【電波生活】フジ日曜朝番組が30年愛される理由 出演者“3人”に込められた萩本欽一伝授の哲学

松居直美、磯野貴理子、森尾由美の3人が出演するフジテレビ系トークバラエティー『はやく起きた朝は…』(日曜午前6時30分)が、1994年スタートの前身の番組から数えて放送30周年を迎えた。視聴者からはがきや手紙で募集した声をもとに楽しいトークを展開。視聴者と3人の近い距離感はラジオ番組のようだ。プロデューサーは『笑ってる場合ですよ!』『オレたちひょうきん族』など数々の人気バラエティーを手掛けてきた三宅恵介氏(千代田企画)。30年の歩みや長く愛される背景を取材した。すると作り手の愛あるこだわりと萩本欽一譲りの理論があった。

『はやく起きた朝は…』に出演する森尾由美、磯野貴理子、松居直美(左から)【写真:(C)フジテレビ】
『はやく起きた朝は…』に出演する森尾由美、磯野貴理子、松居直美(左から)【写真:(C)フジテレビ】

バラエティー番組の名プロデューサーが明かす『はやく起きた朝は…』舞台裏

 松居直美、磯野貴理子、森尾由美の3人が出演するフジテレビ系トークバラエティー『はやく起きた朝は…』(日曜午前6時30分)が、1994年スタートの前身の番組から数えて放送30周年を迎えた。視聴者からはがきや手紙で募集した声をもとに楽しいトークを展開。視聴者と3人の近い距離感はラジオ番組のようだ。プロデューサーは『笑ってる場合ですよ!』『オレたちひょうきん族』など数々の人気バラエティーを手掛けてきた三宅恵介氏(千代田企画)。30年の歩みや長く愛される背景を取材した。すると作り手の愛あるこだわりと萩本欽一譲りの理論があった。(取材・文=中野由喜)

 まず誕生の背景を尋ねた。

「番組が始まる前に、若い女性スタッフたちにどんな番組を見たいか聞いたんです。すると『流行りの音楽が流れているといい』と言うので、当初、音楽番組を作ろうと思ったんです。ただ音楽だけでは、ということでトーク番組にして音楽をかけるスタイルを考えました。日曜の朝の視聴者は主婦がメイン。女性3人がお気に入りの曲を持ち寄り、曲にまつわる思い出話をするのが当初の考えでした」

 最初は音楽番組を作る予定だったとは驚きだ。続いてなぜ3人なのか、松居、磯野、森尾の起用理由を尋ねた。

「貴理子さんは私がディレクターを務めた『オレたちひょうきん族』によく出演し、松居さんも私は担当していませんが『欽ドン!』に出演しており、2人をよく知っていました。久本雅美さんと3人で小堺一機君の『ごきげんよう』に出演してもらったら、視聴率が20%を超えたんです。それで、女性3人がメインの番組にしようと思いました」

 3人という数字には特別な意味があった。

「昔から変わらない約束事があるんです。これは萩本欽一さんから教わったことで物事は奇数の方がうまく転がっていくという番組作り奇数理論です。たとえば2人○、1人×になると1人が取り残されて話が転がりますが、4人で2対2だと、そこで話が終わり次につながらないんです。だから男女の三角関係はずっともめるんです(笑)。出演者には3人が同じ意見にならないでと伝えています」

 磯野と松居はよく知った存在。森尾は?

「2人とは全く別のタイプの人をと考えました。女優、歌手、アイドル……。ちょうどその時、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』に森尾さんが出演していて、年齢も2人の間ですし全く違うジャンル、キャラクターの人なのでいいなと。1度3人に集まってもらい、テーマを決めてしゃべってもらったら盛り上がり、やれると確信しました。当時、特に仲良しというわけではなかった3人ですが前から知っているような感じで永遠としゃべれたと言っていました」

『はやく起きた朝は…』のタイトルロゴ【写真:(C)フジテレビ】
『はやく起きた朝は…』のタイトルロゴ【写真:(C)フジテレビ】

「これは3人のドキュメント」と語る愛される理由とは

 最初は井崎脩五郎さんが一緒に半年間出演、その後ゲストを招くなどしたが、28年前から今のスタイルになったという。同じ3人で長く番組が続いた理由は何だろう。

「3人の距離感が良かったのかなと思います。1日に3本撮るのですが、3週に1回集まるのが良かったと思います。毎週だと煮詰まったりしますし。3本撮りが功を奏していい距離感を保てていると思います」

 もう一つ長く愛された理由を紹介してくれた。

「これは3人のドキュメントの番組なんです。30年やっていると一人一人に人生のドラマがあります。長く続いた理由はその時3人が感じたことを素直に表現しているから。今、20年前に来たはがきと同じ内容の便りが届いたら人生経験を積んだ3人が言う話は20年前と違うと思います。貴理子さんから感謝という言葉が出た時は驚きましたもの(笑)。3人とも偉そうにせず、常に視聴者とフラットな感じでいます。一人称でやり取りするので視聴者と友人関係のような雰囲気を作れてラジオのような雰囲気を醸し出すのかなと思います」

 番組の舞台裏をもう少し尋ねた。

「台本もリハーサルもありません。収録日前に番組に届いた数百枚のはがきを私やスタッフ7、8人で全部読みます。たとえば孫の話なら森尾さんとか、内容によって誰が得意分野か考え3人に各40~50枚のはがきのコピーを渡します。その中から本人が選んで番組で紹介します。こういうはがきを読むという事前の打ち合わせもありません。本番でどんな内容の便りを読むのか3人は互いに知りません。そうしないと話が生きてきませんから」

 スタジオのセットについても聞いてみた。セットには毎年3人が1年の抱負として、“今年の漢字一文字”を選んだ書が縦に並んで飾られている。今年は、海に癒やされたい松居は「海」、番組30周年の感謝と感動がたくさんあることを願う磯野の「感」、今を大事に生きようという森尾の「今」。なぜか毎週、並び順が変わっている。

「毎週ずらして放送しています。貴理子さんの文字が1番上だったら翌週は2番目というように、誰が一番上ということがないようにしています。誰かを特別扱いすることなく3人平等、これが作り手のこだわりです」

 番組で募集するのは不平・不満・愚痴。いい話ではない。

「最初に言いますが、お悩み相談コーナーではないので悩みは扱っていません。番組では、ちょっとした不平、不満、愚痴をネット時代なのに、はがきか手紙に書いてもらっています。これには理由があります。人間は書いているうちにわりと不平、不満が解消されるものなんです。カッコいい言い方をすると不平、不満、愚痴が無くなる時、この番組は無くなります。この番組は不平、不満、愚痴の無い世界を目指しています(笑)。いい話は『良かったね』で終わり、笑いにつながりにくいんです。人が嫌な思いをする話や悪口も扱っていません。人を傷つけないことが今のバラエティーでは大事なことです」

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