奈緒、20歳で上京してから10年 悩みから救われた演出家の言葉「すごく息がしやすくなりました」
俳優の奈緒(29)が、生田斗真とヤン・イクチュンがW主演した映画『告白 コンフェッション』(5月31日公開)でヒロインを演じた。大学山岳部の同級生に殺される被害者役で、劇中にはセリフが一つもない。奈緒が本作の舞台ウラ、29歳の現在地を語った。
映画『告白 コンフェッション』で絞殺されるヒロイン役を熱演
俳優の奈緒(29)が、生田斗真とヤン・イクチュンがW主演した映画『告白 コンフェッション』(5月31日公開)でヒロインを演じた。大学山岳部の同級生に殺される被害者役で、劇中にはセリフが一つもない。奈緒が本作の舞台ウラ、29歳の現在地を語った。(取材・文=平辻哲也)
『告白 コンフェッション』は『賭博黙示録カイジ』の福本伸行が原作、『沈黙の艦隊』のかわぐちかいじが作画を手がけた同名コミックの映画化。主人公は、16年前の大学卒業登山中に亡くなった同級生・西田さゆり(奈緒)の17回忌の慰霊登山に出かけた大学山岳部のOBで親友の浅井(生田)とジヨン(ヤン)。猛吹雪で遭難し、大怪我を負ったジヨンは自分の死を確信し、16年前にさゆりを殺害したと告白。2人は山小屋に命を救われるも、気まずい一夜を過ごすことになる……。
「原作を読ませていただいて、絶対に面白くなる映画だと思っていました。コロナなどで2回ぐらい撮影が延期されたので、どうにか実現してほしいと願っていました。延期期間が長かったので、もしかしてキャスティングが変わって撮影しているのかなと不安になった時もありました」と笑って振り返る。
主要キャストはわずか3人で、奈緒は劇中に一切セリフのない役。実際の撮影はどうだったのか。
「私もどうやって撮るんだろうと思っていました。山下さんは私たちのことを考えてくださって台本を作ってくださったので、普通にお芝居をしていました。さゆりが事件の引き金を引いてしまった部分も説明してくださったので、その空白部分も埋めやすかったんです」
撮影は2日間。生田、ヤンとの共演シーンでそれぞれ1日ずつを費やした。
「短い時間でしたが、お二人ともすごく優しいですし、現場の空気が良かったです。山下さんとは広告の仕事でご一緒させていただきましたが、物語のカギになる役でご一緒できて、うれしかった。山での撮影はすごく寒くて、横たわっていると、地面に体温を吸い取られていくので、置き去りにされたら、本当に死んじゃうかもしれないと思っていました」
殺される役は今回が2度目。
「前回は銃殺される役で、首を締められて殺されるのは初めてです。山下さんは、このシーンにとてもこだわっていて、参考にしてほしい、と海外の映画も教えてもらいました。殺される役は気持ちのいいものではないですね」
映画は奈緒演じるさゆり亡き後、思わぬ告白した側と、聞いてしまった側の関係が徐々に崩れていくところが肝。
完成作は新鮮な気持ちで見たようで、「すごく怖い瞬間もありますが、序盤はクスッと笑ってしまう時間もあります。気まずさって、こんなに面白いのかと思いました。小屋の中だけで展開していく、改めて、すごく挑戦的な映画だと思いました。映画館だからこそ共有できる作品になっています。(上映時間の)74分もあっという間でした」
来年30歳に「自分自身の生活にちゃんと向き合える人になりたい」
2015年に20歳の時に福岡から上京し、17年に現在の事務所に所属。18年にはNHK連続テレビ小説『半分、青い。』でヒロイン・永野芽郁の親友役でブレーク。29歳になった今年も映画、ドラマに大活躍。映画では『陰陽師0』(公開中)、主演作『先生の白い嘘』(7月5日)、藤ヶ谷太輔とのダブル主演作『傲慢と善良』(9月27日)と4本が公開予定。1月期には木梨憲武の娘役を演じた関西テレビ・フジテレビ系『春になったら』も話題になった。
「気がつけば、20代最後の年かという思いです。自分が思い描いていた以上にたくさんの作品と人に出会えて、本当にすごく幸せな20代だったと思います」
演技の質が変わったと自覚したのは22年の主演舞台『恭(うやうや)しき娼婦』(演出・栗山民也)という。哲学者ジャン・ポール・サルトルの戯曲で、アメリカ南部を舞台に、冤罪を被らされて逃走する黒人青年(風間俊介)をかくまおうとする娼婦リズィーの物語だ。
「それまでも、自分ができない部分、役を受け入れられない部分があって、悩むことも多かったんですが、栗山さんからは『本気で迷っている姿を見せてほしい。だから、本当に悩んでいいんだ』とおっしゃっていただき、すごく息がしやすくなりました。自分の不器用さも受け入れ、揺れがあるからこそ、お客さんに伝わるものがあるかもしれない。できないことがお芝居につながることもあると思えて、すごく楽になりました」
演技だけではなく、バラエティー番組でも如才なくこなすが、実は緊張しいの一面もあるのだという。30代に向かってはどんなことを心がけているのか。
「映像作品では、自分に近い年齢の役をいただく機会が多かったので、今後も劇的に変わることってないかもしれないですが、自分自身の生活にちゃんと向き合える人になりたいな、と思っています。だから、もっと自分のことを知りたいと思っていますし、新たな挑戦することもやめたくないです」と笑みを浮かべた。
□奈緒(なお)1995年2月10日生まれ。福岡県出身。連続テレビ小説『半分、青い。』(2018)でヒロインの親友役に抜擢。翌年にはテレビドラマ『のの湯』(2019)での連続ドラマでの初主演や、テレビドラマ『あなたの番です』(2019)で第102回ザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞を受賞。2019年には『ハルカの陶』で映画初主演。2023年エランドール賞新人賞を受賞。主な映画出演作に『事故物件 恐い間取り』(20)、『みをつくし料理帖』(20)、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(21)、『マイ・ダディ』(21)、『草の響き』(21)、『あなたの番です 劇場版』(21)、『余命10年』(22)、『TANG タング』(22)、『マイ・ブロークン・マリコ』(22)、『#マンホール』、『スイート・マイホーム』(23)。『陰陽師0』が公開中。待機作に『先生の白い嘘』(7月5日)、『傲慢と善良』(9月27日)など。
ヘアメイク:竹下あゆみ
スタイリスト:岡本純子