちの物語を描いた衝撃作で川島が演じるのは現実と夢の狭間に存在しているような謎めいた女性だが、どのような思いで本番に臨むのだろうか。(取材・文=中村彰洋)

 マネジャーによる「うちの川島がピッタリ」という推薦から抜てきされたというヒロイン役。実際に練習を重ねているが、「どこをピッタリと思ってくださったんだろうと思っています」と笑う。一方で「前回出演していた『仮想儀礼』(NHK/2023年)というドラマも宗教にまつわるお話で、そこで宗教というものへの捉え方などを学んでいたので、そういった部分で言ってくださったのかなと思っています」と分析する。

 これまではドラマなどの映像作品を主戦場としてきた。慣れない舞台出演に「無理ー! って思いました」と当初の率直な思いを口にする。

「映像だと撮影の瞬間に集中して、カットがかかったら1回自分に戻れます。でも舞台はぶっ続けで集中しなければならないので、『できるのかな』という不安が大きかったです。いろんな舞台を見させていただく中で『こんなにも表現に落とし込むことができるんだ』と思って、『私にできるのか』と不安になってしまいました。

 でも、物語の解釈も含めて、本読みを5日間ぐらいかけてやらせていただく中で、視界がすごく明るくなったんです。『あ、舞台ってこういう形なんだ』と分かって、楽しくなってきました」

 舞台での立ち回りに不安を感じる点も多かったが、演出面で詩森さんからはあまり多くを言われることはなかったという。「動きの部分などは何も言われないのですが、『このシーンで切ない気持ちになりたいんです』などとゴールは提示してくれるんです。でもその一言だけで分かるんですよね。その後でもう1度演じてみると、何が変わったのか分からないけど、とてもいいものになるんです。素直にうそいつわりなくよりどころを教えてくださるので、すごく信頼しています」。

 宗教二世の物語という難しいテーマだが、演じる中でさまざまな感情が芽生えているようだ。

「一言で言い表せないような残酷さを感じます。どうしてここまで苦しめるんだろうっていう気持ちになるんです。その日の気持ちやセリフの出し方によって、感情の受け取り方も変わっていく作品だと思います。『苦しいけど、生きよう』といったメッセージ性が強いと感じています。お客さんが入ることによって雰囲気も変わると思うので、本番がすごく楽しみです」

昨年卒業の大学では会計学を受講「家計簿もつけるように」

 川島は7歳で役者デビューを果たしたが、「当時はそもそもお芝居というものをよく分かっていませんでした」と当時を振り返る。

「『このセリフを言えばいいんだよ』と教えられてきましたが、そのセリフが出てくる理由や感情が全く分からず、それがつらくて、小学校を卒業したら辞めるつもりでした。『よく分からないことはもうやりたくない』とお母さんにお願いしたら、『これまでの芸能活動で何か自信を持ってやり遂げたと言えることはありますか』と言われました。『代表作を1つ作って、それでも辞めたいと思うんだったら辞めればいい』と言われて、それからは『辞めるために代表作を作る』というモチベーションでしたね」

 その後、15年に配信されたHuluオリジナルドラマ『フジコ』への出演が大きな転機となった。

「代表作になっているかは分かりませんが、周りの方から『あれ良かったよ』と言っていただけた初めての作品でした。尾野真千子さんと交わした熱量だったり、セリフではあるけれど本当に思っているからこそ、心から出てくるという感覚があったんです。そこで初めて、『私はお芝居を続けます』とお母さんに伝えました」

 昨年までは大学に通い、商学部で会計学を学んでいた。入学のきっかけは大学選択時に悩んでいた際に見かけた脱税のニュースだったと笑う。

「私はちょっと抜けてる部分があるので、『他人事じゃない』と思ったんです。そういったことも学べるし、数字も好きだったので、一石二鳥だと思って選びました。お金の動きだったり、いろんなことを学ぶことができました。その影響で家計簿もつけるようになりましたね(笑)」

 22歳ながらも芸歴は約14年。舞台という新たな経験を積んで今後、さらなる飛躍が期待される。

「作品の中で息をし続けられる女優さんでいたいですね。『あの作品で川島鈴遥すごかった』といよりも、作品になじんでいて邪魔にならない。でも、確実に実力はあるといった縁の下の力持ちのような存在になりたいです」

□川島鈴遥(かわしま・りりか)2002年3月17日、栃木県出身。10年、ドラマ『特上カバチ!!』でデビュー。19年にはオダギリジョー初長編監督映画『ある船頭の話』でヒロインに抜てきされ、同作で第34回高崎映画祭最優秀新人女優賞を受賞。『仮想儀礼』(23年/NHK)など数多くの作品に出演。ヒロインを務める舞台『神話、夜の果ての』が24年7月5日から上演中。

ヘアメイク:伍島琴美
スタイリスト:能城匠

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