業界関係者から連絡殺到の16歳女子高生シンガー・花鏡紅璃、実家は焼きそば屋台「歌は私の取りえ」

定期テストは一夜漬けで乗り切り、たまに家業の屋台で焼きそば作りのお手伝いをする、そんな女子高校生が、音楽業界でちょっとした注目を集め始めている。ギターを弾き語り、天性のハスキーボイスで歌うシンガー・ソングライターの花鏡紅璃(かきょう・あかり)。16歳の高校2年生だ。中学3年生の時に、TikTokの歌唱動画がバズり、先見性を見いだしたレコード会社・音楽事務所から連絡が殺到。学業の傍ら楽曲創作とライブに取り組み、今年4月には、千葉で開催された音楽フェス『JAPAN JAM』のアーティストコンテストに合格し、晴れ舞台に立った。「高校生でメジャーデビューしたい」と目を輝かせている。

16歳のシンガー・ソングライター花鏡紅璃は取材時に“生歌”を披露してくれた【写真:ENCOUNT編集部】
16歳のシンガー・ソングライター花鏡紅璃は取材時に“生歌”を披露してくれた【写真:ENCOUNT編集部】

中3年の時にTikTokが大バズリ 父はプロミュージシャン 『JAPAN JAM』コンテスト企画で好演

 定期テストは一夜漬けで乗り切り、たまに家業の屋台で焼きそば作りのお手伝いをする、そんな女子高校生が、音楽業界でちょっとした注目を集め始めている。ギターを弾き語り、天性のハスキーボイスで歌うシンガー・ソングライターの花鏡紅璃(かきょう・あかり)。16歳の高校2年生だ。中学3年生の時に、TikTokの歌唱動画がバズり、先見性を見いだしたレコード会社・音楽事務所から連絡が殺到。学業の傍ら楽曲創作とライブに取り組み、今年4月には、千葉で開催された音楽フェス『JAPAN JAM』のアーティストコンテストに合格し、晴れ舞台に立った。「高校生でメジャーデビューしたい」と目を輝かせている。(取材・文=吉原知也)

 ギターを抱え、顔は映さずに、抜群の歌唱力で歌い上げる。微妙に漂わせるミステリアスな雰囲気。世代によってはちょっと懐かしさを覚える、オベーションの黒のアコースティックギターがトレードマークだ。

 2人の姉と兄、妹を持つ。父はプロミュージシャンでドラマーだ。幼少期はピアノを習っていたが、「嫌で嫌で、『行きたくない!』と泣いていました」。それでも、歌は子どもの頃からピカイチで、ピアノの先生も感心していた。小学校の卒業祝いでミニギターを買ってもらったのが、ギターとの出合いだ。「カラオケに1人で行っちゃダメと言われていたので、じゃあ家でギターを弾けば1人でも歌えるじゃんと思ったんです」。中1からTikTokのアカウントを作り、好きな曲を歌い、動画をアップしていた。「当時はまだ弾けなかったので、抱えているだけでしたけど(笑)」。

 最初はカバー曲ばかりだったが、「動画が足りなくなる」と少しずつオリジナル曲も作るように。自作とカバーを織り交ぜて、多い日で1日6本を投稿していた。昨年1月、中3の時、思いがけずにバズった。『浴槽とネオンテトラ』(REISAI)の弾き語りカバーが急激に伸び、再生回数は122万回超を記録。2か月間で1万人分のフォロワーが激増し、現在は2.3万人となっている。

 関係者から声がかかり、一時期は動画配信事務所に所属。新人企画としてアップした1つの歌唱動画がなんとベトナムで跳ねて、1日でベトナムのフォロワー5000人を獲得したというミラクルも起こした。

 にわかに注目を集め出し、音楽会社からDMなどを通して連絡が殺到。これまで約10社の担当者から話があり、芸能事務所関係者が母親を訪ねてくることもある。

 昨年10月27日、記念の初ライブに参加した。ラジオ出演を懸けたコンテスト企画で優勝し、人生で初めてのレコーディングも行った。初のオリジナル曲『愛を伝える。』を同年12月にリリース。現在も数多くのオーディションに応募し続けており、東京都内を中心に月5本程度のライブ出演もこなしている。

