乃木坂46時代に感じた「代えがきく存在なのかな」 舞台で存在感示す伊藤純奈が現役メンバーに伝えたいこと

元乃木坂46で舞台俳優の伊藤純奈が、7月6日初日の「松平健芸能生活50周年記念公演」(東京・明治座)に出演する。グループ在籍中から舞台で存在感を示してきた25歳が、舞台俳優としてのやり甲斐、アイドル時代に感じていたことなどを語った。

インタビューに応じた伊藤純奈【写真:舛元清香】
インタビューに応じた伊藤純奈【写真:舛元清香】

6日から「松平健芸能生活50周年記念公演」に出演

 元乃木坂46で舞台俳優の伊藤純奈が、7月6日初日の「松平健芸能生活50周年記念公演」(東京・明治座)に出演する。グループ在籍中から舞台で存在感を示してきた25歳が、舞台俳優としてのやり甲斐、アイドル時代に感じていたことなどを語った。(取材・文=大宮高史)

 伊藤は取材の場に、夏らしいビビッドな衣装で現れた。

「オフィシャルな場ではブラックやネイビーの大人っぽい服でいることが多いのですが、私服だと明るい色も好きなんですよ」

 質問にもテンポ良く、笑顔で答え始めた。

「まず『松平健さんの公演に出る。』と聞いて、『本当にいいんですか』が正直な気持ちでした。本格的な時代劇は久しぶりで、小道具も私がよく出ていた舞台とはまるで違って、いちから勉強しています。風呂敷の結び方、背負い方も知らなかったですね」

 第一部「暴れん坊将軍」で、伊藤の役は田舎から江戸に出てきた若い娘のおちか。松平 が演じる“上様”徳川吉宗は、身分を隠して江戸の町火消・め組の居候「徳田新之助」として振る舞っている。おちかと新之助、さらに取り巻きの江戸の人々の間で、幕府の陰謀にまつわる騒動が繰り広げられていく。

「王道の時代劇で、私たちでも見たことのあるようなお芝居の連続です。おちかは江戸に出てきたばかりの頃は弱々しい娘なのですが、松平さんの新之助に何かと気にかけてもらって、たくましく成長していきます」

 伊藤は2013年から21年まで乃木坂46のメンバーだった。ドラマ、映画、ラジオ……とそれぞれが活路を見つけていく中、伊藤が見出した得意ジャンルは「舞台」だった。

「私がセリフをとちったり、動きを間違えれば舞台が止まってしまう。そんな緊張感の中で、幕が下りるまでお客さんの反応を肌で感じられるこの空間が大好きになりました。乃木坂のライブでも、皆さんの表情を見ることができて『この人は今、最高に楽しんでいるな』と分かる瞬間がありますが、舞台でも客席からすすり泣く声や大笑いする声が聞こえてきます。反応が伝わると、『もっと、盛り上げてやろう』とアドリブを試してみたくなりますね」

 伊藤ら2期生は研究生からスタートした。当時は「先輩との距離感もつかめずに『必要とされていないんじゃないか』と思う時もありました」という。

「乃木坂では、ライブや番組でのパフォーマンスで誰かの穴埋めをすることもあります。そのポジションを任されていることは、グループに必要とされていてありがたいのですが、『私自身も代えがきく存在なのかな』とうっすら感じていました。ただ、グループから離れた個人のお仕事ではグループの名前を背負いつつ、ストーリーの中で大きな役を担う時の緊張感が好きになりました」

 乃木坂46のシングルリリースの度に開催される『アンダーライブ』でも、存在感を示していた。生のステージでの演技力とパフォーマンス力を培ってきた。

「ドラマで活躍しているメンバーや俳優さんをすごく尊敬しています。見ていると『とてもできない』と思えてきて……。ドラマには乃木坂の現役時に2作(テレビ東京系『初森ベマーズ』、日本テレビ系『ザンビ』)出演しましたが、見返すと『こうすれば良かった』と後悔ばかりで、恥ずかしいです。カットごとに撮っていくので、ストーリーの順に撮っていくとは限りませんよね。舞台だと2時間のお芝居なら、その間はずっと役に入り、本当に違う人になりきって生きる気力が湧いてきます。作品世界に長く浸っていられる感覚が好きです」

