山岳ドクターが選ぶ「日帰り登山の必須アイテム」全33点 これだけの装備が必要なワケ

今年も富士山で山開きが行われ、本格的な登山シーズンを迎えた。日本を代表する名峰として登山初心者やインバウンドの人気も高い一方、近年は観光客による軽装での登山や山小屋に宿泊しない弾丸登山が問題になっている。天候が変わりやすい山のリスクを軽視せず、どのような準備をすればいいのか。日本山岳ガイド協会認定登山ガイドで「AI MOUNTAINEERING CLINIC」代表の三井愛さんに、一般的な日帰り登山に必須のアイテムを聞いた。

三井さんが選んだ「日帰り登山の必須アイテム」【写真提供:三井愛さん】
三井さんが選んだ「日帰り登山の必須アイテム」【写真提供:三井愛さん】

日帰り登山でもこれだけの用意・装備が必要

 今年も富士山で山開きが行われ、本格的な登山シーズンを迎えた。日本を代表する名峰として登山初心者やインバウンドの人気も高い一方、近年は観光客による軽装での登山や山小屋に宿泊しない弾丸登山が問題になっている。天候が変わりやすい山のリスクを軽視せず、どのような準備をすればいいのか。日本山岳ガイド協会認定登山ガイドで「AI MOUNTAINEERING CLINIC」代表の三井愛さんに、一般的な日帰り登山に必須のアイテムを聞いた。

・ヘルメット:転滑落、落石事故などでは頭部外傷の有無が生死を分けます。

・帽子:日よけ、小雨よけ、小石よけに有効なこともあります。

・コンロ・コッヘル・ライター:いざというときに暖をとれることは生命をつなぐだけでなく、精神的安定につながります。

・スマートフォン・予備バッテリー:位置情報アプリなどから得られる緯度経度情報や、GPSアプリの登山地図はとても正確です。日本では夏の一般登山道上ではほとんどの場所で電波が通じます。救助要請をするためにも、遭難発生時に自分の位置を正確に伝えるためにも、ルートを確認するためにもスマートフォンは現代登山の必携アイテムです。ただし、低温環境でGPSを稼働し続けるためバッテリーの消耗は思ったよりも早いです。十分な予備バッテリーを持っていきましょう。

・カメラ:スマートフォンのカメラも優秀ですが、頻繁に出し入れすると落とすリスクがありますし、電池も消耗します。防水性のある小型カメラは、手袋をはめていても操作しやすく重宝します。

・ヘッドランプ:日帰り登山の予定でも必ず持っていきましょう。トラブルで下山が遅くなる可能性もありますし、森の中では日没より早く暗くなってしまいます。

・予備ヘッドランプ:単独登山の場合、暗闇の中でヘッドランプの電池を交換するのは困難です。メインのヘッドランプの他に小型のヘッドランプを携行していると安心です。

・時計:高度計機能付きのものだと自身の登高スピードが把握できます。

・ホイッスル:山では強風や雨音で声が届かないことは日常茶飯事です。仲間とのコミュニケーションツールに、またいざというときに自分の存在を知らせるために持っていきましょう。

・雨具:ゴアテックス製の上下セパレートタイプのもの必携です。

・フリースやダウンなどの防寒具:登る予定の山で一晩ビバークすることになった場合、何度まで耐えられなければならないのか事前に調べて準備しましょう。

・手袋:保温性の良いもの選びましょう。

・サングラス:標高が高い場所の日差しは強烈です。

・虫よけスプレー:ブヨ、ヌカカ、アブ、蜂など、山には不快な有害昆虫がたくさんいます。

・日焼け止め・日焼け止めリップ:日焼け止めはスティックタイプが塗りなおしに便利です。また、口唇が紫外線でただれてしまうことも多いです。UVカット成分の入ったリップクリームもお勧めです。

・地図・地形図・コンパス:スマートフォンのGPSが使えない場合、最後に頼りになるのは紙の地図です。使いこなせるよう練習しましょう。

・ロール:山のトイレにはトイレットペーパーがないかもしれません。また何かと便利です。

・ゴミ袋:ゴミは必ず持ち帰りましょう。また、防水目的、汚れモノを袋に入れてザックにしまうなど何かと便利です。

・ファーストエイドキット:切り傷、打撲、捻挫、虫刺されくらいには対応できるよう準備しましょう。常備薬も忘れずに。

・感染予防用グローブ:ファーストエイドキットは自分のためだけでなく、人のために使用することもあります。傷病者を触る場合は感染予防目的に必ず手袋をしましょう。ファーストエイドキットとは別に、すぐに取り出せる場所に入れておくとよいです。

・ツエルト(簡易テント):けがで自力下山できなくなった場合のシェルターになります。

・サバイバルシート:危急時の体温保持に絶対に必要です。

・水:計算して十分な量を持っていきましょう。

・行動食・非常食:行動食は即効性があり、疲れていても食べられるものを選びます。一方、日帰り登山であっても、非常食としてカロリーが高いコンパクトなものを1-2食分携行するべきです。

・ストック:足の負担を減らすためにストックを使いこなしましょう。また、骨折などの外傷時に、ギブス代わりに活用できたりなど、さまざまな用途があります。

・折り畳み傘:整備された登山道を歩く場合は有効なこともあります。

□三井愛(みつい・あい) Ai Mmountaineering Clinic代表。聖マリアンナ医科大学卒業。普段は地域密着型病院である総合高津中央病院の救急医療を担う外科専門医。その傍ら、患者からの依頼を受けて健康に不安のある方、体力の弱い方の夢をかなえる山登りをサポートする国際認定山岳医・日本山岳ガイド協会認定登山ガイドでもある(Monte Guide Union所属)。自分自身も限界に挑戦する現役のアルパインクライマー。

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