 高校での音楽活動も積極的だ。軽音楽部創設を直談判したが、断念。代わりに4人組の文化祭バンドを結成した。すると、当日はまさかの大盛況。「体育館に500~600人は集まったと思います。自分たちが一番びっくりしました」。ギター・ボーカルとして“名演”を見せた。

 有名音楽フェスである『JAPAN JAM』のコンテスト企画では、持ち前の“うっかりさん”を発揮した。「オーディションに合格していたのに、すっかり担当の方からの連絡を見落としまして……。期限の5日前に気付きました(笑)。この反省から、人生で初めてGmailを使うようになりました(笑)」。4月28日の初日、SUNSET STAGEのオープニングアクトとして、多くの音楽ファンの前でパフォーマンスした。ちなみに、これまでにはライブに肝心のギターを忘れたり、出演の数時間前まで家で寝ていたり……。天然な一面はご愛嬌だ。

 ライブではまったく緊張しないタイプだが、少しだけ自分でも不思議に思うことがある。「ライブ中の記憶がほとんどないんです。ギターを弾いてしっかり歌っているのですが、MCの発言内容も覚えていません。それだけ集中しているということでしょうかね。ライブはバンジージャンプで飛び込むのと同じ感覚なんです」と、あっけらかんと話す。

代名詞のオベーションのギターは父からの特別な贈り物 目標は「高校生のうちにメジャーデビュー」

 創作意欲は「湧いてくる」と表現する。詞を先に考えてからメロディーを乗せるように曲作りをする、いわゆる“詞先”。「詞が思い浮かんだら、スマホに打ちます。授業中の場合は、すぐにノートにメモを取ります。曲のテーマは実際に私に起きた経験や、たらればの話が多いです。見た映画やアニメにインスパイアされることもよくあります。以前に『落ち込んだ時に曲を作った方がいい』と言われたことがあります。確かに、悲しい時にいい曲が思い浮かぶ気がします。内面から出てくる自分の感情です。その感情をどう言葉に具体的に置き換えるか。言葉を調べて、乗せていっています」と明かす。

 独学のギターは、繊細なアルペジオをまじえて上達している。代名詞のオベーションのギターは、父からの特別な贈り物だ。「これは高校入学のお祝いでお父さんが買ってくれました」。それも、楽器街の“聖地”として知られる御茶ノ水で手に入れた。「最初に入った楽器屋さんで、これかなと決めていたギターがありました。6時間ぐらいいろいろ見て、最後にもう1軒寄ろうかとなって、中古屋さんの2階フロアに行ってみたら、このオベーションがあったんです。カスタム・レジェンドというモデルで、『これがいい!』ってなりました。お父さんは『6万円で済むかと思ったら、18万円になってしまった』と頭を抱えていました(笑)」。父娘のほっこり秘話を教えてくれた。それに、祖父、父と3代で引き継いでいる、いぶし銀のK.Yairiのアコギを重用していることも特筆すべきだろう。

 結果が全てのプロの世界で生きてきた父からはずっと、「音楽の世界は残酷だよ」と聞かされてきた。幼少期は、音楽を目指すことについて否定的に考えていた。「自分が一番反対していたのに、今、その自分がアーティストを目指しているんです。自分でも分からないなあと思います。家族全員に反対されるとも思っていましたが、みんな応援してくれているのにも驚きです」。千葉市内で飲食店とB級グルメ焼きそば屋台を経営する母も最大の応援者の1人。「やりたいこと、好きなことに全力で取り組んでもらえれば」と、温かい目線を送っている。

 たまに屋台イベントで、鉄板の前で大粒の汗を流しながら、母直伝の焼きそばを焼いている。そんな家族愛にあふれる16歳は、音楽人になるという将来の夢へ向かって加速度を増している。デモ音源を含めてオリジナル曲は約130曲に上る。目標は「高校生のうちにメジャーデビュー。あと3年以内に大きな会場でワンマンライブを行うことです!」と高らかに宣言。「本当に運がよくて、すべてがうまくいけば……ということは分かっていますが、夢は見ていきたいなって思っています。歌は私にとっての取りえであり、武器です」。大きく化けそうな将来が楽しみだ。

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