話題作に続々出演の51歳・岡部たかし、今度は“聞く小説”で朗読初挑戦「難しさも面白さもあった」

俳優の岡部たかし(51)がAudibleのオリジナル新作小説『パンとペンの事件簿』(6月25日配信)の朗読に初挑戦した。『ジョーカー・ゲーム』シリーズなどで知られる作家・柳広司さんの書き下ろしで、大正時代を舞台にした連作短編ミステリー。岡部が朗読の舞台ウラ、自らの読書体験を語った。

小説朗読に初挑戦した岡部たかし【写真:ENCOUNT編集部】
小説朗読に初挑戦した岡部たかし【写真:ENCOUNT編集部】

好きな作家は西村賢太氏、町田康氏

 俳優の岡部たかし(51)がAudibleのオリジナル新作小説『パンとペンの事件簿』(6月25日配信)の朗読に初挑戦した。『ジョーカー・ゲーム』シリーズなどで知られる作家・柳広司さんの書き下ろしで、大正時代を舞台にした連作短編ミステリー。岡部が朗読の舞台ウラ、自らの読書体験を語った。(取材・文=平辻哲也)

 2022年にフジテレビ系ドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』でブレークし、NHK連続テレビ小説では『ブギウギ』ではアホのおっちゃん役、『虎に翼』では主人公・猪爪寅子の父親役を好演。4月にはTBS『情熱大陸』(MBS・TBS系)にも取り上げられた岡部。朗読コンテンツは初めて。

『パンとペンの事件簿』は書籍販売に先駆け、音声先行で配信される「オーディオファースト作品」。大正時代、弾圧された社会主義者たちが創設した実在の会社「売文社」の史実を基に、主人公の「僕」が社会主義者たちと関わっていく姿を謎解きエンターテインメントとして描く。

「本当にあったことと、フィクションがゴッチャになっているんです。大杉栄(作家、社会主義者、関東大震災時に憲兵に殺害される)とか聞いたことのある名前も出てきます。僕自身は、あんまり主義とか主張がないので、“苦手かな”と思っていたんですけど、“さにあらず”でした。面白いです」

 物語は青春小説の側面も大きい。

「主人公の“僕”が、社会主義者に出会ったことで、不安や弱さ、理不尽なことを解消していくんですが、自分も若い時にバイトの先輩とかに感化されて、影響受けて、ちょっとずつ世界を知っていきました。自分自身と共通するもの、共感するものもありました。タッチも軽妙ですので、爽快なエンターテインメントという感じがしました」

 読書家というほどではないが、読書は好きだという。好きな作家には西村賢太氏、町田康氏、角田光代氏、筒井康隆氏、太宰治氏を挙げる。

「読書は好きな作家から影響を受けてほかの作家に広がっていく感じも面白いなと思いますね。日常的に本は読んでいるんですけど、眠たなってくることもある。最近は老眼も進んできましたし、集中力のなさも感じたりしています」

 朗読に先駆け、22年に亡くなった西村氏の未完の小説『雨滴は続く』でAudibleを初体験した。

「本で読んでいたので、どんな風になっているのかなと思ったんです。自分の目で読むのと、人に読んでもらうのは、ちょっと違いました。ダイレクトで耳に届くので、読書より鮮明で臨場感もあります。自分だけの世界が立ち上がってくると言いますか、背景、色が見えてくるような感覚が楽しい。本って、読むしかしてこなかったですが、聞いてみるのもまた違った味わいがあって、面白いなと思いました」

 声の仕事も多少経験しているが、朗読の収録には違った大変さもあったという。

「朗読劇、朗読の番組をやったことがありますが、声だけではなく、動きもあっていいので、芝居っぽい感じだったんです。今回は密閉されたスタジオの中で読むという緊張感も伴って、慣れなかったです。もうちょっと、うまいこと読みたかったなって、反省ばかりでした。(和歌山県出身なので)イントネーションの難しさもあるし、滑舌とか、自信がないところは隠したつもりでも、すぐバレちゃいます。句読点の感じも、自分が読みたいように読んだら、監督からは『1回ここで区切ってから行った方がいいですね』とか。いろいろ教えていただきながら収録しました」

 小説では社会主義者の歌も登場し、岡部が歌って吹き込んだ。

「歌詞の中身も風刺が効いていて、メロディーも面白く、調子がいい。歌うのは楽しい作業でした。原曲はYouTubeでも聴けますので、皆さん自分で歌ってみるのも、オツかなと思います」

 作品としては長尺で、全てのレコーディングを終えた時にはホッとしたという。

「読み切ったなという達成感はありました。あとはこの作品の面白さが伝わったらええなと思っています。声だけで何かを表現するのは面白くもあり、難しさもありました。物語は1章ごとに逆転があります。作戦を立てて、警察や悪い人たちをギャフンと言わせる。キャラクター1人1人も、かっこいいんです。人を助けたい、守りたいという気持ちは、どんな思想の人でもあると思うんで、共感し伝わるんじゃないかな」。自身の初挑戦がリスナーにどう届くのかを楽しみにしている。

■岡部たかし(おかべ・たかし)1972年6月22日、和歌山県出身。劇団東京乾電池の元劇団員。退団後は「城山羊の会」など、数多くのプロデュース公演に出演。映画やドラマなど、幅広く活躍している。フジテレビ『エルピス-希望、あるいは災い-』(22)でのプロデューサー役で注目を集め、NHK連続テレビ小説では『ブギウギ』(23)、『虎に翼』(24)に連続出演。主な映画に『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(18)、『花束みたいな恋をした』(21)、『異動辞令は音楽隊!』(22)など。

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