 そんな思いもあり、伊藤は日本物コメディーの『阿呆浪士』(20年)、男役で主演したマンガ原作の『七色いんこ』(18年)、アガサ・クリスティーの名作推理小説の舞台化作『オリエント急行殺人事件』(19年)など、多彩なジャンルで舞台歴を積んできた。また、乃木坂46時代には“姉御キャラ”も開拓していた。

「加入した時は中学生でしたが、舞台のお仕事もどんどんいただけて、物怖じしないで話しかけられるようになりました。ちょうどその頃から3期生や4期生の後輩が入ってきて、自分から何でも教えてあげました。外の現場でも『乃木坂の子、上手いね』と直接褒めていただけるようになって、『頼られている』という実感がついてきました」

久々の時代劇で、キュートな面も見せたいと意気込む【写真:舛元清香】
久々の時代劇で、キュートな面も見せたいと意気込む【写真:舛元清香】

卒業で実感した「乃木坂46はありがたい環境」

 21年にグループを卒業。ソロの俳優になって環境は大きく変わった。

「『お家しかリラックスできる場所がないんだな』と痛感しました。卒業するまでは外仕事を終えて、乃木坂のメンバーと会うと実家に帰ってきた安心感がありました。今は1つの作品を終えると、家以外で肩の力を抜ける場所がないですね。『(乃木坂46は)ありがたい環境だったな』と思えます」

 監獄を舞台にしたシリアスなストレートプレイの『トムラウシ』、ダンスショー『Dance Club DisGOONieS 』、二人芝居『chill moratorium』などにも出演。そして、今作では時代劇に挑む。目指す“カメレオン俳優”の道を着実に歩んでいる。

「乃木坂にいた時は、マネジャーさんがそれぞれの持ち味を見て仕事を振ってくれることもありました。だからか、舞台では気の強い役が多く来ていました。卒業後は役柄に幅が出てきましたし、今回の公演は誰もがご存じの松平健さんの舞台。おそらく、私のファンの方もあまり時代劇に縁がないと思いますので、私にとっても皆さんにとっても、一生記憶に残る舞台にする覚悟でいます」

 今春、米カリフォルニアに渡り、同期の伊藤かりんとロサンゼルスやアナハイムのカリフォルニア・ディズニーランドを楽しんだ。

「海外のカルチャーも好きなんですけど、アイドル時代は長い休みが取れなかったですね。やはり、乃木坂46にいたという看板は今でも背負っています。そして、今、グループにいるメンバーにも『舞台をきわめようとすると、こんなに面白い経験ができる』と伝えたいです。個人としても、当たり前のように香盤表に名前がある俳優を目指したいですね。今回のようなかわいい役も、何度でも推薦していただけるくらいに得意にしていきたいです」

 今作の第2部「マツケン大感謝祭~歌って踊って~オーレ!」では、『マツケンサンバⅡ』に乗せ、ショーで歌って踊る伊藤も見られる。目指すのは「いつもどこかの劇場に立っている」「生涯必要とされるパフォーマー」。その覚悟で舞台俳優の道をまい進する。

□伊藤純奈(いとう・じゅんな) 1998年10月30日、神奈川県生まれ。2013年、乃木坂46に2期生として加入。16年、舞台『墓場、女子高生』に出演をきっかけに、『三人姉妹』『七色いんこ』(18年)、『オリエント急行殺人事件』『ミュージカル 美少女戦士セーラームーン』(19年)など多くの舞台作に出演。21年8月にグループを卒業し、舞台を中心に俳優として活動。特技は書道(7段)。166センチ。血液型A。

【公演情報】
松平健芸能生活50周年記念公演 7月6日~31日 東京・明治座

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